最初の一言(栄口)
風邪で学校を休んだ日の夜、友達からメールが来た。
『風邪大丈夫ー?明日は学校来られそう?』
ベッドの中で、明日は行けそうと送るとすぐにまた携帯が鳴る。
『よかったー。あ、今日席替えしたよー。うちら前後!』
そういえば、一昨日先生がそんなようなことを言っていたっけ。
そのまま何度かメールでやりとりして、キリのいいところで布団をかけ直し、眠りについた。
翌日、教室について自分の座席を確認すると、前の席には鞄だけあり本人の姿はない。どこかへ行っているらしい。(大方他のクラスにいる彼氏のところだと思うけど)
私も荷物を置いて、机の中のプリントを整理する。
ふと、隣に目をやると、そこの席も無人だった。
(隣、誰だろ。昨日聞いとけば良かったな。)
「おー、栄口ー。」
クラスの男の子の声が急に耳に飛び込んできた。
声のしたほうを見ると、今来たらしい栄口くんがドア近くに座ってる男の子と話していた。
(栄口くんは、席どのへんなのかな。)
隣だったらいいなと思ったけど、そんな都合のいいことあるわけない。
(隣だとしても、私、上手く話せないしなぁ)
「お、名字。」
そんなことをぐるぐる考えていたら、聞き覚えのある声がして顔を向けると、栄口くんがいた。
彼はそのまま、隣の席に荷物を置く。
(え、え?)
「風邪、もういいの?」
「え、あ、うん。」
目の前の状況が上手く飲み込めない。
席替えをして、隣に栄口くんがいて……。
「あ、あの、」
「ん?」
「お、おはよう、」
自分でも不自然だと思ったのに、栄口くんは笑顔で、おはよって返してくれた。
::最初の一言::
(もっと話したいけど)
(まずは些細な挨拶から)
--End
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