お迎えとお邪魔虫 〈他〉

S.D.KYOのほた辰中心辰伶総受け素敵サイト
「虹のビー玉 七色の願い」の那由様から五周年記念に頂いた素敵小説です。











仕事が一段落した辰伶は、手をずらした拍子に机から落ちた一枚の紙に目をやる。
少しの間、思案してから、手紙を丁寧にたたんで机の上に置くと、肩をほぐして立ち上がった。
部屋から出て空を見上れば綺麗な秋晴れで、いい天気だな、と呟けば、
そうね、と思いがけず返事があり、辰伶は驚いて振り向いた。

「灯、か。」

ぱちぱちと目をしばたいた辰伶に、あらお疲れ?と灯は笑う。

「私が来たのに全く気がつかないなんてねー。」

治療してあげましょうか?と少し心配そうに聞いた灯に、
いやそういうわけではないんだ、と辰伶は困ったように笑う。

「少し、考え事をしていてな。」
「そう?」

ならいいけど、と言った灯は、ふと辰伶の机の上を見て、あぁ、と小さく呟いた。

「疲れてるんじゃなくて、ただ上の空だっただけってわけね。」

納得したように笑った灯に首をかしげていれば、
灯はニコッと笑って、邪魔しちゃったわね、と言った。

「出かけるところだったんでしょ?」
「え?あ、あぁ。」
「じゃあねーいってらっしゃい。何かあったら私に言ってねー。」

辰伶がキスしてくれたらどんな怪我でもこの灯ちゃんが治してあげるから♪、
と笑って手を振った灯に、ありがとう、と辰伶も笑って、灯と反対側に歩きだした。
と、いくばくも行かないうちに、あれどこか行くの?と声をかけられた。

「せっかく辰伶さんに会いに来たのに。」
「……真田幸村、と猿飛か。」

声のしたほうに振り返って、ひらひらと手を振りながら近づいてきた幸村と、
その後についてきたサスケの姿を認めた辰伶は立ち止まる。

「何か用か?」
「なんで辰伶さんは、他人行儀にフルネームで呼ぶかなぁ?幸村って呼んでよv」

サスケだって名前で呼んで欲しいよねー、と後ろを向いて同意を求めた幸村に、
サスケはすっと目をそらして肩をすくめる。

「……別に。」
「サスケって、素直じゃないよね?」

楽しそうに笑った幸村に、サスケは少し不機嫌そうな表情になる。
そんな2人に首をかしげながら、結局なんの用だ?と再び辰伶が聞けば、
えー言ったでしょ、と辰伶のほうに向き直った幸村は大袈裟に口をとがらせてみせる。

「辰伶さんに会いに来たってv」
「……何か用があるわけじゃないのか?」
「用がなくても会いに来たっていいじゃないv」
「まぁ、否定はしないが……?」

怪訝そうな顔をした辰伶に、辰伶さんって鈍感だよねー、と幸村は楽しそうにけらけら笑った。

「まぁ、それも長所だけどね。」
「……?用がないならもう行くが……」

ちらっと太陽の位置を確認した辰伶に、
つれないなぁ、と幸村は笑って、まぁしかたないよね、と言った。

「じゃあ、用事は辰伶さんに名前を呼んでもらいに来たってことで。」
「なんだそれ?」
「まぁ、いいじゃない。減るもんじゃないし。」
「……幸村?」

怪訝そうな表情を崩さないまま言った辰伶に、
幸村は満足そうに笑って、またねー辰伶さん、とひらひらと手を振った。

「ほたるさんによろしくねー」
「!?……あ、あぁ。さる……サスケも、また、な。」
「!……じゃあ、また。」

結局なにしにきたんだろうな、と考えながら、辰伶が少し足を早めれば、
んなに急いでどこ行くんだ?と声がかかる。

「?……あ、遊庵様。」
「よぉ、辰伶。」

ひょいっと壁を乗り越えて表れた遊庵に、ちゃんと廊下を歩いて下さいよ、
と辰伶が少し呆れたように笑えば、遊庵はちょっと首をすくめてみせる。

「壁越しにおまえの気配を感じたもんでな。」
「何かご用ですか?」
「いや?」

ただ最近顔見てねぇなと思って、と言って遊庵はニヤっと笑う。
それに対し、2日ほど前に会ったよな……?と考えて、
辰伶は少し首をかしげながら、そうですか、と返事をした。

「ほんと、おまえって鈍感だよな。」
「そうですか……?」

きょとんとした辰伶の肩に手を回して、遊庵は楽しそうに笑う。

「で、どこ行くんだ?」
「え、あぁ、螢惑を……」
「あぁ、あいつ、今日帰ってくんのか。」

辰伶の言葉に、納得したように頷いた遊庵は、
よくあいつが帰ってくるって知ってたな、と言った。

「あのバカ弟子、ふらっとどっか行ったと思ったら、ふらっと帰ってきてたりすんだよな。」
「あぁ、文が来たんですよ。」
「文だぁ?俺にゃ書いたことねぇくせに。」
「まぁ、たまにですけどね。」

ふと思い出したように来ますよ、と辰伶は笑う。

「まぁ、あいつのことですから、ちゃんと今日帰ってくるかわかりませんけど。」

どこかで迷っているかもしれませんし、と辰伶は苦笑して肩をすくめれば、たしかになぁ、と遊庵も笑う。

「あいつ、極度の方向音痴だったな。」

遊庵が呆れたように、ほんと何年ここに住んでんだよ、と言いかけた時、
ふわっと遊庵のまわりにだけ炎が舞った。

「おっと、危ねぇな。」

そう言いながらも危なげなくそれを避けて、
遊庵はちゃっかり自分と辰伶の間に入ったほたるを見る。

「ったく、久しぶりだってのに、ご挨拶だな、螢惑。」
「ゆんゆんが悪いんでしょ。」
「いや、壬生を開けてたおまえが悪いだろ。」

しれっと返した遊庵に、ほたるは不機嫌そうに目をやる。
そんな2人の会話に首をかしげつつも、いきなり攻撃はないんじゃないか?、
と辰伶は少し呆れたようにほたるをとがめる。

「おまえは礼儀が無さ過ぎる。」
「別にゆんゆんだし。」
「なんだ、それは。」
「だいたい辰伶もさ、もう少し警戒心持っても罰はあたんないと思うよ?」
「急になんの話だ?」

くるりと辰伶に向き直ってそう言ったほたるに、辰伶はきょとんと首をかしげる。
それに遊庵が大爆笑し、おまえも大変だなぁ、とほたるの肩を叩いた。

「ま、せいぜいがんばれよ。」

俺が言えた義理でもねぇけど、と楽しそうカラカラ笑った遊庵は、
じゃ俺は帰るわ、と踵を返す。

「またな、辰伶。」
「はい、また。」
「もう来なくていいし。」

2人の返事を背中に受けて、遊庵は笑って片手を上げた。
その姿を見送った後、すっとほたるに目を移した辰伶は、
で、と言って少し困ったような顔をする。

「おまえはなんでさっきから機嫌が悪いんだ?」
「……別に。」
「そうか?」

怪訝そうな顔で首をかしげた辰伶に、ほたるはため息をついて、まぁいいや、と言った。

「おまえの部屋いこっか。」
「ん?そうだな。」

歩きだしたほたるを追いかける形で歩き出した辰伶は、それにしても、と少し笑った。

「よく迷わず帰れたな?」

もっと遅くなるかと思った、と言った辰伶に、ほたるはちょっと眉を上げて、
なんかおちおち迷ってもいられない雰囲気だしね、と答えた。

「?」
「それに、迷ってると、おまえが待ちぼうけくうし。」
「もう何度もくったけどな。」

思い出して、クスクス笑った辰伶に、
でもおまえは律儀に待ってるよね、とほたるはニヤと口角を上げた。
愛されてるよね、と言ったほたるをちらっと見て、辰伶はちょっと肩をすくめる。

「まぁ、文をもらった時くらいは、な。」

それに、と辰伶は続けて、ほたるを見て意趣返しというようにニヤっと笑ってみせる。

「迎えに行かなきゃ淋しいだろ?」
「まぁ、ね。」
「やけに素直だな?」
「そう?」

しれっと返されて、辰伶は拍子抜けしたように息をはくと、まぁとにかく、と言った。

「おかえり、螢惑。」

元気そうで何よりだ、と言ってふわっと笑った辰伶に、おまえもね、と螢惑も笑った。

「ただいま、辰伶。」


お迎えとお邪魔虫


「そういえば、ゆんゆん、よく来るの?」
「遊庵様?あぁ、よく会うな。」
「……。今日、他に誰かと会った?」
「会ったぞ?灯と、幸村とサスケだな。」
「灯ちゃんはいいとして……なんで、名前呼び?」
「ん?頼まれたからな。」
「……。おまえ、ほんとびっくりするほど鈍いよね。警戒心とかないわけ?」
「だから、なんの話だ。」
「……。オレ、しばらく壬生にいることにする。」











あとがき
リクエストありがとうございました!
リクは、「辰伶総受けほた落ち」でした。
ご要望に添えているでしょうか……?
私的に、灯・幸村・ゆんゆんは書きやすい3人です。
サスケくんは好きだけど、なかなか絡ませずらい;;文才欲しいです。
1回書いたら失敗して、なぜか狂で落ちたので、今回は、最初っからほたを意識して書きました。
コンセプトは、鈍感でわかりやすい兄ちゃんです。

この小説は、yasu様のみフリーとなります。
煮るなり焼くなりお好きにどうぞ!

ここまで読んでくださってありがとうございました♪

Thank you for the 5th anniversary.





こんな素敵な小説をありがとうございました。
今度の6周年にも及ばせながらリクエストさして頂きました。

素敵過ぎて鼻血が出るかと思いましたvv

これからも応援しています!!
身体に気をつけながら頑張ってくださいvv



管理人・yasu



[*前へ][次へ#]

2/8ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!