2 頑張る君に(雲雀/甘) 黙ってちゃ何もわからないでしょ、って言われて私は言葉を探すけど、うまく見つからなくて。口をつぐんだまま顔をふせた私にふってきたのは恭弥のため息。ごめんって言ったら恭弥はもっと呆れてしまうだろう。 いつもそう。辛いことがあると恭弥に甘えてしまう。恭弥はぶっきらぼうだけど本当は私のこととっても心配してくれる。だからつい、甘えちゃうんだ。 「何か言いたいことがあるんじゃないの?」 「…ん」 「それじゃあわからないよ」 私自身うまく説明できないんだもん。だけど恭弥なら伝わるかなって、わかってくれるかなって。「そんなわけないでしょ」ってきっと恭弥は言うだろうけど。 応接室の向かいのソファに座っていた恭弥が立ち上がる。もしかして呆れられてしまったんじゃないかなんて思うと心を覆う鬱蒼よりも不安が打ち勝つ。 私の不安を裏切って、恭弥は給湯室からマグカップを二つもって私の隣に座った。はい、と渡されたマグカップの中には甘いコーヒー。お砂糖ちゃんといれてくれたんだ。 「君が黙ってる限り僕には何にもわからない」 恭弥はマグカップをテーブルに置き、私の頭を引き寄せる。恭弥の胸へと迎えられた私に、恭弥の温もりが直に伝わってどきどき半面、すごく落ち着いた。 「でも放っておけないんだよ。わかるかい?」 「…うん」 「だからできれば相談してほしいと思うよ。けど君は頑固だからね」 なでなで。優しく撫でる恭弥の手がどうしてこんなに愛しいんだろう。 「僕には月並みなことしか言えないよ、」 頑張りな。 顔をあげれば恭弥と視線が合う。恭弥ってすごい。頑張れ頑張れって言われるの辛かったはずなのに、恭弥の「頑張れ」は重たくなくて、むしろ肩の荷をおろしてくれる。魔法の言葉みたい。 私はいつだって恭弥に助けられてるんだよ。甘えちゃうんだよ。 「…ね、恭弥」 「なんだい?」 「きすして、…いい?」 ふ、と笑ったあと恭弥の瞼が落ちる。そっと触れた唇は、ちょっと苦いコーヒーとお砂糖の混ざり合ったような味がした。 ありがとう、 その気持ちがどうか伝わりますように。 さて、頑張りますか [*前へ][次へ#] |