C
愛される条件(阿部/甘)
今日、告られた。まるで挨拶と同じように何気なく言われたその言葉を私は頭の中で繰り返した。
「ふーん。誰?」
「確か2組。なんつったっけ、なんか水谷が人気ある女子だっつってた」
隣で自転車を転がす阿部を横目で見ながら、頭の中では阿部に告った女子の目星をつけていた。
「で?」
「断ったに決まってんだろ。じゃなきゃここにいねえし」
「彼女に告白状況を伝える彼氏って私どうかと思うな」
「後で噂とか聞いてぐちぐち言うのはお前だろ。先に言っといたんだよ」
なるほど、と私は納得した。阿部は学習する男だ。こないだ阿部が告白されたことを隠していた(というか言わなかっただけだけど)ことに私が文句を言い口論になったことを覚えていて二の舞を起こさないようにしたらしい。
「ふったんだ…」
確かに噂なんかで聞くより阿部から教えられた方が心のわだかまりも少ない気がする。
私の言葉に眉間にしわを寄せて私を見た阿部。
「ふらないほうがよかったかよ?」
「そんなことないけど」
「ないけどなんだよ」
「可愛かったでしょ、告白してきた子」
空いた手を顎にあてて考えだした阿部は「覚えてねえ」と言った。阿部のあほ。本当は覚えてるくせに。
優しいんだから、阿部のあほ。
「…阿部」
「あ?」
「私可愛さじゃその子達に敵わないけど」
阿部を好きな気持ちは誰にも負けないから。
阿部は一瞬目を見開いて、それからにやりと笑った。
可愛さとかそういうのじゃなくて
(名字のそういうとこが、好きなんだよ)
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