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小話
寒い日に過ごす暖かい時間。


あけましておめでとう。


一言挨拶したくて、アポ無しで海馬くんの家に行ってみた。


周囲をぐるりと囲む高い壁と鉄製の大きな門に、少し圧倒される。


呼び鈴を鳴らすと、メイドさんらしい女の人が出てきて海馬くんの不在を伝えてくれた。


『夕方には戻られますが、中でお待ちになりますか?』
「あ、いえ、大した用事じゃないんです。近くまで来たから、顔見せようってだけなんで。」





……嘘。


海馬くんに一言、新年の挨拶がしたい。


そう思ったらいてもたってもいられなくなってここまで来た。


「いないならいいんです。ボク、これで失礼します。」
『かしこまりました。では、失礼いたします。』





∞∞∞∞





陽も落ち切った夕暮れ。


自宅へと戻る車の中。


海馬ランドの新年のイベントも滞りなく終了し、緊急事態が起こらなければ明日一日はゆっくり過ごせるはずだ。


久しぶりにモクバと一緒にゲームをするのもいい。





そこに遊戯もいれば、言うことなしなのだが。


つい苦笑が漏れる。


逢いたいのは山々だが、年明けは遊戯も色々用事があるだろう。
後でメールで新年の挨拶でもしておこう。
もし都合が良ければ、家に招待するのも悪くない。


そんな事を考えながら、ふと車の外を見ると


「……遊戯っ!?」


門の側に立っていたのは、今オレの思考を占拠していた人物。


車から降りて遊戯の傍に駆け寄る。


「あ、海馬くん!あけま「何をしている!?」


遊戯の頬に触ると、氷のような冷たさ。


「……いつから此処にいた。」
「……3時くらい、かな?」
「っ!」


今の時刻は、5時過ぎ。


……2時間近くも此処に立っていたのか!


問答無用で遊戯を車に放りこみ、シートに置いていたコートを頭からかぶせる。


電話で家の者に温かい飲み物と風呂の用意をするよう告げる。


「……あの、海馬くん?」
「…………」





∞∞∞∞





顔を見て、一言挨拶したら帰ろう。


そう思って、門の側で海馬くんの帰りを待っていた。


寒かったけど、ようやく逢えるチャンスを逃したくなかった。


12月に入ってからの海馬くんは本当に忙しそうで、学校にもほとんど来てなかった。


この前逢ったのは、確か終業式の日にプリントを届けた時。
会議が控えているとかで、話せたのはほんの数分。


……新年の挨拶なんて、ただの口実。


海馬くんに逢えない淋しさに耐えきれなくなってしまったから、ここまで来たんだ。
メールも、電話もまめにくれた。
だけど、やっぱり直接顔が見たかった。


いつの間にか陽も落ちて、辺りが暗くなってきた。


「……はくしゅっ!」


さすがにこれ以上は風邪ひく、かな?


夕方には戻るって聞いたし、もう少し待ってみよう。




……どうしても、今、海馬くんに逢いたい。





「……遊戯っ!?」





聞こえたのは、逢いたくてしかたなかった彼の声。





∞∞∞∞





いきなり車に乗せられて、頭からコートをかぶらされて、訳の判らないまま海馬くんの家にお邪魔している。

「えっと、海馬くん?」
「…………」


な、なんか怒ってる?


腕を掴まれて引きずられるみたいにして連れて来られたのは、暖炉の前。


すごい、ちゃんと薪が燃えてるよ……


暖炉の前に座らされて、メイドさんが持ってきてくれたココアに口をつける。


「あったかーい……」


飲みやすい温度のそれは、思った以上に冷えていたボクの体をじんわり暖めてくれた。


「遊戯。」
「なに?……!」


……飲み終わるのを待ってたみたいに、海馬くんがボクの体を横から抱きしめてきた。


「何故家の中で待っていなかった。」
「……お屋敷の人達の仕事、邪魔しちゃ悪いかなって。」
「お前は……」
「……新年の挨拶がしたいなって、それだけだったから。」
「……何?」


海馬くんに体を預けて、ポツポツと呟く。


「……海馬くんの顔が見たいなって、直接、声が聞きたいなって思ったんだ。」


「そう思ったら我慢できなくて、家まで来ちゃった。」










「…………逢えなくて、淋しかった。」
「……っ!」





「う、わ……!」


少し強引に顔を海馬くんの方に向かされたと思ったら、降ってきた海馬くんのキス。


キスも、すごく久しぶり。


「ん……う…」
「……っ……」








「ぷはぁ……はあ…」
「…はっ……」


長いようで短い時間。
すっかり海馬くんのキスに翻弄されてた。


「……かい、ば、くん?」
「……オレもだ。」
「え?」





「オレも、お前に逢いたかった。」
「……海馬くん……」


海馬くんも、淋しいって思ってくれてた?
ボクに逢いたいって、思ってくれてた?


……同じ想いでいてくれたことが、嬉しい。


「海馬くん。」
「何だ……!」


いつもはあまりしない、ボクからのキス。


「……えへへ。」
「どうした?」
「幸せだなあって思って。」


海馬くんに抱き締められて、キスされて。


ボクと同じように、逢えなくて淋しいと思っていてくれた。


ただそれだけで、こんなにも満たされる。


「遅くなったけど、あけましておめでとう。今年もよろしくね。」
「ふうん……」
「?」
「オレとしては今年だけでなく、来年も再来年もそれ以降もよろしくと言いたいのだがな。」
「!!……じゃ、じゃあ……これからもよろしくね?」
「ああ。」





そう言って笑った海馬くんは、本当に格好良くて。


もう一度、ボクからキスをした。



END



あとがき。


おかしいな、日記用の小ネタのつもりで書き始めたはずなのに……


なんか思った以上に長くなっちゃったよ。


寒空の下、社長の帰りを待つ表くんが書きたかっただけなのにな。





海表は無自覚バカップルでいいと思う。

モクバくん含め、海馬邸の皆さんも二人の仲は知ってるってことで。


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