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あともう1cm(田島)

「あー!名字!!」
「何?」
「どうだった?!」

年に1回の身体測定の日。
放課後、私はたまたま部活がなかった悠一郎に捕まった。
もう中学の頃から恒例となってる、この質問。

「165」
「くっそー、あと1cmかよー!」

隣で自転車を押しながら悔しそうに言う。
私たちは小さい頃からの幼なじみで、その頃はまだ悠一郎のが大きかった。(多分)
いつの間にか私が追い越しちゃって、中学入ったあたりから、勝手に勝負みたいにされ始めた。

「なんでそんなでけーんだ?」
「女の子にでかいとか言わないの」

軽く頭を叩いてやると悠一郎は「痛っ」って大げさに頭を擦る。
あと1cmかーとかぶつぶつ言いながら何か見つけたのか、小走りで少し先の段の上に乗って手招きした。

「早く!」

私はよくわかんないまま悠一郎の横まで行く。
なんか、悠一郎を見上げるって変な感じ……。

「俺のカノジョになってください!」
「は?」

突然満面の笑みでそんなことを言われても、私は驚いて何も言えない。

「え、何、いきなり」
「いきなりじゃねーよ?俺、名字よりでかくなったら言うって決めてたんだもんよ」

毎年聞いてきたのはそれでか。
……でも、段の上に乗るのは反則じゃないの?
早くしないと誰かに先越されちゃうかもしんないしよーとかなんかわけわかんないこと言ってるし。

「で、返事は?」

そんなのとっくに決まってる。

「悠一郎が私より大きくなったら教えてあげる」


::あともう1cm::


(なんだよそれー!)
(段に乗るなんてズルするからだよ)
(私も同じなんて)(まだ言わない)


--End


久しぶりすぎる田島。
告白の台詞だけ気に入ってます←

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