[携帯モード] [URL送信]

もしもの話
高校生社長の幼なじみの回想。


遊戯と初めて会ったのは、小学四年生の秋くらいだったと思う。


近所のゲーム屋に男の子とそのお母さんが引っ越してきた。
近所への引っ越しの挨拶回りについて来ていた男の子。


それが遊戯だった。





少し不思議な子。


最初はそんな印象だったと思う。
同級生の男の子達よりもずっとおとなしくて、でも暗いってわけじゃない。
勉強は普通くらいだけど、体育は苦手。
家がゲーム屋さんだったからか色んな遊びを知ってて、私もクラスの子も時々教えてもらって遊んだりした。


最初の頃の印象は薄れ、近所だったこともあり一緒にいることが多くなった。


その事を時々周りにからかわれたりもしたけど、私と遊戯はお互いを友達だと思っていたからあまり気にしなかった。





そんな風に友情を育みながら時は過ぎ、中学に上がる前の春休み。
遊戯の家に遊びに行った時、私は初めて遊戯のお父さんに会った。


そして聞かされた遊戯の真実に、ただ呆然とした。





遊戯のお父さんがMCの社長で、いずれは遊戯がその地位を継ぐだろうということ。





MCのおもちゃと言えば皆がプレゼントで欲しがる物だったし、それをもらったと言った子はその日一日うらやましがられるくらいに皆大好きだった。


どうして黙っていたのか、遊戯のお父さんに尋ねてみた。


“遊戯を特別扱いしてほしくないんだ。友達と遊んだことの少ない人に、皆で遊べるおもちゃを作ることは出来ないからね。”





遊戯のお父さんのことを最初から知ってたら、今みたいにはなれなかったかもしれない。


そういうのが嫌だから、遊戯もお父さんのことを黙っていたんだ。


“杏子ちゃん、これからも遊戯の友達でいてくれるかい?”





中学に上がり、私と遊戯は相変わらず幼なじみ兼友達として過ごしていた。


遊戯の協力者になることを私は選んだ。


そう告げた時の、遊戯の泣き出しそうな笑顔は今でも覚えてる。





中学一年の終わり頃、遊戯が話してくれた。


『実はさ……こっちに引っ越してくる前に、ボク、誘拐されかけたことがあるんだ。』





仲良くしていた友達の一人に、絶対に秘密だと念を押してお父さんのことを教えた。
その子は絶対に秘密だと、家族にだけ遊戯のことを教えた。
その子のお父さんは、MCのライバル会社で働いていた。


それが巡りめぐって、誘拐未遂にまで発展してしまったらしい。





『パパがボクにMCのことは周りには秘密だってきつく言ってたのは、ボクの身を守るためでもあったんだと思う。』





社長の息子であることが、必ずしも良いことだとは限らない。


遊戯の置かれている環境の危うさを思い知った。





先日、遊戯のお父さんが飛行機事故で亡くなって遊戯がその跡を継いだ。


これから遊戯にはたくさんの困難が降り掛かるかもしれない。





遊戯、私は遊戯の味方だよ。


城之内も本田も、遊戯の味方だよ。


だから、頑張ってね。


遊戯。


END



あとがき。


杏子の独白。


いや、大企業の社長の息子ならこういう事が起こっても不思議はないかなと。


そのための防衛策となると、常に警護の人間をつけるか事実自体を伏せるかだと思ったのでこのような展開に……


なんか暗くてスミマセンι

[*前へ]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!