夢を掴むために〜勇気と希望の決断〜 〈OP〉

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「Work For Love And Tear」のMaya様から220000HITの記念に頂いたワンピースのゾロ総受け小説です。










   夢を掴むために〜勇気と希望の決断〜





朝食後、ゾロがルフィに話があると切り出し、二人は倉庫に入った。

しかし5分後にはルフィは倉庫を飛び出してきて、いつもの特等席に腰掛けたまま、ただじっと海を見つめている。

いつもならすぐに腹減っただの、飯はまだか?などと叫んでいるルフィが、昼飯の時間になっても動こうとしない。

さすがに心配になったナミが声をかける。

「ルフィ、どうしたの?」

しかしルフィは顔を海に向けたままで、何も答えない。

「ゾロの話って何だったの?そんなにショックなこと、言われたの?」

気にせずに、それでも話しかけていると、ルフィが

「次の島に着くのはいつだ?」

と目を合わせることもなくつぶやいた。

「えっ?次の島?予定では3日後だけど。」

それを聞くとまた黙り込んでしまう。

結局、ルフィは昼食も取らず、ただ黙って海を見ていた。





そして夕食の前、甲板で寝ていたゾロに今度はルフィが話がある、と声をかけた。

そのまま二人で倉庫に入り、1時間以上出てこなかった。

そして夕食の前にルフィが一人で出てくると、そのままキッチンにやってきた。

「ルフィ、ようやく腹が減ったか?」

「サンジ、頼みがある。」

「何だ?」

「今日から、俺とゾロは倉庫で飯を食う。」

「はぁ?」

「朝も昼も、夜もだ。」

「どうしてだ?」

「船長命令だ。」

そう言い置いてルフィはキッチンから出て行った。

起きているルフィが食事を抜いたのは初めてのことだったので、サンジは驚いていたが、さらに追い討ちをかけるような訳のわからないセリフ。

ルフィとゾロの間に何があったのか、それは誰にもわからなかった。

でも船長命令だと言われれば、歯向かうことはできない。

その日から、ルフィとゾロは倉庫で二人きりで食事をするようになった。

それだけではない。

ゾロは一日のほとんどを倉庫の中で過ごすようになり、ルフィの命令で他の仲間は倉庫への立ち入りを禁止された。

仲間たちは何が起こっているのかを想像することしかできないまま、ただじっと耐えるしかなかった。





そしてナミの言ったとおり、あの日から3日後、島が見えてきた。

「島だぞ!」

うれしそうに叫んだチョッパーの声にみんなが甲板に出てきた。

それを待っていたかのように、ルフィが声をかけた。

「みんなに言うことがある。」

「どうしたの?」

いつもとは違い、ひどく険しい表情でルフィが話し始めたので、驚いたナミが声をかける。

あの日以来、ルフィはずっと様子がおかしかった。食欲の塊のようなルフィが、3度の食事以外は食べ物を口にせず、倉庫にいるか船首に腰掛けて、何かを考えこむようにして過ごしていたのだから。

「みんなに言うことがある。次の島で、ゾロは船を下りる。」

「えっ?」

予想外の言葉にみんな一斉にルフィを見る。

「ゾロとはここでお別れだ。」

「ルフィ、何言ってるんだよ。どうしてゾロが船を下りるんだ?」

「ゾロが下りるって言ったからだ。」

「でも、どうして急に?」

「俺も3日前に聞いた。」

あの日、ルフィを倉庫に呼び出したゾロは船を下りると言ったのだろう。

しかし肝心のゾロの姿は甲板にはない。

「ちゃんと説明しろ。どうしてゾロが船を下りるのか?」

「ルフィ、話してくれるんでしょう?」

「ゾロは、休みが必要なんだ。」

「はぁ?」

「ルフィ、あんた何言ってるの?」

「ゾロ、スリラーバークを出てからずっと調子悪かっただろ?だからここで一旦船を下りて、身体を治すって。」

「ちょっと待て。ルフィ、お前、何を言ってるかわかってるのか?」

「あぁ。俺だって信じられないよ。でも、ゾロは今、3刀流はおろか、刀1本でもその手につかむことができないくらい、弱っちまってるんだ。」

「嘘だ!!」

そう叫んでチョッパーが倉庫に駆け込む。そして眠っているゾロを無理やり起こした。

「ゾロ、ゾロ!嘘なんだろう?だって俺、聞いてないぞ。俺、医者だぞ。」

「チョッパー、悪かったな。」

気がつくと、周りにみんなが集まっていた。

「ゾロ、本当なの?」

「あぁ。」

「ゾロ・・・」

「前から決めてたんだ。この手で剣を握ることができなくなったら、いさぎよく船を下りるって。」

「船下りて、どうするつもりだ?」

「船を下りなくたって、チョッパーに診てもらえばいい。」

「もう決めたんだ。今までありがとうな。ようやく船長の許可も下りたことだし、俺は次の島で降りる。」

そう言うとゾロはそのまま目を閉じた。

みな、黙って倉庫から出て行った。





「ルフィ、どうして許可したの?」

「俺だって、嫌だって言った。でも、ゾロは駄目だって言うんだ。仲間との別れ一つちゃんとできない奴は、海賊王になんてなれないって。」

「いいじゃない、そんなの。私はいやよ。」

「俺だって嫌だ。ゾロと別れるなんて、できない。」

「ゾロさ、普通に振舞ってるけど、実際はかなり辛いんだよ。今じゃ一人で箸も持てないんだ。」

サンジはそこでようやく、二人が別の場所で食事をしたいと言った意味がわかった。

「どうしてすぐに言ってくれなかったんだ?」

「俺だって、すぐにゾロの下船を認めたわけじゃねぇんだ。でも、あんなに辛そうなゾロをこれ以上、船に縛り付けておくことはできない。そうだろう?」

ルフィの目に涙は浮かんでいなかった。おやつも食べず、じっと海を見つめながら、ずっとこのことについて考えていたのだろう。

そして出した答えに、ルフィはもう悩んではいなかった。

しかし、いきなり聞かされた仲間たちはやはり納得できない。

「せめて、チョッパーにちゃんと診察してもらってからでも。」

「もう、決めたことだ。」

「ルフィ・・・」

「ゾロの好きにさせてやりたい。」

「それでいいのか?それは本当にゾロの望んでいることなのか?」

「どういう意味だ、サンジ。」

「あいつは、一人で海に出て、やっと俺たちっていう仲間に出会えたんだぞ。そんな簡単に別れていいのかよ。

俺は、あいつが剣士だから一緒にいるんじゃねぇ。仲間だからだ。あいつを今、本当に一人にしていいのか?」

いつもはゾロと喧嘩ばかりしているサンジがルフィにつかみかかるようにして叫んだ。

「何があったって、一緒にいてやりてぇって思わねぇのか?船長。」

「俺だってそう思うよ。だから何度もそう言った。でもゾロはどうしても嫌だって。夢を叶えるために船に乗ったのはみんな同じだから、少しでも早くみんなが夢を叶えられることが自分の今の夢だって。だからその足かせになるようなことだけはしたくない。もし下船を許可しなかったら、自分で海に飛び込むって言うんだ・・・」

そう言ってルフィはそれまで何とかこらえていた涙を零した。

ルフィはゾロの気持ちを聞かされて、それから何とかゾロを説得しようとしてきたのだ。

でも何をもってしてもゾロの気持ちを変えることはできなかったのだ。

「俺にはもう、何も言えない。ただ、ゾロの言うとおりにしてやることしか、できねぇんだ。」

そう言われると、もう誰も何も言えなかった。そうしているうちに、船はもう島まで来ていた。







船を着岸させると、チョッパーが寝ていたゾロを起こした。

「ゾロ、起きろ。島だ。」

「あぁ。起こしてくれてありがとな。」

「ゾロ、あのな、俺、俺・・・」

「お前が頼りないなんて思ったことは一度もねぇよ。チョッパー、お前は俺が知ってる中で一番の名医だ。」

チョッパーが何も言わなくても、ゾロはきちんと欲しい言葉をくれた。

それでも、だったらとチョッパーは重ねて聞く。

「どうして俺に言ってくれなかったんだよ。船を降りるって決める前に、どうして俺に言ってくれなかったんだよ。」

「お前はどんな病気も治せる医者になるんだろ?そのためには、たくさんの本を読んで、色々な人に出会い、もっともっと勉強しなきゃだめだ。ここで立ち止まってちゃだめだ。」

「でも、俺は、ゾロの身体も治したい。」

「じゃあ、これからも旅を続けていかなきゃだめだ。俺は、俺のせいで誰かが立ち止まるのは、耐えられない。そんなんじゃ、死んでも死にきれねぇ。」

「死ぬなんて、言うな。」

「あぁ、そうだな。じゃあ今、ここで予約入れとくか。世界一の名医の診察を受けるの、楽しみにしてる。」

そう言われてしまえば、チョッパーはこれ以上何も言えなかった。







ゾロは、あらかじめまとめてあった荷物を手に、ゆっくりとした足取りで船を降りた。

「みんな、元気でな。」

そう言ったゾロに、仲間たちが次々と言葉をかける。

「ゾロ、待ってるから。」

そう言ったのは、ナミだった。

「どこかで、世界一の剣豪を目指す、緑の頭の男の噂を聞いたら、世界一の航海士が必ずそこに迎えに行くから。」



「酒ばっかり飲むんじゃねぇぞ。」

そう言いながら、サンジはできるだけの食料をゾロに持たせていた。



「俺、俺、必ず見つけるから。どんな病気も治せる薬、ちゃんと見つけるから。」

涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、チョッパーが叫んだ。

他のメンバーも、涙を止められずにいた。





そして最後にルフィが叫んだ。

「ゾロ、約束だ。必ず、必ず俺の横に戻って来い!いいな!」

ゾロは、それにしっかりと頷いてから、船から離れた。











それから2年後。

シャボンティ諸島に集結したサニー号の仲間たちの中に、ゾロの姿があった。

「おかえり。」

「おう。」

すっかりと身体を治し、さらに強さに磨きをかけた男が、そこにいた。







 END





 



ということで、リクエスト内容は「海賊設定、ゾロ総受けでゾロが下船するお話」でした。

ゾロが下船するのってどんなときかなぁと考えた結果、きっとゾロなら自分の存在が仲間の足かせになるようなことがあれば、迷わず船を降りる道を選ぶのではないかなぁと思いました。ただハッピーエンドがモットーのサイト故、あの2年間を活用させていただくという結末に落ち着きました。

リクエストしていただいたyasuさん、素敵なリクエストありがとうございました。

   

       



前からこんな話が読みたいなぁって思ってたんです!!

それをこんな素敵な小説にして頂けるなんて夢のようで、踊り出しそうです!!


本当にありがとうございました
これからも応援しています!







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あきゅろす。
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