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第二の人生


2

唯一自由な目ん玉で睨めば、くすくすと純粋な、勘に障る笑い声が降った。

『環境の変化に戸惑っているか。我に手を上げたはそちが初めてだ』

ガキは細っこい体で、おれを難なく持ち上げた。
身長は明らかにおれのが高いのにこの状態。
そうとう滑稽に違いない。

明度の高い空間に目の奥が痛い。
途切れがちなぼんやり状態で運ばれ、気付けばどこかの床に転がされていた。

幾ばくして、白銀の甲冑を着た兵士が来て、ガキと会話をおっぱじめ。
ひたすらその様子を睨むおれは我ながら意固地に過ぎるが、何せ話の内容が気に入らなかった。

奴らの話から推測するに、おれは明らかに拉致られていた。
極めつけが、ガキの一言。


『進退極まれば言えば良い。“卵"は我らが手中、迂闊な侵略は果たして双方に益有るものか、とな』


おれを使って、脅しをかけると抜かしやがった。

元より魔族の連中にとって、人間であるおれ個体に人質の価値は無いのだが。
魔王さま狂いの奇特な集団だ、“魔王さまの伴侶"というオマケ特典には本当に命を捧げかねない。
婚姻発表の瞬間や、魔王さま信者のチェルシーさんを思えば人質の存在に抵抗を諦める魔族達は想像できる。



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あきゅろす。
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