高銀(長編)
ー3ー俺からのプレゼント
8月10日
高杉の誕生日当日。
俺達の仲間達は誕生日を大切にする。
戦争で死んだ仲間の為、今まで生き長らえている自分への感謝、そしてこれからも長生きしてくれ…という願いを込めて一人一人の誕生日は皆で祝うのが習慣っつーかなんつーか。
高杉はやるなって言ってたけど、ヅラと辰馬が強引に準備をしたのだ。
深夜皆が酒と騒ぎ疲れた所為で爆睡しているなか、俺と辰馬は静かに用意をしていた。
「あははは!金時似合っちょるぜよ!!」
「へへん!まーな。銀さんナイスバデーだから何でも似合っちゃいますよ」
俺から高杉への誕生日プレゼントは…。
アイツが欲しい物は俺、
という解釈をした辰馬がやったことは
俺を女装させること。
「きっと高杉は女に飽きたんぜよ。じゃから金時の女装姿でお酌して欲しかったんき。金時はべっぴんさんじゃの〜」
いつもの馬鹿笑いをしなする辰馬。辰馬に借りた女物の着物は薄ピンク。
そしてどこから借りて来たのか紅もある。髪もいっちょまえに梳いてみて整えれば…まぁいい感じ♪
普段決して着ないこんな着物を着ても高杉がビックリする顔を想像すれば、自然と笑みがこぼれてしまった。
それにタダ!
最近甘味大量に買い込んだせいで金無かったんだわ。
辰馬が全部貸してくれたから金は浮くし、プレゼントはやる奴の気持ちだよな!
高い物を贈るよりやっぱ心よ!!
今銀さん良いこと言った。
「辰馬はもう高杉に何かやったのか?」
「…………へっ?あー後じゃ後!それより金時…おんし可愛いの」
話しかけたらぼーっとして俺を見ていた辰馬は慌てて言い繕った。変な辰馬。頭までクルクルパーになっちまったか?
「よーし!んじゃ高杉の所行って晩酌してくるわ。色々とサンキューな」
ニカッと笑って辰馬に手を振り、襖を開けて部屋から出ていった。
一人部屋に残された辰馬は、
「高杉、これがワシからのプレゼントじゃき♪」
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ルンルン気分の俺は皆を起こさないように静かに廊下を歩いて高杉を探した。
いた!!
高杉は月のよく見える縁側で煙管をふかして一人酒を呑んでいた。
いつも小馬鹿にしたようなアイツの態度…
今日こそギャフンと言わせてやる!あれ?今日は何の日だっけ?
「お兄さん、御酌しますか?」
「…あァ?」
振り向いた高杉は加えている煙管を口からボトッと落とした。
目をこれでもか!というほど開いて驚いている。
「て…てててめぇ…銀時か!?」
「当たり!どうよこの姿♪」
胸元をヒラヒラさせてポーズをとれば高杉はぷっ、と吹き出して笑った。
「あははは…ククッ……傑作だぜ、銀時ィ…クッ」
久しぶりに腹を抱えて笑う高杉は昔の頃みたいで…
高杉もこーゆう顔してたんだな。忘れてた。
戦争続きで笑うことを忘れた高杉みたいだったし。
俺も釣られて笑ってしまった。
「銀時といると飽きねェなァ…つかこの服テメェのか」
「いや。辰馬のだけど」
「坂本の野郎のか…やってくれんなアイツ」
考える素振りをする高杉に首を傾げて見ていると、すっと盃を出された。
「酌、してくれんだろ?」
「あ、あぁそうだったな」
トプトプッと盃に並々に注いで、月を仰ぎ見た。
今日は月を真っ二つに割ったような三日月。
どうせなら満月が良かったのに…。
隣でゆっくり、ゴクッゴクッと呑む高杉の喉が動く度に…何故か心がドキドキした。
なんだよこの気持ち。
おかしい…ドキが胸胸って感じ?
今更二人っきりということにドキドキ??
いやいや!高杉は高杉。
あの高杉晋助さんだよ!
自分以外興味のない高杉さんだよ?
ぼーっと月を見ながら葛藤する俺の目の前に、いきなり高杉の真顔が視界に入った。
「高す…………んっ!!」
視界に入ったと思った刹那、唇を塞がれた。
抵抗することさえ出来ない速さだった。
薄く開いていた口の中に生暖かい液体が喉を伝った。
「げほっ…ぐほっ……おぇっ」
「おい。可愛くねェやつだな…」
「ちがっ!お前……えーと…酒の度高ぇよ!!あと今のキキキキ!!!」
「無防備。…化粧してんだな、綺麗だ」
ドン。
視界は反転。
高杉に見下ろされる形で押したおされた。
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