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高銀(長編)
B一夜
 
次の日、俺は高杉に言われた呉服点に行ってみた。かなり高級な着物が展示されている…うわー高杉趣味ばっか。


「いらっしゃいませ」

「あのー高杉からで着物を…」

「高杉様からですか!わかりました。少々お待ち下さい」


おずおずと着物を渡せば、愛想の良い店主は店の奥に入って行った。そして、何故かまた戻って来て俺の顔を覗き込んだ。


「な、何ですかね?顔に何かアレが付いてますか?アレ…やべーなおい」

「いや、高杉様に“銀髪の美人な方が来たら渡してくれ”って言われてましてね。失礼ですが、あなたですかね」

「さぁ?」


店主はニッコリ笑って高級な風呂敷に包まれた物を渡した。

「着物、だそうです。手入れは1週間程度かかりますので」











さすがだぜ高杉…

本っ当にコイツなんなの!?女の子にはこんなに優しいの!?
手慣れてるよ!恐ろしい…恐ろしい子!!


公園のベンチに座って頭を抱えてハァとため息を吐いた。
風呂敷の中はやはり今までの安物の着物とは天と地の差くらいある、高級な白地に花の刺繍が施されている着物だった。


どうすっかな。
高杉ってこんなにイイ奴で優しかったんだな…

つか、俺だってバレたら……殺される?
殺されるよな?マジで。
嫌だよーまだジャンボパフェお腹いっぱい食ってねーよ
「ブッた斬る」とか言って抜刀されるって!!


益々嫌な予感がよぎって冷や汗がダラダラ垂れてきた。恐ろしい…恐ろしい子高杉晋助。


しかし受け取りたくなくても、店主に無理矢理受け取らされたこの着物の礼もしなきゃいけないし…
こう見えても礼儀はいいのよ、銀さんは。



晴れ渡る空を見上げ、
「本当どうすっかなー」
と、呟いてみたが答えは空に消えていった。


「高杉…」


考えても埒があかない。
よっこいしょっと立ち上がって背伸びする。

まっ、なんとかなるか!
…殺されそうになったら全力で逃げる。











―――――――

わざわざ今日は無かったバケモ…かまっ子倶楽部の仕事をわざわざ入れて、精神的にパー子にチェンジする。
着物は高杉に貰ったあの着物だ。

仕事しながらも、ふと頭に浮かぶ高杉のこと。考えるだけで冷や汗が流れた。

一瞬よぎる高杉の優しい笑み…


別に騙してる訳じゃない、と心に言い張ってどんどん時間が過ぎていった。
店が閉店し、重い足取りで昨日高杉に会った屋台に向かった。


今日だけ、
今日だけ着物の礼だけして帰るんだ!



気合いを入れて、屋台の暖簾をくぐろうと手をかければ…

自動ドアのように開いた暖簾。


「俺ァお嬢さんに愛想尽かされなかったみたいだな」


お猪口を口に運びながら、高杉はフッと笑って言った。


不覚にもカッコイいと思った俺、ハナフックの刑に処する。



「似合ってるじゃねェか。着物」

「高杉…さん、着物ありがとうございました。手入れし終わったら返しま…」

「いや、受け取ってくれや。せっかく巡り逢えた記念になァ」




…俺の心臓ォォォ!!何ドキドキしてやがる!たかが高杉だぞ高杉晋助だぜ!?

くせーよ台詞!

赤くなる自分の顔を隠すように、高杉が呑んでいた熱燗を掴んで、一気に飲み干した。



「おい!バカそれは泡盛だっ」

「なんれすか〜ひっく、たーすぎしゃん。バカっわたしのことれすかぁ?帰りますよーありやとございましたー」


酒に弱い銀さんだけど、赤くなる顔を見られるくらいなら度数が高い泡盛呑んだって楽勝……やべークラクラしてきた。


フラリと倒れそうになった体を高杉は受け止めてくれた。


ふわりと香る懐かしい煙管の煙。高杉だなって思ってしまう。



「大丈夫か?」

「らいじょーるれすろー」

舌っ足らずに答えれば、高杉はハァと溜め息を吐いて俺の頭を撫で回した。


「昨日は1人夜道を帰らせて悪かったなァ。今日は送らせろや。…親父勘定」

「へい!」


「そんら!いいれすって」


断れば高杉は、あァ?と殺気立てて問うてくる。

なんかスミマセン…拒否権は銀さんにはありませんよみたいな、ね。







勘定を済ませた高杉は俺の前を歩き出し、不意に振り向いて俺の右手を掴んだ。


「夜は危ねェからなァ。掴んでろ」



月明かりに照らされて、微笑む高杉は…



ヤバい俺ですら惚れる。


「ど、どーも」


他にも言いたいのに言葉は見つからず…
下を向いて歩き出した。

酔って足元がふらつくけど、俺に合わせて歩いてくれている高杉のおかげで夜道でも転ばずに進める。




本当この高杉は何?

俺の心臓がバクバクいって煩いんだけど。



静かな道で外に心音が漏れてんじゃないかと思った。


繋がる手をギュッと握ってみた。



すると高杉も握り返してくれた。



なんだろうこの気持ち…


酔ってるだけなのかな、それとも…



「…たーすぎさん」

「なんだ」


振り返って視線がぶつかった。


どくんどくん…
あー心臓痛い



「ごめんれ…おれ…」

自分が銀時なんだ、と言おうとした時…


高杉の空いている片手が俺の頬を撫でた。



「銀時なんだろ?」


「いつから知ってたんろ?」


「さァな」


ククッと優しく笑って言った。


なんだよ。ヤッパリ高杉おめーはよ…



高杉の唇が俺のを塞いだ。嫌悪感は意外になくて、高杉の接吻は意外にも気持ちがいい…

酒の効力か、それとも俺が高杉を…


「はっ…ふんっ…くっぁ」

夢中になってお互い貪り合い、ゆっくり唇を離した。
おかげで酔いは綺麗に覚めちまった。



「茶番は終いにしようや。銀時ィ」

「バレてたのね…ヤッパリ高杉にはかなわねーや」

昼間悩んでいた俺が馬鹿みたいだ。
高杉は昔から勘が鋭いからなー


ニコッと笑い高杉に抱きついた。


高杉の心音は意外にも…俺と同じくらい早かった。
へへっコイツにも緊張するときがあったんだな。



すると高杉は俺の腰に腕を回して、耳元で囁いた。




「このままテメェを犯したい。近くに俺の船がある」


恥ずかしくて返事の代わりにまた高杉に接吻した。


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あきゅろす。
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