野
恋の在処(泉)
「やぁやぁ、泉くん」
「は?」
声をかけたらそんな冷たい反応が返ってきた。
まぁ、普段「泉くん」なんて言わないし当たり前か。
でもめげない!
「君には好きな人がいるかい?」
「んだよ、さっきから」
表情に少し「不機嫌」の割合が増えた。
仕方ないのでいつも通りに戻る。
「……泉は、私が委員会の先輩が好きだって知ってるよね」
「あぁ。なんか言ってたな。」
「その人がね、私の友達と付き合うことになったんだって」
「はぁ?」
さっきみたいに不審がるようではなく、純粋に驚いたみたいな声が返ってきた。
「クラスの子でさ、その子が先輩のこと好きなのは知ってたんだけど。」
まさか告白して付き合うまで話が進んでるとは思わなかったよ。
そういうと、泉は「ふぅん……」なんて興味なさそうなどうでもよさげな返事をして、目線を逸らした。
……あれ、なんか変な感じ。
「で、泉は好きな人いる?」
「なんでそこでそういう風になるのかさっぱりわかんねーんだけど」
「いいから!いるの?いないの?」
「……いるっちゃ、いる。」
ほら、また。
なんか、もやもやする。
「泉って頭いいよね」
「少なくともお前や浜田たちよりはな。」
「ふむ。」
腕を組んで少しの間考えてると、泉が「んだよ」と急かしてくる。
頭の中がまとまると右手を挙げて元気に言った。
「はい、泉せんせー質問です」
「……」
「好きだった先輩と友達が付き合うことになったのに思った程ショックじゃなくて、むしろ泉に好きな人がいるってことのほうが嫌だったんですけどこれってなんだと思いますか。」
泉は一瞬目を見開いて、少し考えるように私から顔を背けた。
こっちに向き直ると目が合う。
なんか結構恥ずかしいぞ……。
「俺がお前の先輩の話を聞く度にイライラしてたのはなんでだと思いますか。」
返ってきたのはさっきの答えじゃなく、そんな問いかけだった。
::恋の在処::
(じゃあ、付き合っちゃう?)
(お前がどうしてもっていうなら)
(……!どうしてもっ!!)
--End
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