野
小さなお菓子に想いをのせて(泉)
本日2月14日はバレンタインデー。
もともとは女の子が好きな人や仲のいい男の子にチョコレートを贈る日だったけど、お菓子会社の戦略で、女の子同士で「友チョコ」を交換したりと、とりあえず身近な人にばらまく日になってる日。
(もちろん彼氏の孝介にも朝一で渡したけど、特に喜んでくれた様子はなし)
「それにしても、友チョコなんてどこの会社かわかんないけどよく考えたよねー」
孝介と部活帰りに寄ったコンビニの前で肉まんを頬張りながら話しかける。私は寒いから肉まんだけだけど、孝介は他にメロンパンとかも買ってた。そのうえ、夕飯もしっかり食べるなんて信じらんない。
「こんだけ甘いものもらえるなんて素晴らしいよね！」
「その分お前も配ってるけどな」
「そういうこと言わない！」
肉まんにかじりつきながら、手に提げた紙袋いっぱいのお菓子の重みを噛み締める。
「こっちもみんなにあげてるけど、食べきれないぐらいたくさんもらえるからいいんですー。」
「あっそ。ならこれはいらねーな」
「え？」
孝介は、メロンパンが入ってる袋から何かを取り出す。
もしかして、さっきメロンパンと一緒に買ったのかな。
「ガトーショコラ……？」
「でももうたくさんもらってるから十分だよな。」
「いる！いるいる！」
私が手を伸ばすより早くひょいっと孝介が目の前のガトーショコラを引いた。
「ちょうだいよー！」
「そんだけあんだからいらねーだろ？」
「いるよ！孝介のは特別だもん！」
必死に言うと、悪い顔で楽しんでた孝介が一瞬固まった。そのすきに、私はガトーショコラを掴む。
(孝介が逆チョコくれるなんて……)
早速携帯を取り出して写真を撮る。
「なにしてんの？」
「みんなに自慢するの！孝介が逆チョコくれたーって」
「ばっか、やめろよ！」
今度は孝介が携帯を取ろうと腕を伸ばしてきたから即座に避ける。あれ、なんかデジャブ。
「残念でしたー。もう送っちゃった。」
笑顔でいうと、孝介は盛大にため息をついてしゃがみこんだ。
一回手の上のガトーショコラと孝介を見比べる。
「孝介、」
「なんだよ」
「ありがと」
「……別に」
::小さなお菓子に想いをのせて::
(あ、返事来た)
(なんだって？)
(のろけんな！って。怒られた。)
(……ばか。)
--End
パンの棚の隣にあるケーキやクッキー系の前で悩む泉がかわいくて。
最初は日向だったけど泉でよかったかも。
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