第二の人生
からすとこうもり
「いちたすいち…は、にー、にたす……には」
「ああもう!現実逃避もいい加減にしなさいよアンタ!」
呪具とガラクタの散乱する小部屋の中心、木製の椅子に長身の青年が膝を抱えて丸まっている。
目の前に浮かぶ小さな夢魔が、苛々とした口調で青年に叱咤していた。
「命令されてからずっとくよくよナヨナヨして、情けないわね」
「だ、だって…」
「だって、何よ?」
口を閉ざし、完全に表情を隠してしまった召喚師に、夢魔は大きく溜め息を吐き出した。
無造作に跳ねた青年の髪を掴み、小さな体で無理矢理に顔を上げさせる。
「………ほら、泣いちゃって」
ほんとに情けないわ
そう呟き、青年の涙を払う夢魔から先程の剣幕は去り、表情は柔和に。
「危ない……ロード、行っちゃあ、だめだよ」
「バカね。あたしが行かなきゃ二人して御陀仏よ。さあ立って」
「……やだ」
愚図る召喚師に、夢魔は微笑みで返した。
「首尾良く行けば楽勝よ!それにあたし、逃げ足速いもん!」
「でも」
「これ以上待たせたらオーサマにぶち殺されるわよ」
「っ…………」
青年の肩が跳ねたのを見て、夢魔は笑った。
「それにね。あたしはアンタがじじいになるまで見てたいのよ、ルーム」
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