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夢の終に…YUME−NO−TSUI−NI…
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《 見つけた光 》



――――…・・・



医務室を出てから部屋に戻ろうと考えたが、あそこも孤独が絶えない場だった。

少女はやはり行き場がなく、
途方に暮れながら廊下を歩くしかなかった。





―…ふちょうさんは、顔はこわいけど、やさしいし、うそはつかない人だと思う。

 だけど、やっぱり、
 こここわいよ…



 ここの人は、みんな怖い顔をしてる。

“あくま”をたおさなくちゃいけないと、わたしに話をしてくる人も、



 やっぱりこわい。



 ここには、

 あたたかい場所なんてない。



 にぃさん…あいたいよぉ…
 たすけて…



うぅ……



 泣きたくなくてもここは

 なみだが出てくる…



「うぅっ…かえりたいよぉ…
 にぃさん…」




『もし、おじょーさん♪』


「……!?」


『どうしたんだい??君の世界はそんなに暗い色をしているのかい?』





廊下で立ち止まり、
泣いていたリナリーにふいの声が掛けられた。

リナリーが顔をあげると、優しそうに微笑む顔がそこにあった。



「…う??」



『もう涙を拭こう?
 君は独りじゃないんだよ?』



―うわぁ…きれいな……
 …………お兄ちゃん…?



『さぁ、これで。』



そう言って手渡されたハンカチ。そっと受けっとって、リナリーは涙を拭った。



「あの…ありがとう。」




ハンカチを抱きしめてお礼を言う愛らしい少女よりも、やや身長が高めなその子は少女の頭をなでた。

『涙は止まったようだね。

さ、お名前を…聞かせてくれる かな?
私は風月 水琉。
よろしくね♪』



―わたし…?

 あっ、お姉ちゃんだったんだ…





この時、一瞬でも水琉を
男と間違えたというのは、

…今でも水琉には秘密である。



「あっ、うん!!わたしは、
リナリー・リー…です。
よろしくおねがいします!」

差し出された水琉の手。
その手にはサポーターが巻かれていた。



―あれ…?
けがをしてるのかな??
でも、きっとすぐに治る傷なんだよね??



リナリーが恐る恐る顔を見上げると、水琉は曇り一つない笑顔をしていた。



―…水琉、笑ってる。
 なら、大丈夫なんだよね??



そして…
少しの心配と不安が残る中、
リナリーは水琉の手を取り、握手をした。

この時の手の暖かな体温と、
水琉の声を

リナリーは忘れることはなかった。





『リナリー、
  もう怖くないだろ??

 私がいるから大丈夫だよ…。』





こうして水琉とリナリーの人生が出逢った。



二人の時間は大切なものへと
変わっていった。

ただ、
リナリーは他の大人達の前では、おとなしく縮こまって怯え続けていた。



それを少しでも癒すように
婦長と水琉は語りかけ続けていった。





そんな水琉の苦痛の秘密は、
誰にも気づかれずにいた。




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あきゅろす。
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