C 両思いな僕ら(準太/甘) 「準ちゃん頑張れ!」 そうやっていつも応援してくれた幼なじみは、高校に入ってから変わってしまった。正しくは、中学生の時からちょっとずつ、だけど。 「名前!」 「高瀬くん、大きな声で呼ばないでくれるかな」 「は?なんでだよ。な、今度の練習試合俺投げるんだけど―」 「!……頑張ってね」 「おう。…じゃなくて、見に来いよって話」 「遠慮します」 昔は見に来いって言わなくても来たくせに。 「名前って野球の試合見るの好きなんじゃねえの?」 「え…普通、だけど」 「でも昔よく見にきてたじゃん」 「あれは…」 はっとしたように目を反らす名前。中学の時からこいつはこうだ。すぐ目を反らすし、俺のこと名前で呼ばなくなったし、明らかに俺のこと避けてるし… 俺だって傷つくんだけど。 つーか好きな女の子にそういうことされたら誰だって傷つくだろ? 「ぎゃっ!何すんの」 いつもみたいに逃げないように手首を掴んだ。ぎゃって… 「言わなきゃ離さない」 「〜〜!離してよ高瀬くん!」 「嫌」 しばらく抵抗した名前だったが観念したのかおとなしくなった。口をもごもご動かしたけど何言ってるか聞こえなくて、もう一度聞き直す。 「だから!…あ、あれは試合じゃなくて高瀬くんを見るのが」 好きだったの。 思わず名前の手首を掴む力が緩んだ。そのすきに名前が逃げ出す。あいつの顔は真っ赤で、きっと俺も真っ赤なんだろう。 「…っ名前!」 名前を呼ぶと振り返らないで立ち止まる名前。 俺は廊下だということも気にせず叫んだ。 次の試合絶対勝つから見に来いよ! 名前はこくんと、小さく頷いた。 (青春だねえ) (慎吾さん!なんでここにっ) [次へ#] |