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高銀(短編)
七夕



巷では今、七夕だ。

笹やら、かぶき町にはわんさか飾られている。
そこには一人一人の願望の塊の短冊が所狭しとヒラヒラ風に揺られていた。



「晋助も書かないか?」

「願いなんざテメェで叶えやがれ。俺ァ神にも願ったこたねェ」


万斉は町人に短冊を貰い、楽しそうに筆を進める。


「一枚余ったでござる。ほら晋助」

「…ちっ」


こんなことする為にわざわざ江戸に来たんじゃねェが……


万斉が筆と短冊を押し付けてきやがった。
舌打ちしながらも俺は簡潔に紙に文字を書き、万斉に押し付けた。


俺の短冊を見た万斉はクスリと笑い、近くにあった笹に自分のと俺のを吊るした。



「なんだか…晋助と白夜叉は彦星と織姫のようでござるな」

「んな綺麗なモンじゃねェさ。行くぞ」


着流しを翻し、俺達はかぶき町の真ん中を歩いた。






〈七夕〉





巷では今、七夕だ。

笹やら、かぶき町にはわんさか飾られている。
そこには一人一人の願望の塊の短冊が所狭しとヒラヒラ風に揺られていた。


何故この紙に書いただけで願いが叶うんだ?
織姫と彦星ってホントは神様なのか!?
うぜーよなー
自分らが1年に1回しかない逢瀬の日に人間達が、やれ自分の願いだ、願望だの…静かに会えるかっての!!
ムードなんかありゃしねーし。


あ。明日沖田君の誕生日じゃん!!



そんなことを思いながら坂田銀時はかぶき町を歩いていた。

別に用はない。

でも七夕の飾りや笹を見ると先生を思い出す。


昔みんなで作った笹飾りを…


懐かしいな。



この日、もし先生に逢えるなら俺はどうしよう。

つか、先生幽霊じゃん…いや、恐くないよ?先生じゃん!でも………イヤイヤイヤイヤ!!!!




とか考えてたら目の前から沖田君がアクビしながらやって来た。


「よっ!誕生日おめでとう」

「おー旦那、あり?俺明日ですぜィ?」

「先に言っておこうと思ってな。忘れるかもしんねーし」

「ひでーや。じゃあプレゼントも前貰いで」



ちゃっかり手を出して来る沖田君に、冷や汗を流しながら俺は身体を隅々まで探したが今のところプレゼントらしいプレゼントはない。


その時、近くのおっちゃんが配っていたあるモノをごっそり掴んで沖田君に渡した。



「なんでィこの紙切れ」

「七夕だし。いっぱい願い事書いて自分で叶えるんだ!プレゼントはそれで許せ!」

「全く…ガキですねィアンタは」



と言いつつ、沖田君は何枚も願いを書いては近くの笹に吊るしまくった。お前もガキだろ!!


何々…
『副長はオレだ』『マヨネーズをこの世から抹消しろ』『ゴリラの飼い方』『屯所のトイレ改善』とか……全部、

全部が真選組のことばかり。本当真選組が好きだよな。この子。



「旦那も書きなせィ。ほら」

「いーの、旦那は大人だから願いなんか自分で叶えるんだから」


「……とか言いつつ何必死に書いてんでさァ」

ひょいっと取られた短冊には

『ストパーになれますように』


「!…い、いいだろ!!これは自力じゃ直ならない産物なんだから夢持ったって!!」


はぁ、とかため息つかれると悲しくなるから。ストパーにはこの気持ちわかんねーだろーが!!



すると沖田君は一枚の短冊を見て、クスリと笑った。


「なんでィこの短冊」

「なんか変な願い書いた奴いんの?見せろ!!」


見れば達筆な字で…

良く見たことある。
あれ?誰だったかな。



「“こぬ人を まつほの浦の 夕凪に 焼くやもしほの 見もこがれつつ”だと(笑)」

「何これ?」


沖田君に問えば、短冊を見ずにまた自分の願いを書き始めた。
そして至極興味が無さそうに言い放った。


「百人一首ですぜ?知りやせんか。その句の意味は…
“待っても来ない人を待つ私は、松帆の浦の夕凪時に焼く藻塩のように、見もこがれるほど恋慕い続けている”

だったっけ。重いし、言いたいことあるなら会いにいけばいい。ウジウジした句で嫌でさァ」



百人一首…
昔アイツが詠んでた。



『なぁ、それ楽しいか?』

『風情があるだろ?趣深くいとをかし、ってな』

『わからん』

『馬鹿にはわからなくて結構』

『なんだと!!知らなくても生きてけるしー』











あ。
そっか。

この字もこの句も見たことあるのは当然だ。


アイツ…高杉のものだから。




「馬鹿が」

「…え?何か言いやしたか」

「沖田君、ちょっと短冊一枚くれないか?」

「別にいいけど…くだらないのだったら織姫からハナフックの刑ですぜ」

「お前の方がハナフックの刑だろーが。あんがとよ」


貰った短冊に俺はサラサラと書き綴って、高杉の短冊の隣に飾った。



“会いに来い!!”


ただそれだけ。


もう高杉はどこかに行ってしまったかもしれないし、根本的にこれは高杉のじゃないかもしれない。



でも、いつかアイツから会いに来るのを待ってる。



「願い、叶うといいな」

「迷信でさァ」

「ふっ……かもな」











1年に1度逢えればいいじゃないの?
織姫さんに彦星さんよぉ。


俺らは逢えないのだから……





完、

――――――――――

遅れてやって来た七夕小説!!

最近『ちはやふる』にはまり、百人一首が恋の詩だと知りました←
度々百人一首使います!!

私の願いは、「演技力をつけたい!」です(≧∇≦)

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