創作小説
1
ある大きな森に、ひとりぼっちのオオカミがいました。
オオカミは一人でいても平気でした。
なぜなら、一人でいるのが好きだったからです。
そんなある日、雪が降りました。
雪は、緑の森を真っ白な世界に変えました。
オオカミが森を散歩をしていると、雪の中に黄色の"けむくじゃら"を見つけました。
オオカミが不思議に思って近付くと、それは………トラの子どもでした。
『ははーん、さては"ドーブツエン"から逃げてきたトラの子どもだな。』
オオカミは考えました。
トラの子どもはオオカミを見て、言いました。
「お父ちゃんと一緒に"ドーブツエン"から逃げてきたんだけど、お父ちゃんとはぐれちゃったの。
オオカミのおじさん、お父ちゃんを知らない?」
「知らないよ。」
オオカミは答えました。
トラの子どもはうつむきました。
オオカミは面倒事に巻き込まれるのは嫌だったので、逃げるようとしました。
でも、トラの子どもはオオカミの黒い尻尾を引っ張って言いました。
「お父ちゃんを探すのを手伝って。」
『ごめんだね。』
オオカミは思いました。
オオカミはトラの子どもを置いて、歩き出しました。
しばらくして、オオカミが振り返ると、トラの子どもがついてきているのが見えました。
「はぁ。」
オオカミは溜め息を吐(つ)きました。
仕方ないので、オオカミはトラの子どものお父さんを探す事にしました。
オオカミは森で一番賢いと言われているキツネの家に行きました。
「おい、キツネ。このトラの子どものお父さんを知らないか?」
「知らないよ。」
キツネは自分の子どもの頭を撫でながら、答えました。
「キツネの子になっちまえよ。」
オオカミはトラの子どもに言いました。
「森一番に賢いキツネの子どもになれるんだぜ?」
トラの子どもは、
「本当のお父ちゃんじゃなきゃ嫌だ。」
と言って、首を振りました。
オオカミが、雪の中をさくさくと歩いて振り返ると、トラの子どもはだいぶ後ろにいました。
オオカミは考えた後、ゆっくりと歩く事にしました。
次に、オオカミは森一番に強いクマの家に行きました。
「おい、クマ。このトラの子どものお父さんを知らないか?」
「知らないよ。」
クマは自分の子どもの毛づくろいをしながら、答えました。
「クマの子になっちまえよ。」
オオカミはトラの子どもに言いました。
「森一番に強いクマの子どもになれるんだぜ?」
トラの子どもは、
「本当のお父ちゃんじゃなきゃ嫌だ。」
と言って、首を振りました。
オオカミが、雪の中をさくさくと歩いて振り返ると、トラの子どもはだいぶ後ろにいました。
オオカミは考えた後、トラの子どもが追いつくまで、立ち止まる事にしました。
次に、オオカミは森一番に物知りのタカの家に行きました。
「おい、タカ。このトラの子どものお父さんを知らないか?」
「知らないよ。」
タカは自分の子どもを翼で抱きしめながら、答えました。
「タカの子になっちまえよ。」
オオカミはトラの子どもに言いました。
「森一番に物知りのタカの子どもになれるんだぜ?」
トラの子どもは、
「本当のお父ちゃんじゃなきゃ嫌だ。」
と言って、首を振りました。
オオカミが、雪の中をさくさくと歩いて振り返ると、トラの子どもはだいぶ後ろにいました。
オオカミは考えた後、トラの子どもが追いつくまで立ち止まり、一度か二度、吠(ほ)えました。
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