高銀(長編)
ー2ー高杉晋助の誕生日
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未だ攘夷戦争が続く世の中。
血と砂埃の香が染み付いた服と、疲労感に浸る体を引きずりながら今日の戦いを終えて宿に帰る途中、
「銀時」
後ろからヅラが肩を叩いた。
「なんだよヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。もうすぐ…高杉の誕生日だな」
おいおい。
いきなりコイツは何を言い出すんだよ。俺は疲れてんだ!高杉の話し持ち出すなってんだ。
「銀時は何をあげるんだ?」
「は!?何言ってんだヅラ」
「だからヅラじゃない!…はっはーん。さてはもう用意済みなのか?」
「なんだよその顔!ウッゼー。つか意味わかんねーし!!アイツにあげるくらいなら俺にくれ」
馴れ馴れしく肘で小突くヅラの目の前に掌を出した。パシンッと良い音がなった。痛ぇな!
「貴様、仲間の誕生日を祝わなきゃいけないだろうが。今こうして戦いの中生き長らえていることがどんなに素晴らしいか…」
そして、ヅラは人差し指を立てて髪くれー長げー説教をまだ続ける。
「去年、銀時にも高杉はプレゼントあげたはずだ」
「う゛っ…」
確かに…ゴデバのチョコをもらった、気がする。気だから!
「貰ったらお返しするのが、武士というものだが?」
「…っヅラの馬鹿!わーたよ。何かしらあげればいいんだろ?その辺の雑草とか石ころとかでもいいんだな!?」
そういって、俺はヅラから離れるように前に走って行った。
「銀時!貰って嬉しくない物をあげるな!!もーお母さん悲しいわ!」
何がお母さんだ。
あんなお母さんいたらグレるわ!!いっそ禿げてしまえ。
高杉とは昔からの幼なじみなんだが…本当は俺はあんまり高杉が好きではない。
なんというか…
昔から意地悪で、
目つき悪くて、
何考えてんのかさっぱりわかんねーし。
それに女の子にモテる!
所詮女の子は顔だ。村の女子皆、高杉が通るだけでキャーキャー騒ぎ出す。
別に僻んでるんじゃねーから。あれだよ、人気者より脇役の方が性格はいいもんだ。サスケよりシカマルの方が俺は好きだ!
とか、考えながら走っていると前を見なかったおかげで誰かにぶつかってしまった。
「痛っ、悪…」
「おい銀時ィ。前みろや」
わーお。俺ってなんて災難。
高杉にぶつかっちまったよチクショー
運の無さはヤムチャ並だわ俺。
その時、俺はふと思った。
金持ちで女に苦労せず頭も俺よりはちょっと…コンマ良い完璧なこの男に欲しい物はあるのか、と。
「なぁ高杉」
「…」
「おい聞けよ高杉ぃ」
「…」
「バーカバーカ目つき悪!」
「殺すぞ」
「あ、はいすみません。
…高杉は欲しい物ある?いやないだろう。ないよな?雑草か?」
「欲しい物ねェ……お前」
「へ?」
「ククッ」
突然の発言に思わず立ち止まってしまった。
そしたら高杉は喉を鳴らして笑うと、「銀時にはまだわからねェか」と言って鼻を摘まれた。
高杉は冗談は決して言わない。
言ったとこすら今まで見たことない。
スタスタ先を歩く高杉の後ろ姿をただじっーと見てしまった。
『欲しい物ねェ……お前』
高杉…やっぱりお前はわからない!
俺が欲しい?俺はいつでもお前らと一緒じゃねーか。
悶々とうなだれて考えていれば、ポンと肩に手を乗せられた。
「金時♪聞いたぜよ」
「辰馬か。何を」
「今話しちょった高杉の欲・し・い・物」
辰馬はニヤニヤしながら言う。高杉の意味がわからない、と言えば、辰馬は笑顔で耳元で囁いた。
「わしがおんしに教えてやるきに。高杉の欲しい物」
「…!!本当だな!?アイツ日本語まで狂ったのか意味不明過ぎてわっかんねーつーの。存在自体意味不明ーだし」
「あはは、高杉は無口な男ぜよ。よし!そうと決まれば準備じゃ準備!!」
嫌いだった高杉の欲しい物が俺だったとは…
辰馬が教えてくれたことはすごく、すごーく死ぬほど最悪だったが、一年に一度の高杉の誕生日だ。
一応幼なじみだしぃー
高杉が喜ぶ顔を見てみたいっつーか、
顔色一つ変わらないアイツの顔色を変えてみせたいっつーか…
兎に角、高杉の誕生日までに俺達は準備した。
これが俺にとって忘れられない日になろうとは……………
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