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「うっひょ〜〜〜うめぇ〜〜〜!これ何ていうジュースだ?」

「これはこの島名物、パトウジュースだ。」

「パトウ?聞いた事ねぇな。何かの果物か?」

「おうよ!
 この島でしか取れないパトウって木からなる実を潰して砂糖と混ぜたのが、このパトウジュースなんだ。」


興味心身で話を聞いているサンジ

そのサンジの質問に詳しく答えるのは、先程ちょっとした用事から帰って来たウォッカだった。



今麦わら海賊団はグラン島に立ち寄っていた。

市場の横にある商店街を回りながら、お薦めだというこの店で、食事を行っている所であった・・・・・











あの悪夢から・・・・


ゾロがいなくなった日から、三年の月日が流れた。



あの日
急いで船を引き返して唯一の手がかりである島に戻ったのだが、ゾロの手がかりは何一つなかった。



港の船付き場で、それらしい人物がいなかったのか、手当たり次第で聞いていったが、
皆揃って、「そんな奴はいなかったぞ」「美女だったらいたけどな」と言うだけだった。



結局何の手がかりも掴めず落胆の色を隠す事も出来ず、途方にくれたルフィ達。

これ以上ゾロのいないこの島に用はない
他に手がかりなんて思いつく筈もなく。当てにもならないような情報に頼って急いで出航した。


でも、その情報も
やっぱり偽物で・・・・・



押し寄せる絶望を振り払うように
自分の心に喝を入れて、皆必死に探した・・・・・






ナミとロビンはあらゆる地方の新聞を買いあさり
少しでもゾロの情報が載っていないか探し


チョッパーは海を飛んでいるカモメや魚海獣を見る度には話しかけてゾロの事を聞きまわった。
時折凶暴な魚海獣に食べられそうになる時もあったが、それでも諦める事はなかった。


ウソップはそのお得意の話術で島に着いては、出航まで永遠とゾロの手がかりを聞き回った。


サンジも同じで例え美しい美女を見ても、
ナンパする所かゾロの情報を聞いては去っていくという姿が三年経った今では定番ついてしまった。

今のサンジは、フェミニストなのは変わりないが、
極度の女好きが嘘のように、目をハートにしてデレデレする事はなくなってしまった。

もし、バラティエにいるサンジの育ててくれた皆がみたら、速攻で病院につれていく事だろう・・・・





そんな彼等が三年経って行き着いたのが、このウォッカという男だった。



もうあれから、三年もの月日が経ってしまった・・・・

ゾロに関する変な噂すら世間では流れだしてしまい、
クルー達はもう、身体的にも精神的にも限界を迎えようとしていた・・・・・


それでも諦めるなんて事はある筈がないのだが、
手がかりがもう、欠片もなくなってしまったのだ。



頭を抱えて途方に暮れる航海士の元に、サンジが温かい飲み物を持ってやってきた。


「手がかりが何もなくなってしまった今、もう一度あの島に戻ってみませんか?」


サンジのその一言に、
これ以上手がかりのない状態で闇雲に船を走らせるよりかはいいだろう、と

次に向かう島が決まった・・・・





何日もかけて近くまで来たのはいいが、そろそろ食糧が底をつきそうだったので、
近くの島にメリー号は立ち寄った・・・・


その島で出会ったのが、このウォッカという男だった ―――・・・・・・












隠すこともせずにおおっぴらに海賊旗をはためかして停船しているというのに、
余程自分に自信があるのか、はたまた命知らずなだけなのか

この男は自分からメリー号に近づいてきた・・・・



船長が能天気なのは三年たっても変わる事もなく

いつも警戒役に当たっていたゾロがいない今は、
ロビンとナミが腹の探りあいの様な警戒心を露にしていた。

ナミは怪訝な、ロビンは何を考えているのか分からない笑顔で
それぞれが、怪しいウォッカという男を見定めた。





彼は開口一番
まるで試しているかのような声音でこう言った。



「お前ら三年前に俺の島によった事があるだろう」と・・・・






数え切れぬほどの島に立ち寄ってきた為、クルー達は一体何処の島なのか検討も付かなかった。


ゾロの情報が少しでもあると
ログが溜まる前に、島を出港する事も一回や二回なんてもんじゃなかったのだ。


だが三年前というあの全てが変わってしまった年の事を
この男は間違いなく口にしている事だけは嫌でも分かった。


ナミ達に緊張の色が走る中
貴方の島はなんていう名前かしら、と笑顔でロビンが訪ねた。







男の答えは、忘れもしない・・・
ゾロが消えて直後に引き返した島だった・・・・・







皆の顔に緊張と焦りの色が顕著に表れた。

しかし、此処で焦って下手な事をしたら、漸く見つけた手がかりを失ってしまう。


今すぐどういう事かと詰め寄りたい気持ちを必死に堪え、
ナミは怪訝な表情を更に深めて、男の用件を単刀直入で聞いた。


「一体どういう事かしら?」

「あんたん所で、誰かいないくなった奴はいなかったか?」


先ほどの爽やかな笑顔とは一転し
真剣な表情を浮かべ、まるで自分達を試すような視線でそう訪ねてきた男の決定的な言葉に

クルー全員に緊張と焦りがとうとう爆発した。




サンジとルフィが男の胸倉を掴み、「お前何か知ってるのか!?」と矢継ぎ早に、
傍から見れば、怒鳴っているとしか思えぬ形相で問いただした。

しかもサンジに至っては、殺気がだだ漏れだ。



普通のものなら、もうこの時点で失神ものだろう。

だが、男は少し苦しそうな表情を浮かべてはいたものの失神する事はなかった。


この二人に、しかも今の鬼すらも叶わないような形相に恐れをなさない者は久しぶりで


後に・・・

その度胸ある肝が据わった男に称讃すらした、と
ルフィとサンジの形相に震えていたチョッパーとウソップは語った・・・・





行き成り話をややこしくする二人に、ナミが拳骨という制裁を与えて地面に沈めた後

ナミは震える声を必死に抑えながら
「貴方、何か知ってるの?」と男に尋ねた。





三年かけても、碌な手がかりしかなかった・・・・・



だからこそ、今この一筋の希望を失う訳には絶対にいかなかい・・・・・









ウォッカは、大量に流れてきた酸素を必死に味わいながら

今でも、ふとした時に悲しそうな、遠くを見つめるような表情を浮かべる
自分が守ると決めた大切な女性の事を脳裏に思い浮かべた。




( サキ、お前はこんなにも愛されてるじゃねぇか・・・・・・)




ウォッカなりに、麦わら海賊団の偵察を終えた後

立ち上がり服に付いた砂を払い終え、さぁオレンジ髪の女の問いに答えようとしたら
今まで黙っていた、変わった鼻をした男が急に変な声を出した。



先程俺の胸ぐらを掴んだ金髪の兄ちゃんに、「てめぇは黙ってろ!」と怒鳴られているも

変わった鼻をした男は、
何故か俺を驚いた顔で見ていて、金髪の兄ちゃんの怒声には気がついていない様子だった。



「あ・・あんた、確かあの時の!!!」

「え?ウソップ知り合いなの?!」

「嫌・・・知り合いじゃねぇんだが、その・・・・・」


俺は記憶力には自信がある。
客がいての商売だから、会った人間は大抵覚えている。

しかもこんな特徴がありすぎる男の事は忘れる筈がねぇんだが・・・・・


( はっきりいって会った覚えも見かけた記憶もねぇぞ・・・)




どれだけ、自分の記憶をひっくり返してみても
はっきりとそう断言する事ができる。





一方・・・




仲間の発言に驚きとそのはっきりとしない物言いへの苛だち、
そして少しの焦りを交えた声で、オレンジ髪の女が振り返った。

すると絵本にでてくる操り人形のような鼻をした男に、さっさと答えなさいよ!と渇を入れた。


(・・・えらく気がつえー女だな・・・)


なんとなくだが

この経った数十分もしないやり取りの間に
この海賊団の影の支配者が誰なのか分かった気がしたウォッカだった。



そうやって、ウォッカが深く思っていると
異様に鼻が長い男がチラチラと俺を見ながら口を開いた。


「あ、あのな。俺たちが引き返している途中に、すれ違った船があっただろう。
 あの照明弾の中で見えた男が、確かこいつだった気がするんだ・・・・・」


最後は何処か自信なさげにボソボソ言うウソップ。

無理もないと思う。
三年前の記憶で、しかも暗闇の中の一瞬の出来事だ。


だが、この男の発言で、俺はピンときた。


まあ、この海賊が海を牛耳ってるご時世で
照明弾自体殆ど使う事がない。

前に使ったのだって、三年前の夜だったのだ・・・



(あの船は、こいつらのだったのか・・・・)


それが分かった瞬間、何ともいえない思いが胸を渦まいた。


何と言ったらいいか・・・・・


ウォッカ自身、神なんてものは信じちゃいねぇが
これはとんだ神の悪戯、嫌海の悪戯と言っても過言じゃねぇ気がする。




「あの時の船はお前らだったんだな・・・・・じゃあ話は速い。
 あんたん所で、緑の髪と三本の刀を持った剣士がいたか?」


「「「「「「ッ!!!!!!!!」」」」」」




あまりに的確すぎるその特徴は
実に麦わら海賊団が求め、探し続けた人のそれと一致した。



これで勘違いなんて言いだしたら、即ウォッカは涙と怒りの拳で瞬殺されるだろう。


自分がどれ程の危険を帯びた発言をした事を
分かってるのか分かってないのか、ウォッカはニヤニヤと笑っていた。



「ゾ、ゾロだよ!やっとゾロの手がかりが・・・」


チョッパーがウソップと抱き合って涙を流しながら喜びの声をあげる。






普通ならば、こんなに怪しい話はない。




もしかしたらクルーを陥れる罠の危険性の方が高い。


それはこの場にいる全員が分かっていた







けれど、信じたかったのだ・・・・・・








漸く見つけた、たった一つの可能性を・・・・・希望の光を・・・・・・・








「あんたらが出航する少し前に、ある島まで連れて行ってほしいと言う奴が現れた。
 何か訳ありなのは一目瞭然だったが、俺は其処に連れて行った。
 そして今もあいつは苦しんでる。
 その原因が何なのか・・・此処数年あいつの傍にいて大抵の想像はついた。
 俺はあいつを助けてやりたいって思った。だがどうしたらいいのか分からずにいた。」


・・・・・其処で会ったのがお前達だ






こんな偶然はもうない。だから俺はあんた達にかけたい・・・・・・・



俺、人を見る目には自信があるんだ―――――










自信が籠もった笑みを浮かべる男に

自分同様に一抹の望みを込めた勝負に出ている事をクルー達は伺い知った。




その決意の深さも――――――





「頼む!どんな情報でもいい!教えてくれ!!!」

サンジがいきなり地面におでこをつけた、所謂土下座で懇願した。


その行為は男だけでなく、クルー達までもが驚いた。


今ではなりを潜み始めたものの、極度の女尊男卑が当たり前の男が
男に土下座をしただけでなく血が滲みそうな勢いで懇願し始めたのだ。


後ろにいたクルー達は想像すら出来なかったその姿に最初呆気に取られてしまったが
彼の震える肩を見てすぐに我に返り、皆が口々に頼み始めた。



皆もサンジと同じ気持ちなのだ。



戻ってきて欲しい。



あなたがいないと私たちはもう麦わら海賊団ではないから・・・・・





あなたにそれを早く教えてやりたい




あなたがいなかった船がどれほど暗く、活気がなかったか・・・・・



あの大食らいの船長が島であなたの情報がない度に落ち込み、食欲が落ち
今ではあなたがいた時の半分の量しか食べなくなってしまった事を



元凶のコックは、フェミニスト振りは健在だが、病的な女好きがすっかり成りを潜み、
今では女性への第一声が緑髪の男を知らないかい?だと言うことを



ウソップも、チョッパーも、ロビンも私も、
あながいない現実にいまだ夢に出てくるあなたを思って泣いてウサギみたいにしてしまう事を







皆あなたをどれくらい想っているのか、速く会って伝えたい





そして思い知ればいいんだわ




私たちがどれだけあなたを想っていたのかを。











見つけたら

もう二度とこんな真似をしようなんて思えない位、引っ付いて離れてなんてやらないんだからっ!!!!











[2013/2/10]
[2013/12/29 加筆修正]

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終に全ての鍵を握る男と麦わら海賊団が接触しました。


さて、皆はゾロに会えるのでしょうか(^^)





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