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かわいいとは(雲雀/甘)
得てしてオシャレとは、非効率的なのです。
たとえば慣れないヒールの高い靴を履いたから靴ずれして足が痛いとか、可愛い服が薄着だから無理やり薄着にしたらちょこっと寒いんだとか。
言えるわけ、ないんだけど。
だって彼のためにこんなに頑張ったんだから!
堪えろ私、堪えるんだ。
そう念じながら1時間程。男女の歩幅の差と、もともと歩くのが早い雲雀さんの背中を追いかけて奮闘中。時々ちらっと横目で振り返ってくれる雲雀さんに申し訳なくて、痛くて仕方ない足を引きずるように歩く。
すると、雲雀さんが突然立ち止まって私を見るからどきりとした。もしかして、私遅かった?いや遅かったよね。
「…雲雀さ」
「足」
「え?」
「足、痛いの」
「…あ、だい」
「大丈夫はなしだよ」
「…痛いです…ちょっと」
「かなり痛いんだね」
ため息をついた雲雀さんはなんでもお見通しだ。申し訳なくてたまらない。迷惑だとか、うざったいとか思われちゃっただろうか。嫌だなあ、せっかくの初デートなのに。可愛い、って思われたかったのに。
視界がぼやけてきて顔をふせると、目の前に手が差し延べられた。え?と顔をあげる。雲雀さんは呆れても怪訝そうでもなくいつもの表情で、
「もう少し歩くけど我慢してね」
と言った。
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手を繋いだことにどきどきしながら気づいたことは、さっきより歩くのが楽なこと。雲雀さんがペースを合わせてくれてるんだ。だってさっきまで雲雀さんの背中ばかり見ていたのに今は隣にいるんだもの。それだけでもう嬉しくて、だけどちょっと申し訳なくて。
雲雀さんに手を引かれ着いたのは公園、私達はベンチに腰をおろした。
「…何か、飲み物買ってきま」
「君は座ってなよ」
「はい…」
「…」
「…」
「痛いなら、早く言えばいいのに」
「…うう」
「それに」
ベンチから立ち上がって上着を脱いだ雲雀さんは私にそれを投げた。戸惑う私に一言、「寒いんでしょ」………ばればれだ。
「ねえ、どうしてそんな慣れない格好してきたの」
「…だって」
「だって、何?」
雲雀さんに可愛いって思ってほしかったんです。そう言うと雲雀さんはちょっと驚いて、目を反らした。…あれ、ちょっと、ほっぺ赤い…?
「雲雀さん、ほっぺが…」
「うるさい」
「ごっごめんなさい」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…別に無理して可愛くなる必要なんかないでしょ」
「だって、好きな人には、可愛いって思われたいものなんです」
「…。君のそういう素直なとこ、嫌いじゃないよ」
「え?」
「そのままでいなよって言ってるんだよ。なんか文句ある?」
「え、な、ないです!あの、それって」
雲雀さんはちゃんと私のこと想ってくれてるって解釈してもいいんですか?
顔に熱がたまるのを感じながら聞くと、雲雀さんは「言わせないでくれる?」と言ってそっぽをむいてしまった。さらさらの黒髪から覗く耳は真っ赤だった。
可愛いとは
0605
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