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高銀(短編)
恋人と幼なじみの違い
 

「ちょっ!!高杉やめろ!」

「何がやめろだ。俺たち付き合ったんだろ?今」


「だァーからやめろっつってんだバカヤロォォォ!!」




〈恋人と幼なじみの違い〉




只今高杉に俺のベッドで押し倒されています。
理由は簡単。

今さっき幼なじみだった高杉晋助に一生懸命告白したのだ!

わざわざウチに呼んで、心臓バクバクさせながらありったけの力振り絞って告白したら高杉は

『俺も好きだ。なんだ…俺ら両想いだったんだな』


とか言ってやったーって喜んでたらいきなりベッドに引かれて押し倒された。
はい。状況説明終わり!!




「だからなんで押し倒されちゃってんの銀さん!?はぁ?意味わかんないし!?つか俺が下なの?……って違うわ!!!」

「うるせェなギャアギャア。どう考えてもテメェが下に決まってるだろ?銀時可愛いし」

「え…あぁ、可愛い?………ってだから違ァァァう!!くそ!高杉のペースに持ってかれるとこだったぜ」


顔を近付けて来る高杉の顔面を一生懸命片手で抑える。
すると、ムッとした高杉が俺の上跨がったまま座った。


「俺が好きならいいじゃねェか。ヤろう」

「馬鹿!!何が『ヤろう』だ死ね!!……その、今まで俺達幼なじみだったじゃん?」

「俺は昔から銀時が好きだった。誰のモノにもしたくなかった…」

「へぇーあ、ありがとう。だからさ、あの〜その〜…」


モゴモゴとどもる俺に焦れったくなった高杉は何を思ったか俺の頭をワシャワシャ撫で回した。


「何が言いたいんだ?テメェは言いたいことがあるといつもどもる癖、どうにかしろよな」

「…うっ、あのさ…だからその〜…あー!!もう!だから、こここ恋人になったからってヤるとかすぐ言わないで欲しいんだよ!!」

「…は?」

やっと言えた言葉に高杉は驚いて目を瞬かせた。あ、その顔可愛い。


「だからさ、…付き合って最初っから抱くとかさ…なんか身体目当てっぽいじゃん高杉」

「はぁ!?何言ってんだ馬鹿!!俺はマジで銀時が好きで…」

「だから!!」


上半身を起こして高杉の細い肩を掴んだ。


「…俺だって高杉が好きだよ。でも、恋人なら幼なじみとは違う順序があるだろ!?高杉はぶっ飛ばしすぎ!!なんで付き合ってすぐにベッドインなの!?発情期かコノヤロー!本当イケメンなのに性格は最悪だよお前!!だから彼女が出来てもすぐ別れるんだ!はぁはぁ…………ごめん」


マシンガンのような俺の話に高杉は黙って聞いていた。
そしてゆっくりと俺から離れていき、荷物を持って部屋のドアに手を掛けた。


「た…高杉帰っちゃうの!?悪い言い過ぎた。でも高杉も悪いんだからな!」

「銀時ィ…明日まで待ってろ」


はぁ?…聞く前に高杉は部屋から出ていってしまった。





言い過ぎたァァァ!!!!

絶対明日に「やっぱり俺達幼なじみに戻ろう」とか言い出すに決まってる!!!!高杉はプライドがめっちゃ高いんだよ!スカイツリーより高いよきっと!


あーやっちまったよ。本当やっちまったよ…あーやっちまった!!



せっかく高杉に想いを伝えられたのに…
長い片想いも終わったと思ったのに……


無意識に涙が頬を伝った。










――――――――――

「銀時ィ起きろや阿呆。犯すぞ」

「んー…まだ起こすなよ………」


起きない。
クソ、この万年低血圧が。

「起きろ銀時!ぶっ殺すぞテメェ」

乱暴に布団を引っ張ってやればモゾモゾ動く銀時。このまま寝顔を見ててもいいが、学校に遅刻する。

銀時の頭を思いっきり踏みつけた。


「いだっ!!痛い痛い!!……うわっ高杉!?なんでお前うちにいんだよ!!しかも朝」

「やっと起きたか。支度しろ」


驚く銀時にハンガーに引っ掛かってい制服を投げ付け部屋を出た。



昨日、銀時に言われたことをよく考えてみた。

確かに…両想いだからって直ぐにヤるたァ身体目当て以外の何者でもない。


……失敗した。
そりゃ銀時も怒るはずだ。
銀時に嫌われりゃ、俺は死んだ方がましだ。


「晋助君ごめんね。わざわざ銀時を起こしに行ってくれて」

「いえ。勝手にお邪魔したのは俺ですから」


アイツの部屋からリビングに戻ると銀時のおふくろさんが銀時用に弁当を作っていた。

おふくろさんは銀時に似てめちゃくちゃ美人だ。綺麗な銀髪にウェーブのかかった髪、優しい笑顔が特徴的。
昔はこのおふくろさん見たさに銀時ん家に行った…。


でもだんだんと銀時自身に惹かれ、気づけば銀時に会いたいが為に家に行っていた。


いつから
銀時をただの幼なじみからランクが上がったのかってのは覚えちゃいねェがな。


懐かしいな…
つか、銀時が女だったら絶対母親似で美人だよなァ。勿体無ェ…

つか、おふくろさん今何歳だ!?昔から全く変わってない気が……



「晋助君、いつも銀時と仲良くしてくれてありがとね。あんな馬鹿でだらしない子でごめんなさい」

「あ…いや、そんなことは別に」

つい見とれてしまい、視線を外せばいつの間にか銀時のおふくろさんは俺の手を取っていた。


「ふふっ、いいのよ謙遜しないで。…これからもあの子と居てくれるとおばさん嬉しいな」


その優し気な笑顔に胸が痛くなった。

友人として
俺は銀時とはいれない。
銀時とは…違う意味でこれからも一緒に居たい。


「あ、はい…」

「ごめんね…銀時が女の子だったら晋助君て付き合ってもそんな苦しそうな顔しなくても良かったのに……ごめんね」

「っ!?あのっ…おばさん?あの!!……っうぉ!!」

ギュッと抱き締められ、俺は訳がわからなかった。
おふくろさんは知ってたのか?

俺が…銀時を好きなことを。


「…いえ…俺は…」



「高杉ごめんね遅くなっ………って!何やってんだよババア!?」


タイミング良く銀時がリビングに現れ、俺を無理矢理おふくろさんから引き剥がした。


「ちょっとしたスキンシップよ!だって晋助君どんどんイケメンになるんだから」

「だからって抱き着くなよな!?大丈夫か高杉?このババアにセクハラされたら言え!慰謝料払わせるからさ」




ギャーギャー騒ぐ銀時とおふくろさんを見てたらつい笑いが込み上げて来てしまった。



「何で笑ってんだ?」

「いや、何でだろうな。…ほら行くぞ」

「えっ?!ちょっ!!待てよ高杉」


銀時の腕を引っ張って限界で靴を履いていると、おふくろさんは銀時に弁当を持ってきた。



「行ってらっしゃい銀時。晋助君、銀時をよろしくね」


おふくろさんの言う「よろしくね」は今日もコイツをよろしくね、なのか…それともこれからも、って意味か…


俺はニコッ(にやり)と笑って口を開いた。

「はい。わかってますよ、銀子さん」


行ってきます、と声を掛けて俺達は外に出た。
今日も雲1つない快晴。
だが、銀時の顔は曇っていた。


「な…なぁ高杉」

「なんだよ」

「…なんでお前今日朝から迎えに来たんだよ!?朝なんて俺いつも遅刻するし、高杉とはもう何年も一緒に登校してねーじゃん…」


後ろから疑わしい視線を投げ掛けながら銀時はそう言う。



何で?
この俺がわざわざ迎えに行ってやってんのに何今更聞きやがって。



「なんでって…テメェ自分が昨日言ったこと忘れてんじゃねェだろうな」

「昨日?何だっけ?」


はぁぁ…
この能天馬鹿天パ野郎が!


無理矢理銀時の手を握り締めて歩きだした。



「うぇっ!?高杉さん?!なんでてててて手繋いでんの!!しかもここ外だし」

慌てふためく銀時を無視し歩きながら、握る手を強くした。


「俺はテメェが好きだ!!」

「…っ!」


「…昨日テメェ言ってたろ?恋人としてまず順番を踏んでやろうってことだよ」

「恋人としての順番?」


「まずは手を繋いで登下校」

「恥ずかしっ!!」

「次にデートだろ?」

「イヤぁぁぁ!!高杉様とデートなんてしたら俺めっちゃ女の子にガン見されるわ!!」

「…んでヤる」

「そしてやっぱりヤるんかい!!!」


バシッと銀時に頭を叩かれたが、銀時はクスクス笑ってやがった。

何笑ってんだ、と問えば後ろから銀時が抱きついてきやがった。

コイツが抱き着くとか…初めて過ぎて俺がカッコ悪ィくらい戸惑ってたら銀時は聞こえるか聞こえないかの小さい声で言った。



「そういう所変に真面目なとこ…嫌いじゃない」


「俺は好きなヤツには優しい男だぜ」



これから
ゆっくりでもいい。

幼なじみから恋人に
俺達なりに変わっていければいいんだ。


そうだろ?
銀時。



完、

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