籠
その涙に誓って(日向)
夏のインターハイ予選、決勝の日。
俺たちは桐皇に負けた。
帰り道、他のやつらと分かれてから今日の試合のこととか明日からの練習のことを考えながら歩く。
途中で玄関先のインターホンの前に名前がいることに気がついた。
俺が近づくとあいつは顔も見ないでぼそっと言った。
「……おかえり」
「ああ」
そのまま少しの沈黙が続く。
「……上がってくか?」
名前は黙って頷いて、俺たちは家に入り部屋へ向かう。
部屋のドアを閉めた途端、名前が後ろから抱きついてきた。
「なんでお前が泣いてんだよ。」
「……泣いてない」
後ろからのびている手がジャージをぎゅっと掴む。細い白い手の甲には骨が浮き上がって小さく震えている。
「……順平が、私ほったらかしてバスケばっかやってるから、バチがあたったのよ」
俯いているのか、背中越しだからか、名前の声はくぐもっていた。いつもとは違う弱々しい声に、たまらない気持ちになった。
口調がいつもと変わらないから、余計に。
「なんで負けてんのよ」
声が震えている。俺は何も言えず、名前の手を包むように自分の手を重ねた。
「デートもしないでバスケばっかだったくせに」
後ろから嗚咽が聞こえ始めた。
名前の手を離すとゆっくり体を回して俺より10センチ以上も小さいあいつの体を抱き締めた。
一度掴むものをなくした手はしがみつくように背中に回る。
「次負けたら、許さないんだから……」
「あぁ。」
もう、絶対負けない。
::その涙に誓って::
(やっぱり泣いてんじゃねーか)
(……順平が泣かないからでしょ)
(ダアホ。なんだその理屈)
--End
今更ですが、インターハイ話。
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