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と日向


ナイフがふり下ろされて私の身体を貫くまでの間がスローモーションに感じられた。


まるで時間が止まってしまったみたいだ…
死ぬまであと何秒だろう…、
そう考えていたら「キンッ」という金属音が私の目の前で響いた



ゆっくり目を開いて見えた光景は山本君の背中で、伸ばされた腕の先には長く、夕日の光で綺麗に輝く日本刀が握られていた。
そして、私を刺すはずだったナイフは地面に転がっていた。


私は今何が起きたのか全く把握できずにいた。


「や、…山本……くん…?」



「大丈夫か名字?」



「…はい…」



山本君はいつもの声で、前方に顔を向けたまま聞いてきてくれた



「ッ…まさか雨の守護者に出くわすとは…」



「あんた、一体誰なんだ。なんで名字を殺そうとしてた」



「何でって、お前知らないのか…?」



「何のことだ?」



「……今回は退き下がろう、だが…」



男の人は山本君の後ろにいる私に視線を向けてきた



「自分が最良だと思う道を選べ」



そう言って男の人は私達に背を向けて去っていってしまった。



私は身体中の緊張感が一気にとれて、その場に座り込んでしまった。



「大丈夫か…?」



顔をあげると、心配そうな顔をした山本君が目の前にいた。



「山本君……私…」



「傷痛いよな、早く病院にいこう」



ほらっ、と山本君は背中に乗れと言うようにしゃがんだ。



「…ありがとう」



そう言ってゆっくり山本君の背中におぶさった。

正直すごく迷ったが、断って途中で倒れたりするほうがもっと山本君に迷惑がかかると思ったので素直にお願いする事にした。



「さっきの奴はいきなり襲ってきたのか?」



「…はい…」



「…何か心当たりは?」



「…」


私は答えなかった、これ以上山本君を巻き込んではいけないと思い、私は口をつぐんだ



「…、でも、無事でよかった……」



「ぁ…」



山本君にそう言われた瞬間、恐怖心で埋め尽くされていた私の心は山本君の言葉で一気に安心に変わって、涙となって押し寄せてきた。





「あっ、ケガしちまってるから無事ではねぇのか…ゆっくり歩いてるつもりだけど揺れて傷痛くないか?」



「っ……」


「名字…?」


私はまた答えられなかった。
でも、それ以上山本君は何も聞いてこなかった



「っ…ぅっ…」




初めて、人の背中で泣いた

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