十五夜 〈他〉

S.D.KYOのほた辰中心辰伶総受け素敵サイト
「虹のビー玉 七色の願い」の那由様から六周年記念に頂いた素敵小説です。









「ねーしんれー。別におまえがそれやる必要ないじゃん。」
「ん?でも頼まれたしな。」

お月見団子を作る辰伶にくっつきながら、ほたるは酷く不機嫌そうな顔をした。


十五夜


「誰に頼まれたわけ?」

団子粉に少しずつ水を加えていく辰伶の手元を覗き込みながらほたるは聞く。

「別にいいじゃん。わざわざ辰伶がつくんなくても、こんなん買ってくれば。」

ほたるが辰伶の脇から腕を伸ばして粉が入った入れ物に手を突っ込もうとする。
それをやんわりとさけながら、辰伶は困ったように笑う。

「遊庵さまに頼まれたんだ。」
「はぁ?ゆんゆんの頼みなんて聞かなくてもいいじゃん。」
「そういうわけにもいかんだろ?」

こんなもんか、と水を入れる手を止めた辰伶に、これさー、とほたるはつまらなそうに言う。

「これ、今夜の月見用?」
「そうだぞ?」
「こんないっぱいさ、誰が来るわけ?」

軽く見積もっても20人前以上の量に、ほたるは嫌な予感がする。
おまえ聞いてないのか?と少し驚いたように言った辰伶に頷けば、そうか、と辰伶は少し考えるように手をとめる。

「壬生にいる遊庵さまと灯はもちろんで……狂も来ると言っていたぞ?ゆやも着いてくるだろう。
あと、京四郎と朔夜、時人さま、アキラ、梵天丸……あ、真田幸村も来るらしい。
それに、庵曽新たちも顔を出すと言っていたし。」
「……へぇ。」

結構な人数に、なぜ自分が知らなかったのかを考える。
そんなほたるに気がつかず、団子づくりを再開させる辰伶に、こいつのせいだろうな、と思う。

「そういや、こいつを狙ってんのってオレだけじゃないんだった。」
「ん?なにか言ったか?」
「別にー。ねー辰伶。そんな月より酒なやつらの宴会なんか出る必要ないって。オレと2人で静かなところでゆっくり飲もうよ。」
「一応、誘われているしな。出ないわけにはいかないだろ?」
「いくって。いいじゃん、2人で過ごそうよ。」

オレは辰伶と2人がいい、と言うほたるに、器用に団子を丸めながら辰伶は肩をすくめる。

「でも、狂たちも俺たちに会えるの楽しみにしてくれているみたいだしな。」
「は?狂たちから辰伶のとこに連絡あったの?」
「まぁな。」
「……オレのところにはなかったけど?」
「おまえはよくふらふら旅に出るからじゃないか?手紙も出しようがないし。」
「最近、ずっと壬生にいんじゃん。」
「まぁそうだが。」

困ったように首をかしげる辰伶に、ほたるは気づかれないようにため息をつく。
絶対、“オレたちに”じゃなくて“辰伶に”会うのを楽しみにしてるんだろうな、と数人の顔を思い浮かべ、ほたるは考える。
どうすれば辰伶が月見の会に出ずにすむか。
黙り込んだほたるに、拗ねたのかと思った辰伶は、螢惑?と名前を呼ぶ。
後ろから抱きしめられているため、顔だけをほたるの方にむけて、首をかたむける。

「おまえは狂たちに会うの、楽しみじゃないか?」
「楽しみじゃないわけじゃないけど……」

少しふて腐れたように言ったほたるは、辰伶を抱きしめる手の力を少し強める。
それに、よかった、と返しながら、そういえば最近なにかと距離が近いよな、と辰伶はちらと考える。
兄弟ってこういうものかな、と思いながら辰伶は前を向き、団子づくりを再開する。
でもさ、とほたるはどんどん増えていく綺麗な形の団子を見ながら、小さく言う。

「久しぶりに狂たちに会うのもいいけど、今はそれよりおまえとの時間を大切にしたい。」

ぽつりと呟かれた言葉に、辰伶は驚いて手を止め、ほたるを見る。

「螢惑……?」
「オレ、辰伶のこと好きだし。」
「……俺も、おまえとの時間は大切にしたいと思ってるぞ?」

今まで兄弟として過ごす時間もなかったしな、と続けた辰伶に、まぁそうなんだけど、とほたるはあいまいに返す。
辰伶はそんなほたるを不思議そうに見返す。
近すぎて焦点は合わないが、ほたるが真剣な目をしていて、辰伶も自然と緊張する。

「螢惑……?」
「辰伶。オレ、辰伶のこと、そりゃ兄弟としても大切だけど。」

いったんそこで言葉を切って、ほたるは手の力を強める。

「それ以上に、一人の人間として好きなんだよ。」

少しだけ距離をつめて固まっている辰伶に口づけをすれば、辰伶は真っ赤になって目をしばたいた。

「……けい、こく……?」
「ねぇ、辰伶はどうなの?」
「俺は……」

考えるように目線を下に向けた辰伶の顔をじっと見る。
少しの時間が永遠に感じられて、らしくないな、とほたるは心の中で自嘲する。
しばらくして目線を上げた辰伶は、ほたるを見てふわりと笑った。

「俺も、おまえのことを好きだよ……ほたる。」
「……ありがとう、辰伶。」





おまけ


「ねーじゃあやっぱり今夜は2人で過ごそうよ、辰伶。」
「でも、出ないというわけにも、な。」
「じゃあ、ちょっとだけ顔出してすぐ抜ければいいじゃん。」
「うーん……」
「ねぇ、辰伶はオレと狂たち、どっちが大事?オレは辰伶の方が大事だから一緒にいたい。」
「!……わかった。じゃあ、少し顔を出して抜けるか。」
「ありがとう、辰伶。」
「……俺だって、ほたるの方が大事だ。」
「!?愛してる!辰伶!」
「……俺も。」











あとがき
リクエストありがとうございました!
リクは「ほたる→辰伶で猛アタック中で最後ラブA総受け風味」ということですが……大丈夫、ですか?
考えていたらこんなのが浮かんだのですが、本当は宴会まで書きたかったです。
那由の技量的にうまくもっていけなさそうだったのでやめたのですが。
那由としては、ほたるの猛アタックはクリアできているのではないかと思うのですが……
最後、ラブラブか、これ?ギリOK?
あと、総受け風味になってますか?風味があまりにも薄くて涙が出ます。
ちなみに、今年の十五夜が9月30日だったので、あわてて書きました。
変なところがあったらごめんなさい。
そして、なにかあったら気軽に言ってくださいね!
何度でも書き直しますので♪
ではでは、ここまで読んで下さってありがとうございました!

Thank you for 6th anniversary…












去年の五周年の時ならず、今回もこんな素敵なリクエストを頂けた事に、
もう感無量で、ニヤニヤ(笑)が止まりません!!

これからも応援しています!

六周年、おめでとうございます。


管理人・yasu












[*前へ][次へ#]

5/8ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!