高銀(長編)
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ヅラの進路相談は案外長くなっちまった。
最後には「やっぱり俺はラッパーになります」だと…。
無理とは言わなかった。教員が教え子の夢を奪うことはしたくなかったから。
でも一言だけ……いいか?
…ヅラには無理だ(断定)!!
コノヤロー!無駄な時間費やしやがって。
「こんな時間まですみません。銀八先生、俺からぷれぜんとです」
ヅラ…お前ってやつは…
7時過ぎ、真っ暗になるからと俺のマイカー(原チャリ)の後ろに乗りながら、ヅラは鞄から何やら取り出した。
「ぷれぜんとは何………………だこれェェェ!?」
思いっきり驚き過ぎて危うく電柱にクラッシュアウトするとこだった。
ヅラに貰ったのは、ペンギンみたいな白いお化けみたいな…え、何これ。気持ち悪っ!!
「宇宙怪獣ステファ…」
言い終わらない内にヅラをマイカーから落とした。んだよ期待させやがって!
背後から変な声が聞こえたが気にしない。銀さん聞こえませーん!!
ヅラが勝手に落ちたんですー!!
マッハで家までの道を飛ばした。
あーあ今日は疲れたな。
俺はマッハで家までの距離を飛ばした。
――――…
自宅のマンションの扉を開け、俺は気だる気に中に向かって言った。
「ただいまー」
「よォ遅かったなァ」
既に部屋のソファで本を読んで寛いでいた、保険医の高杉先生。
俺たちは一応同居している…というか、うちに高杉が居着いてる感じだ。
所謂…恋人?みたいな?うわー恥ずかしい!!!
「ヅラと超無駄に長い話してたからな。ったく残業手当て出せってんだよなぁ、あのバカ校長」
コキコキ首を鳴らしてリビングに直行すれば、本から目を離さずに高杉は、
「腹減った。銀八飯ィ」
はいィィ!?
「高杉さん…今のは幻聴かなー?」
もう一度、もう一度高杉さんに尋ねてみる。
「だから腹減ったっつったんだよ」
「鬼ィィ!!銀さん今帰ったんだよ!お前は鬼か高杉!」
お疲れ様、とかさ、飯作っといたぜハニー、とかあるじゃん。
それに今日俺誕生日なのに……
高杉に文句言っても言葉では勝てないことは言うまでもない。うなだれて仕方なく台所へ行こうとすれば、「銀、ちょっと来い」と呼ばれた。
さっきは作れって言ったのに、今度は来いだぁ?どこの王様だ!!イライライラ。
「何だよ高杉」
高杉の目線に合わせて、顔を寄せて聞いてやった。
もう銀さん優しい!
高杉は本を閉じて俺に向き直り、意外なことに頭を撫でた。
「た、高杉っ?」
「銀八ィ……今日は鮭のムニエルとカルボナーラが食いてェ」
「作るかボケぇぇ!!!」
キュンとした俺の気持ち返せ!!もーやだ。高杉やだ。
パチンと手を叩いて俺はさっきよりもイライライライラして台所に戻った。
******
銀八は可愛いなァ。
なんやかんや言いつつ俺の言うことには従順なんだからよォ。
クスッと笑ってまた本を読み始めたが、ちらりと視界に入る銀八の持って帰ってきた紙袋。
アイツ…学校でたくさんプレゼント貰ってやがったな。
ソファから立ち上がり、紙袋の中を漁った。
まず1つ、土方からの高級チョコレート詰め合わせ。一緒にメッセージカード付きだ。
『銀八先生へ
大好きです。誕生日おめでとうございます。土方』
よし。土方明日殺すか。
次に取り出したのは…沖田のやつか。中身は、包装された手錠………おい。メッセージカードには、『先生のために選びました。よければ俺が使ってやりましょうか?沖田』
ククッ。イイ趣味してやがるなァ…だがこいつも殺すか。
他には…ハァ?バナナ?あと、普通のハンカチに、酢昆布にetc.………。
ろくなモン貰ってねェし、ろくなやつに好かれてねェな。
ま、敵は多いが所詮はガキだ。
銀八は俺のモンだし…
プレゼントをまた紙袋に戻し、定位置となったソファに座って本を開いた時…
「たたた高杉ぃぃぃ」
けたたましい銀八の叫び声が台所から聞こえた。
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