高銀(長編)
昼
―高杉side―
町に出て来れば本当にバレンタインという日だと、今更わかった。
全く興味がなかったし、第一……あー面倒臭ェ!!
前髪をかきあげながら、朝の銀時の態度や辰馬、ヅラの馬鹿にした面、…チッ、誰があんなヤツにチョコなんか買うかよ。
煙管の葉を買うために店まで行こうとすれば、町の娘に囲まれた。
「なんだ」
「高杉さん…チョコもらって下さい!!」
「私も!」
「私のももらって下さい!戦で死なないで下さいね」
「おい!ンなモンいらな……」
大量に渡してくる女共に突き返してやろうと思った時、あの馬鹿を思い出した。
このチョコ…アイツにあげっか。
別に、もらったから食いたいヤツにやりゃァいいよな。銀時に喜んで欲しいって訳じゃねェ…
「…」
気付けば大量に置かれていたチョコの山々…
「こんだけありゃァ満足だろう」
しかし…こんだけの量を持って帰るのは、ちと面倒だなァ。
少し考え込んでいれば、ふとある店が目に入った。
「…、ただ目に入っただけだ」
そう言い聞かして俺は店に入って行った。
―――銀時side―――
俺は買い物するために町を歩いていれば、高杉の姿があった。
遠くから見ていりゃ町の女の子達からすげー数のチョコを受け取っていた。
あの高杉が受け取ってやがったんだぜ!?俺は目を疑ったよ。
絶対突き返すかと思ったのに…
高杉は顔はカッコイいし、あんま隊士以外と話さないからクールな印象あるし、金持ちだしなぁ。
俺は若干ショックだった。
いつか、「これが俺の女だ」とか言って超可愛い彼女連れて来たらどーしよー!!お母さん泣いちゃうよ!つか、アイツに釣り合う子ってどんな子よ…居なくね?ねぇあの獣に合うかーいらしい子って。
でも嫌だな…そんなの。
俺高杉好きだし。
ずっと一緒にいたいなー。
菓子屋に着いて俺は頼んでいた物を受け取った。
「おっちゃんありがとな」
「銀さんはお得意さんだからね。銀さんチョコ作るのか?貰える人は幸せだねぇ」
「ははっ心から感謝して欲しいよ。本当に」
ビニール袋に入れられた沢山のお菓子用ビターチョコの山(カカオ90%)。
女の子達より美味しいチョコレートトリュフ作るから!!…本当はブラウニー作りたかったけど高杉は苦手そうだし。
俺は走って元寺だった本拠地に戻り、すぐさま台所で作り始めた。
「金時帰ったんじゃの」
「おー。あのさ、辰馬立ち入り禁止だからマジで。お前摘み食いのプロなんだから止めろよな!絶対ダメだかんな!!殺しますよコノヤロー」
「なんじゃ物騒なこと言って。摘み食いなんかするはずないぜよ……ひゃぁ!このチョコ苦っ!炭じゃき」
「あ、今食っただろ。絶対チョコ食っただろ。はい辰馬殺す!!キープアウトォォォ」
ぴしゃりと閉じられた台所の扉。
「やめないか辰馬。見苦しい…。そんなに銀時が高杉に作るのが気に食わないのか?」
「……そうじゃな、気に食わん。参ったのぉ!ヅラには全てお見通しぜよ!!あはははっ」
「ヅラじゃない桂だ。…ふん、素直になれば良かろう貴様らしく」
話していれば高杉が帰って来て、2人と目が合った。
「何してんだテメェら」
「貴様こそ……何だその数のチョコは!!!あーやだわもう!ホワイトデーはお返しが大変だな。ぷぷっ!!」
「破廉恥じゃ(笑)!!高杉みたいな奴に…おなごが可哀想じゃの!!」
両手に抱えられた大量のチョコの入った紙袋。
馬鹿2人を足蹴りし、辺りを見回して銀時が居ないかつい探してしまった。
「金時ならこん中ぜよ。入ったら殺されてしまうきに。用心せい」
指をさして示すのは台所。“立ち入り禁止”と書かれた紙が貼られ、俺は辰馬を見やった。
「辰馬…こうなってんのはテメェの摘み食いのクセの所為だろうが」
入ってしまうのは簡単だが、銀時の機嫌を損ねかねると思い俺はメモ用紙に要件を書いておくことにした。
「ヅラァ、明後日の奇襲の件ちゃんと考えたのか?」
「い、今やるとこだ!!」
「辰馬もやることあんだろ。銀時にちょっかい出してねェでやれや」
「手厳しいのぉ高杉は。おんしに言われる前にやるっちゅうに」
2人をあしらってから俺は扉の前に置き手紙をソッと置いておいた。
“チョコやるから部屋にこい 高杉”
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