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創作小説

貴方に
伝えそびれた言葉だけが
私の手のひらに残っていた



‐― 夢ノ中デ見ル幻 ―‐



空っぽになった貴方を抱(いだ)きながら、私はその場に座り込んでいた。


貴方は、
こんなにも
小さかったっけ?
軽かったっけ?
冷たかったっけ?


大きく感じた、
重く感じた、
暖かく感じた頃の貴方を思いだそうとした。


でも、


現実を目にした途端、うたかたの泡のように、その記憶は、はじけて消えた。


冷たくなった貴方が、今、ここにいる。


忘れもしない数刻前、暖かかった貴方は私に想いを告(つ)げた。
急な事で、私は貴方の想いにどう答えればいいか分からなかった。


そして、そのまま、戦(いくさ)が始まってしまった。


『失ってから、気付く』という言葉が、今更になって、頭に浮ぶ。

あの刻(とき)、私が貴方の想いに答えていたなら、貴方は死ななかったでしょうか?
死なないでくれたでしょうか?

もう一度、生きている貴方に会いたい。
でも、それは叶わぬ願いで、
例え、会えたとしても、
それは………





ユメ ノ ナカ デ ミル マボロシ
夢 中 見 幻









馬鹿。
貴方が死んだら、何にもならないじゃない。



私の腕の中で、二度と目が覚めぬ眠りにつく相手を罵(ののし)ろうと開いた口から出たのは、嘲(あざけ)りの言葉ではなく、





言葉にならない嗚咽(おえつ)のみだった。





泣かないで

さんざめく木漏れ日
木々のざわめき
水のせせらぎ

それら全てが
母なる大地から
死に逝く者への
鎮魂歌











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あきゅろす。
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