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第二の人生


12

おれの生きてた世界の、日本の、特に現代人なんてほとんどがカミサマなんて心底信じちゃいないだろう。

神も仏も無い。
とか、
困った時の神頼み。

なんて、“こっち"の人間と魔族を足して2で割ったような思想はザラだ。
信仰心が無い!と怒られるわけも無かったし、責任を自分で負ったり神仏になすったりして案外上手く生きていけると思うんだが。


「………俊也」
「ん?あれ、寝ねーの……?」

しょうもない事で上の空だった。
男を見上げると、御大層な魔王さま装備を脱いでいない男が佇んでいる。

「夜明けが近い。私も、警備に回る」
「そんな、むちゃくちゃだ。寝ろよ……」
「……人間は日中、動くものだ。夜を生きる我々魔族が相手。ならば、選択は九割、陽の照る時間帯だろう」

でも、と反論しかけたおれの口に、男の指がやんわり蓋をする。

「……お前と閨を共にして、近頃は安眠出来ている。私は眠らなくとも、平気だ」
「……むぐ」

男の平淡な音程は機械みたいだったが、かもし出す空気のぬるさは、おれを黙らせるには十分だった。
ソルトさんはとっとと去り、ゼノも居ないこの部屋に今はおれと男の二人だけである。
口元に押し当てられた男の人差し指が、す、と引かれ、思わずその手を掴んでしまう。

「……どうした?」

こて…、とゆっくり、男の頭が横に傾く。
その表情がちょっとだけあどけなくも見えて、胸に奇妙な違和感を覚えた。

「せ、戦争は駄目だ」
「………場合による」
「……………だめ、」

譲らないおれに、男の顔が“魔王さま"に戻る。
ぺーぺーが何を言ってんだと言う自覚はあるが、それにしたっておれは今と時間を失うのが怖く、なり始めている。

男の沈黙は長く、思考が底へと墜ち始めたとき、


「善処、する」


囁き。
だが、よく通る声で、男は答えた。





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