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恋人まであと一歩(綱海/葛ノ葉様より)
日本代表としてライオコット島に行った幼なじみをテレビで見たとき、なんだか違う人になってしまったみたいだと思った。でも優勝して日本に帰ってきた綱海は綱海のままで、なんだか安心した。

「人なんて変わっていくものだって分かってたつもりなんだけどなぁ」

綱海の隣で呟いた言葉は、彼の意味分かんねぇという言葉に一蹴されてしまった。

「どんだけ時間が経っても同じ人間だろ。俺は俺で、名前は名前だ」

「同じ人でも変わることってあるよ。いろんなことを体験して、考えて、そうやって生活していくうちに人は変わっちゃうんだよ」

「んー、やっぱよく分かんねぇな」

「綱海ふうに言ってあげよう。昨日の波と今日の波、明日の波はまったくの別物なのさ!」

「おぉ!それなら分かる!確かにそうだな。さっすが名前だぜ!」

「お褒めにあずかり光栄だね」

なるほど、と大きく頷いている綱海。このさい、この男の頭の残念さについてはあえて触れない。

「そういえば綱海、ライオコット島って外国の人もたくさん来るんだよね?やっぱ日常会話は英語が主流?」

「いや、ずっと日本語だったぜ」

「え、じゃあ向こうの人たちとどうやってコミュニケーションとったの?」

「んなモン、ノリだよノリ!」

楽しそうに笑っているけどノリでコミュニケーションなんてとれるのか?いや、この男ならやってのけるに違いない。きっとこれから待ち受ける受験という大きな壁に対しても綱海はそんな気持ちなんだろうな、と思うとなんだか急に自分の鞄に入った参考書が重く感じた。

「綱海は志望校、とか…」

決めたの?なんて、なんて無意味な言葉だろう。綱海はきっと考えてもいないだろうし、もしかしたらスポーツ推薦で行くのかもしれない。

「決めたぜ」

「え?」

「志望校」

「スポーツ推薦?」

「一般受験!」

「嘘!綱海バカなのに?」

「ひでぇなお前!馬鹿だって馬鹿なりに頑張ってんだよ!……ったく、俺だって何も…いや、何かしたわけじゃないけど、一応受験生って自覚はこっち戻ってからはしてんだよ」

意外だ。まさか綱海の口から受験生なんて言葉が聞けるなんて思わなかった。

「そ、それで志望校って?」

「あぁ、お前とおんなじトコ」

「…………馬鹿なの?」

「お前俺のこと馬鹿にしすぎだろ!」

「だって、私が狙ってるとこ、この辺じゃ偏差値上位の方だよ?スポーツ推薦も取れないよ?」

「分かってるよ!」

いや、分かってないって。だって、私と綱海の間にどれだけの偏差値の差があると…いや、本当に私失礼だな。
綱海は気まずそうに目を逸らして頭を掻く。
「俺だって向こうでいろいろ考えてたんだよ。名前が側にいなくなって、初めはサッカーばっかで楽しかったのに、お前電話もくれねぇし…元気にしてっかなぁと思ってお前のこと考えたら、すげぇ寂しくなって…」

何をいきなりとんでもないこと告白してくれてんのよ。こっちまで照れるっていうか、気まずいじゃん。

「いなくなって初めて大切なものって気づくとか言うけど、あぁそういうことかって。だから、今度はお前から離れないようにするって決めたんだ」

だから勉強頑張ってお前と同じトコ行く、と言う彼に、やっぱり彼は変わったのかもしれないと思った。

「じゃあ、これからは私も綱海の勉強見てあげる。言っとくけど諦めるなんて許さないからね。絶対私と同じ高校に受かってよ?」

「当たり前だろ!」

白い歯を輝かせて笑う綱海の隣に寄り添う。確かに彼は変わった。でもそれは私が恐れていたことより、もっとずっと素敵な変化だと思う。



恋人まであと一歩
(でも恋愛の前に受験)

-END-



エキストラの葛ノ葉様よりいただきました!
綱海と幼なじみで同じ学校とか……たまらんですね……←
電話がなくて寂しくなっちゃうとかかわいすぎて言葉がでない(*´Д`)
よっし、これを糧に受験頑張ります!
そんで綱海と恋愛するんだぃ!←


葛ノ葉様、ごちそうさまでsげふんげふん……ありがとうございました!!


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