「ほら、リナリー、泣きやんでちょうだいな。」
小さな少女が、
この教団内の医務室に勤務する
婦長になだめられている
姿があった。
「うぅ…。」
「もし、一人ぼっちになるのが
怖くなった時は、ここに来ていいから。
ね??リナリーは一人じゃないのよ?」
「ぐすっ…う、うん…。
ごめんな…さぃ…もう、いくね。」
キィ…―
パタン…−
部屋を出ていく少女の背中に、婦長の嘆きの声が響いた…
「どうしてあんなに良い子が…
こんな目に…リナリー…」
その時、カチャリと音をたて
隣の部屋から一人の
中性的な少女が入ってきた。
『婦長サン、今のがリナリー??』
「えぇ。
ここには、まだ貴方も慣れてないのはわかるんだけど…
少しでも救ってあげて欲しいのよ。
ここでは、貴方くらいしか…」
そっと婦長の方に手をおき、
水琉は言った。
『大丈夫。解ってます、婦長。
私くらいしか、リナリーの歳に近い子供はいない。
それに、今、見てて思ったんです。
生きて会えるかもしれない家族がいて、その人に会いたくて、必死に生きているあの子の力になりたいって。
例え、まやかしでも、
あの子の光になりたいって。』
それが当時、
自分の命を何に使っていこうか
探していた水琉の
最初の決め事だった。