ある嵐の一コマ( NZ+S )



昨日は、夜になって急に天候が変わり、波は荒れ、雨が否応なく降り注いだ。


まぁつまる所、嵐がやってきた訳なんだが、
この船にいる航海士のおかげで、無事メリー号は嵐を乗り切る事が出来た。






だが、あそこまで吹き荒らす嵐は久しぶりだった。

吹きすさぶ雨嵐の中での過酷な労働。
乗り切れたおかげで緊張の糸が解けた少年組みは
食糧荒らしという夜だけの副業は休業にして既にハンモックで熟睡中だ。

ナミとロビンも今日は疲れたのだろう
いつもより早くに自室へと向かっていた。




因みに今日の船番は俺で、
濡れてしまった服を着替える為とさっぱりしたいのもあって、一度風呂に入る事にした。









〜ある嵐の一コマ〜










「フゥ〜〜」






湯船に浸かり、俺は今日の疲れを取り除く


しかし今日は別格に風呂が気持ちいい


俺は心身共に温まるのを感じながら、
身体に襲う心地よい怠さに身を任せる事にした。















「い〜い?ゾロ。絶対気を許したらダメだからね!」

「あ?バカな事言ってんじゃねェよ」

「ん、ふぅ・・ァ・・んっ・・・」

「んな可愛い顔すんなよ・・・」

「フフッ態とに決まってるでしょ」

「へぇ〜。珍し・・んっ、」

「・・チュッ・・フフッその気になった?」

「・・・言わせんのかよ///」

「フフッ♪」












「んあ・・・・」



どうやら自分は少しの間眠ってしまったようだ




何故今、少し前のひと時の事が夢に出てくるんだ、と思いながら自分の手を見ると、
シワシワで思ったよりも長い時間浸かっていた事に気が付く。


これ以上入っていたら、
「見張りの意味がないじゃない!」とさっきまで夢の中に出てきた小悪魔的な笑みとは違う
目を吊り上げてこちらを上目使いで睨んでくる顔が脳裏にチラついてくる事だろう



それにこのままいたら、この居心地のよさに、もう一眠りしてしまいそうだ


でも俺の恋人は風呂で寝る事を嫌っているのだ・・・



依然寝こけて、怒られたのはまだ最近の事



まぁその後に、

「私と一緒じゃなかったらダメよ。分かった?」

なんて珍しく可愛らしい上目使いでの攻撃で来たのにはビックリしたがな









「ん?」



風呂から上がった所で、俺は外に誰かいる事に気が付いた。

向こうは隠しているつもりなのだろうが、少し気配が乱れてるのを感じる。
けど一体誰がいるのかまでは分からない。



「おい、誰だ」



返事はない、か

まぁそりゃ、ばれてないとでも思ってたんだから
きっと今扉の外では慌てふためいている事だろう。


ふむ、とそう思ったゾロだったが、
その考えは、やましい事を考えている者がする行動という事に
果たしてゾロは気が付いているのだろうか・・・





ゾロはもう一度声をかけようとして開いた口を閉じ、腰にタオルを巻いて、扉を開けた。


もし、この場にナミがいたら、
「そんな恰好で出てくるな!」と怒りの鉄拳を下した事だろう・・・・





「ぅわ!」

「・・・・何やってんだ?」

「・・・・えへ」


可愛いとでも思っているのだろうか

だったら、非常に思い上がりもいい事だと言ってやる。



目の前でしりもちをついてる奴は、気持ち悪い声を出して、更に小首まで傾げて俺を見ている。


せっかく風呂に入って心身ともに癒されたというのに
目の前の奴のおかげで、台無しになってしまった。


未だ気持ち悪く小首を傾げて、しかも上目使いのつもりか?
俺を見上げてくる瞳に、鳥肌は全開だ。




( 何だかこいつ・・・最近、益々気持ち悪さに磨きがかかってねェか?)


何とも失礼な事を思いつつ、目の前の光景から目を逸らすゾロ


だが、そのゾロの思いも、実は当たっている事に気が付くのは何時になるのだろうか。

嫌、相手の視線の気持ち悪さに気が付いただけでも成長した、と
ゾロの恋人は喜ぶかもしれないが・・・・・





「俺はもう出るから」


便所か、風呂か

どちらにせよ自分はもう此処にはようはないと、伝えたつもりだが、
さっきからサンジは動こうとしない



むしろ何処か血走っているような目でこちらを見ている気がする・・・・・



目が赤いのは気のせいか?



「おい?大丈夫か」


一向に動こうとしない奴に、流石に心配になった俺は、
一応言葉をかけるが、やっぱりというか何の反応もない



「おい?サンジ?」



未だに首を傾げて上目使い

その上何だか目が異様に怖い・・・


俺はその視線の居た堪れなさもあり、無意識にコックの名を呼んでいる事にも気が付かない。




ブハァ!


ドダダダダアアァァ・・・・








「あ?」











俺は呆気にとられたまま、少しの間そこで伝っていた。



腰にタオルを巻いただけの何とも間抜けな格好で・・・・


















*  *  *





「ーーーだぜ?変な奴だよなあいつ」

「・・・・・」

「ナミ?」


話をしている最中からどんどん顔を俯かせていく恋人に気が付く事なく、話を続けていたゾロ。



ゾロがナミとベッドの中で甘いひと時を過ごし


甘い言葉と蕩けるようなキスを時折交えながら


ポツポツと話し出したナミの話にゾロは相槌を打つだけ


でもそれは、決して聞いてない訳ではなく、時折あぁだの、へぇーだのと言葉も交えてくれる


その時の自分がどんな顔をしているかゾロは知っているだろうか





自分から見てもとてもカッコよくて、甘い顔をしている事を・・・・・




その甘い顔を見るだけで、一日の疲れなんか吹っ飛んでしまう事を・・・・・







今日も、その蕩けるような甘く、見惚れるカッコよさで自分を見るゾロに酔いしれながら

ゾロの腕枕で事後の甘いひと時を過ごし、このまま甘く甘美な眠りの世界へと二人で飛び込むつもりでいたナミだったが、


珍しくゾロが「そういえば・・・」っと言い始めた事で、甘いひと時は終わりを告げた。









「ーーーで、鼻血を出しながら出てったんだぜ?変な奴だよなあいつ」



話終えた所でふと、そういえば何も反応がない恋人を不思議に思い目を向けて、
漸くナミの様子が可笑しい事に気が付いた。




顔を俯かせて、自分の胸におかれていたナミの手がプルプルと震えている


こんなナミはヤバイ――とギクリとしたが、それももう後の祭りである。






「ナ、ナミ?」


少し困惑したゾロの声に、顔をあげたナミの顔は、

もはや先程まで、甘美なひと時を過ごしていた蕩けるような愛らしい顔ではなくなり


誰もが逃げ出す般若のような鬼の顔をしていた・・・・




「あんたっ・・・・」

「・・・・・」


その迫力に、思わず唾を飲み込んだゾロ

そして、雷は落ちた。









「あれ程言ったでしょうが!!!サンジ君には気を許しちゃダメだって!!」

「い、いや・・許したっていうのか?・・・それにあいつは仲間だろ?」


あまりの迫力にしり込みしながらも、答えるゾロ

それがまるでサンジを庇っているように、ナミには聞こえ、
益々怒りのボルテージを上げさしている事に気づいていない・・・・




「仲間だったら襲われてもいいっていうの!?」

「いや・・・襲われるってお前・・・」


そうだ。

ナミはこうして、嫌に考えすぎな所があるのだ。


男同士で、しかも大の女好き相手に何をいってるんだか・・・と常々ゾロは思うのだが、

それを口にした日には、ナミは怒りを越して拗ねてしまうのだ、これが



「良い事!?絶対男の前では無防備になったらダメよ!勿論外でも、よ!」


「わ、分かったよ・・・」



ってか、なんで男の前なんだ?と疑問に思うが、それを口にだせる雰囲気は皆無であった。




「後ルフィと、特にサンジ君の前では絶対ダメだからねっ!!約束して頂戴!!」


何だか理不尽な気もするが、
こうなってしまっては、素直に従っておく方が安全だとゾロは知っているので


怒りながらも、可愛らしく小指を向けてくる恋人に自分の指を絡めた



まだ少し怒りが収まっていないようだが、
素直に約束を受け入れたゾロに気をよくしたのか、その晩はナミと共に眠る事が出来たゾロだった。




ナミから言わせれば、

何であの男のせいで、私達が別々で寝なくちゃならないのよ!


と憤慨してしまうだろう事にゾロはきっと永遠に気が付く事はないだろう・・・・・







そして、ナミと共に深い眠りに落ちていったゾロは知らない・・・・














翌日・・・


ナミが人気のない場所に呼び出したサンジを




鬼の形相で、詰め寄り、




「で、でもナミさん!俺だって、ゾロを幸せにしてあげる自信が・・・」



言い返しただけでなく、不当な事まで言い出したサンジにぶち切れたナミが


サンジが最後まで言う事すら許さず



ゾロの入浴シ〜ンと寝顔、
そして、あまつさえ上から下まで目に焼き付けたゾロの入浴後の半裸姿をサンジの脳裏から抹消する為に




渾身の雷という名の制裁が、





「これ以上したらサンジが死んじゃうよぉ〜〜〜」と言って突然泣きながら入って来たチョッパーと

それに続き、
あまりの残酷な所業に見兼ねたウソップが、真っ青な顔で入って来るまで続けられた事を・・・・・・・













END.





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これでもナミゾロと言い張りたいです(;><)



ゾロは皆に愛されてますが、サンジとルフィからは常に狙われてます。


それを只の仲間の好意としか受け取ってないゾロを愛しいと思いながら野獣二人から守るのに大変です。





今回は、そんな自分の隙を狙ってゾロの入浴シ〜ンを覗き見するだけでなく
寝ているゾロにこれ幸いと、中に入って寝顔を堪能したサンジ


ゾロはまさか、中に入られたとは夢にも思ってません(笑)







もう既にナミと野獣共との攻防戦は日常の一コマになっているので、
ウソップもチョッパーも割り込むタイミングは抜群なのです(*^^*)









[2013/5/22]


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あきゅろす。
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