あの後、たわいもない会話を楽しんでから、ご飯を食べに行こうと二人で食堂に向かうところだった。
その途中、見慣れない黒髪の子を見かけた。
『リナリー、もしかすると、あの子かも…。行ってみる?』
「うん!
…あ!水琉!
女の子みたい!!」
嬉しそうにその子供の近くに行くリナリー。
『リナリーー!ころぶなよー!』
「うん!」
なんだかんだ言っても、よほど嬉しいのか、リナリーはその子のところへ駆けて行った。
―あれ?
でも、その子、女の子か??
疑問に思いながらも水琉はリナリーのあとを追った。
―――…・・・
「ねぇ、新しく来た子だよね?? よろしくね!
私は、リナリー・リー!」
『私は水琉、風月 水琉。
よろしくな!』
―あ、やっぱり男の子だ。
うわぁ…こりゃ、女の子といわれても過言じゃないぞ…
まぁなんて綺麗な顔立ちだ事…
そして快く挨拶をしてきた二人にその少年は、“一応”と言わんばかりの挨拶をしてきた。
「ふん、神田だ。」
―この身長が高い方、怪我をしてるのか?それとも武装か?
にしても奴だ…へらへら笑ってやがる。
神田に目線は、水琉の手の甲から肘のあたりまで巻かれている黒い包帯のような、さらしのような帯にいったが、すぐに水琉本人に向いた。
『へぇ…。っで、神田…何??
神田ってことは君、日本人だよね?下の名前教えて欲しいな……なんて。』
笑いながら語りかけてくる水琉にうっとうしそうな顔をしながら、
「…ユウだ。」
と、ちいさな声で言った。
―おや、ちょっと嫌がらせてしまったかな??
など、水琉が気にしてる一方、リナリーは笑顔で神田の手をとり、
「ユウちゃんっていうんだね!! よろしくね!!」
とか、言っちゃってた。
『…あの…リナリー、その子は…「ユウちゃんみたいな綺麗な子、水琉以外で初めて見た!」
―私はそんな美人じゃねーよ〜
…ってか…リナリー…その子…
ちらっと神田を視た水琉の顔が、神田の怒りオーラにひっ!と、引き攣った。
そして、怒りに震える神田。
あ〜あ。といわんばかりの水琉。
ニコニコ顔のリナリー。
『ねぇ、リナリー、その子…
「俺をファーストネームで呼ぶんじゃねぇ!!!」
―……???(゜゜)??
『え??…えぇ!!!!!!
そこぉ!!!!!?』
言葉を遮られっぱなしの水琉は怒るでもなく、驚いていた。
「ふん!!わかったら、二度と呼ぶんじゃねぇ!!」
そう言って、神田少年は去ろうとしていた。
……が、すたすたと戻ってきて、顔を赤らめながら叫んだ。
「俺は・・・・・・女じゃねぇ!!!!!チッ!!」
「ご、ごめんね…」
今度は軽快な舌打ちと共に去って行った。
そして水琉は、恐る恐る隣のリナリーをみると、見事なまでのポカン顔をしていた。
「水琉・・・
神田君、男だった…」
『うん。知ってた』
「え!?なんで…」
『いや、教えようとしたけど…』
「うわぁ…!どうしよ!!」
冷静になったのか、リナリーは赤面しながら困っていた。
『まぁ、いいんじゃない?
面白そうな子だったし!
目的の挨拶は果たしたってことで♪』
「………うん!」
少し顔を赤らめたまま、リナリーは笑っていた。
また、これが水琉と神田ユウとの最初の交差であり、
これからの物語の歯車が
急に回ることを意味していた。