竹
溶ける前に(阿部/甘)
阿部彼女設定
付き合いは長いかんじで。
「阿部ぇ〜暑いよ〜……」
夏、阿部が久々に部活が休みだというので私は阿部の家に遊びに来ていた。
「渚…、お前いきなり押し掛けてくるなりダレてんのかよ」
全く迷惑な…と、阿部はベッドに腰かけて野球のスポーツ雑誌を読んでいた。
「だって阿部の部屋クーラーないんだもん」
「扇風機がありゃ十分だろ」
阿部はそう言って私が今一人で占領している扇風機を雑誌から視線を離さずに指差した。
「…阿部暑くない?」
「別に」
そういうと思った…。
阿部はいつもぶっきらぼうに言うけど決していつも怒っているわけじゃないんだ。むしろほとんど怒ったりなんてしていないんだろう。
今だってきっとホントは暑いはずなのに我慢して私に扇風機を使わせてくれてるんだ……多分。
阿部のこういう優しいところが私は大好きだ…
「…よいしょっ」
私は扇風機のコードを引っ張って、阿部の目の前にもっていった。
「なに」
「扇風機のお裾分け」
「それ日本語おかしいだろ」
ちぇ…、せっかく扇風機持ってきてあげたのにまったくこっち見ないし。
そんなに私より雑誌のがいいのかっ…
そう思って阿部の後ろから雑誌を覗き見た。
「阿部のスケベ」
「はぁ?」
阿部は首を一気に回して私の言ったことにめっちゃ反論をしてきそうな顔をこっちに向けてきた。
「違うの?」
「お前…、何がしたいんだよ」
「うーん…、アイス食べたい」
「あっそ。うちには今ねーぞ」
「じゃあ買いにいこーよ」
「めんどくさいからやだ」
そしてまた雑誌を読み始める阿部。ちくしょう…
「あーべーぇーっ、アイスぅぅぅー」
「………」
あくまで無視するつもりか…。
私は阿部に後ろから引っ付いて必死にねだった
「ア〜イ〜ス〜…阿部アイス〜っ、暑くて溶けちゃう…」
「ったくうっせぇなぁ〜、わかった、コンビニ行くか」
「やったー!阿部大好きー」
「知ってる」
なんて真顔で言うから、私は一瞬、阿部に見とれてしまっていた。
「お前顔赤くなってんぞ」
「阿部のせいでしょ」
「フッ……ほらさっさと行くぞ」
なんか阿部のほうが私より行く気満々じゃん
「いっぱい買っちゃおっかな」
「やめとけ、どーせお前2つぐらいでいっぱいいっぱいになんだから」
「う…」
お前は私のママか!ってたまに思うときがある…でも最近は阿部のおかげで無駄な出費が減った気がする
──────────
「アイス買ったー」
「全部食えよ」
「あっ!阿部もう食べてるの!?ずるいっ」
「早く食べないと家つく前に溶ける」
「わっ!ほんとだっ、もうなんか軟らかくなってる」
阿部の持ってたビニール袋の中のアイスに触れてみたら、もうかなり溶けはじめている感じがした。
「わぁー、どっちから食べよう…ソーダ?それともチョコ…」
「早く決めろ」
「チョコ食べる!」
と私は急いで袋を開けて口に押し込んだ。
「おいひーっ」
「んー(そーだな)」
溶けて落ちたりしたら嫌だと思ってガンガンかじりついてたらあっという間にアイスはなくなって、手には棒しか残っていなかった。
「は?もう食った?」
「うん…、なくなっちゃった…」
「俺、今の貰おうと思ってたのに……
…ったく」
もらうぞ…って阿部が近づいてきたと思ったら、阿部に口元をペロッと舐められた。
「っ…!あ、阿部!?」
「ごちそーさま、やっぱ甘いのはそんないらねーや」
阿部は普段通りで、私は一人ドキドキしてしまっていた。
「…やっぱ阿部はスケベだ……」
「渚!早く帰っぞ(マジでアイス溶ける)」
「もうダメだ…」
私のほうが先に溶けちゃったよ
溶ける前に
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