[携帯モード] [URL送信]


そのやさしさが(花井/元拍手)

「あー、もう!わかんないってのっ!」
「わぁったからクッションに八つ当たりすんなよ。」

私の声に花井がキッチンから返事をする。
監督さんがバイトかなんかで野球部が休みの今日。
そんでもって三連休の真ん中の日。
私はクラスメイトで彼氏の花井に勉強教えてもらってるわけで…
大体さ、連休だからってどの科目も宿題増やしすぎっ!
普段でさえちゃんとできてないのに。

「ダメだ、飽きた。」
「んなこと言っても課題が減るわけじゃねーだろ。さっさと終わらそーぜ。」

確かにそうだけどさーと机に顎を乗せながら言うと、キッチンから湯気をたたせたマグカップを二つもった花井がやってきて、そのうちの一つを私に差し出してきた。
起き上がってカップを両手で受けとると心地よい温かさに課題へのイライラが少し和らぐ。
ありがと、と軽くお礼を言ってカップに口をつけようとした途端、いつもと違うことに気づいた。
いつも淹れてくれるのはコーヒーだけど、今日は、

「…ココア?」
「あ、ダメだったか?」
「いや、むしろ大好きだけど…なんで?」
「勉強中は糖分取るといいらしいからな。」

ふーん…
ホントなんつーか、気配り上手だよね。花井って。
あ、美味しい。

「んじゃ、花井もココア?」
「あーいや、俺はコーヒー。甘いのはどーもな…。」

…ってことは、わざわざ作ってくれたってこと?
私の為に?
しかもそんな言いづらそうにするあたり、気遣わせたくないっていう優しさの現れだよね。

「はぁ…」
「なんでそこで溜息なんだよ。」
「私には勿体ないなーと思ってね。」
「…ココアが?」

私は二度目の溜息をつく。
ココアが、じゃなくて、花井が、なんだけど。
そんなことこれっぽっちも思ってないんだろーな、この坊主は。
だけどそういうところに私は惚れたわけで。

「ううん。なんでもない。花井はいいやつだなーって話」
「これぐらい大したことじゃねーだろ。」

そんな風に言えちゃうとことか、ホント、

「ありがと。大好き。」
「っ?!」


::そのやさしさが、::


(花井顔真っ赤ー。)
(うっせ!それ飲んだらちゃんと課題やれよ!)


--End



[*前へ]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!