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ラブレターを君に(榛名/甘)
「…なんですかこれ」
下駄箱を開けると何枚かの手紙が下に落ちた。漫画かよ。と心の中でつっこみそれを拾う。
5枚ほどあった封筒を“榛名”と書いてある上履きの横に丁寧にたてかけた。
私って偉い。嫌な子だったらここでこの手紙達を燃やしてたよ。
かばんの中から1枚の封筒を取り出し、私は溜息をついた。
榛名は俺様だがモテる。外見はやはりかっこいい人の部類に入るし、なんだかんだ優しいところもある。
何より野球をやってる姿は本当にきらきらしていて。
「…」
たかがクラスメートの、席が隣の、口喧嘩するような女から手紙もらったってね…。
でもこれを書くのに1週間は要したんだ。内容はたったの2行なのに。
…いれる、いれない、いれる、いれない…。
「何やってんだよ人の下駄箱の前で」
「ははは榛名!朝練終わったの?早いね!」
「いつもと変わんねえよ。名字、邪魔どけ」
「な、何よ!」
手紙を持っている手を後ろに隠し、榛名が上履きを手にしてその横にある封筒達に気づく様子を横で見ていた。
「…またか」
また!?まただって!?
しかも何その顔!
この子達がどれだけ心を込めて書いたと思ってんの?眉間にしわ寄せちゃって…可哀相じゃない!
手紙の主に私自身を重ね、切ない気持ちになった私はぎゅっと自分の手紙を握って榛名を睨んだ。
「なんだよ」
「榛名最低」
「あ!?」
「その子達がどれだけ思い切ってその手紙を書いたと思ってんの?好きな人に気持ちを伝えるのってすごく大変なことなんだよ!そりゃ榛名は告られるの慣れてるだろうけど―」
「お前誰かに告ったことあんの?」
は?と間の抜けた声が出た。私の話聞いてないのかこいつ。
「ないけど…」
「ふぅん。ま、ねえよな!」
「その確信ムカつくな!私だって告白くらい…」
「あるのかよ!?」
なんでそんな食いついてくるのよ。迫る榛名から一歩下がると思わず手紙を落とした。
榛名はそれを見逃さず急いで拾った私から奪い取った。
「か、返してよ!」
「“榛名へ”って書いてあるけど?」
「…うるさいっ!手紙なんか迷惑なんでしょ?返してよ!」
「お前馬鹿だな」
好きなやつからもらえたら嬉しいにきまってんだろ
(別に手紙は嫌いじゃねえよ?)(お前に他のやつからもらってるの見せるのが嫌なだけで)
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