募る想い【匿名様】



〜 募る想い 〜





「956!957!958!」


ブンッブンッっと、空を割く音がラウンジの中にまで聞こえてくる。



もう直ぐオヤツの時間だってのに・・・・
確か素振りの前は剣の手入れだったっけか


本当、筋トレ依存症なアイツはどうしようもねぇ〜な


呆れながらそう呟いているのはラウンジルームにいるサンジだった。


思っている事とは裏腹に、浮かべている表情のなんと優しい事か
呆れているというよりもニヤニヤしてるという方が近いだろう。



そんなサンジの、だらしなく下がっている目尻を冷めた横目で見やっていた
実は同じ空間で一足先にオヤツを堪能していたナミは

「ごちそうさま」と言い立ち上がると、ルームから出て行ってしまった。


何時もなら目をハートにさせてこちらに向かってくるのに
ラブコックと自称している癖に

どうやら丸窓の外に映る姿に、視線も意識も持っていかれているようだ。



「な〜にが、ラブコック、よ」



ナミはぼそりと呟きながら、あるものを取りに自室に向かっていった。











*  *  *


「999!1000!!」

目標回数を達したゾロは、フゥ〜と言いながら錘を床に置いた。


次の島が近いのか、
昨日よりも気候が暖かい

お陰で何時もより汗が良く出るな、と眩しい太陽を眺めながら思った。




「ゾロ」

「あ?・・・っと、ありがとな」

自分の名を呼ぶ聞き慣れた声に振り向けば、
此方に向かって飛んできたものを咄嗟の反射神経で受け取った。

受け取った物を見るとそれは、水の入ったペットボトルだった。


柔らかい、自惚れじゃなかったら自分の前だけで見せる
蕩けるような笑みを浮かべながら近づいてきたナミは、先程取りに行ったタオルをゾロに渡した。


ゾロはもう一度お礼を言ってそれを受け取ると
汗を拭き取り始めた。







実はナミとは所謂恋人同士という関係なのだが、そうなってからは、
何時もこうして鍛錬が終わると、ナミがタオルと水を持ってきてくれるのだ。




そういえば、今までは何故かよく分からないが、
それはサンジがしてくれていたな、とふと思い出した。



黙った俺に、ナミがどうしたのって聞いてきたので、素直にその事を話した。



「・・・・・」

「おい、何だよそのふくれっ面は・・・」


いたく分かりやすい反応に思わず呆れてしまうが
その反面、そんな可愛らしい反応をするナミを可愛く思った。


俺はフって笑ってナミの頭を撫でた。

普段大人びてる癖に、
ナミは手を跳ねのける事もなく、寧ろ嬉しそうに身を委ねてくる。

何時もなら俺が止めるまでされるがままなのだが
どうやら今日は違うようだ・・・・・







ナミが急に俺が首から下げていたタオルをとった。


「今日は一杯汗かいてるわね」


ナミは苦笑しながら、首筋に流れている汗を拭き取ってくれた。


「あ?・・・おぅ、ありがとよ」


何時にないナミの行動を、
俺は不思議に思いながら礼を言えば

ナミはさっきと同じようにタオルを首にかけたかと思ったら、グイッと引っ張ってきた。










チュッ











「なっ///お前いきなりっ・・・・」



それは軽く口を合わせるだけのキス

だが思ってもみないナミの可愛い行動に、ゾロは真っ赤になって口を押えた。



珍しく顔を赤くして照れているゾロに、
ナミは満足しながらチラリと視線をラウンジの方に向ける。









角度からしても、ばっちりとラウンジの窓から見えただろう。





ゾロの唇を奪った瞬間、私でも容易に感じた身の毛もよだつほどの殺気

直ぐに引っ込まれたが、それが誰からのものかなんて愚問だ。




お返しとばかりに、ギッと睨んでやったのだが、
あいにくと、太陽の光に反射して、窓の中の様子は分からない。


でも、多分伝わったと思う。




ゾロは私のものだって・・・・・












*  *  *




「・・・・クソッ!」


ガンッっと壊れそうな音がラウンジ内に響いた。

叩きつけられた壁は、へこんではいないようなので手加減はしていたのだろうが、
それでもこの場にこの船を溺愛しているウソップがいたら、悲鳴をあげながらサンジを責めるだろう。





ズキズキと、戦闘では使う事のない手が痛むのを何処か他人事のように思う


だって、手の痛みよりも、もっと痛いから ――――・・・・












分かってた・・・・


あいつがナミさんと付き合ってる事位




それでも惹かれていく自分を止める事なんて出来なかった。
気が付いた時にはもう、手遅れで

あいつはナミさんのものだからって必死に自分を戒めても、
目があいつを追いかけていった・・・・









気持ちに気が付いたのは遅かったけど、
あいつの生き様を見せつけられたあの時から、あいつに惚れていたのだと思う。


周りには滅法鋭い癖に、自分に向けられる感情は、殺気を覗いて全然鈍い


そんなあいつだから好きになった。
けど、今ではそれが苦しいんだ・・・・






俺の気持ちも知らず、
風呂上りに無防備に上半身をさらけ出して誘惑してきたり


可愛い寝顔をみせたり


最近じゃ、俺の前でも柔らかい笑みを見せてくれる









伝えたいけど、伝えられない



口にした所で結果は目に見えてる
だったらこのまま仲間としての関係だけでも守りたい



でもあいつが欲しい気持ちを止められない・・・・・





最近じゃこの相反する気持ちを持て余して、爆発しそうだ。




さっきだって、ナミさんに、女の人に殺気を向けてしまった・・・・・




ナミさんがこの部屋から出ていっても、ずっと丸窓からゾロを見ていた。

勿論ナミさんが出ていったのにも気が付いていたけど、今はゾロを見ていたかった。


だが、此処から見えた光景に俺は後悔してしまった。


ナミさんが、俺の役目だった、
タオルと水をゾロに渡したのだ・・・・




正直すごく嫌だった。


俺の役目だったのに・・・・


強くそう思った瞬間、目に飛び込んできた光景






ナミさんとゾロの・・・キス











飛び込んで行きたかった。



引きはがして
ゾロを引っ張って、人気のない格納庫に連れ込んで


口付けて、舌をからめ合わせて貪って


そして最後は唇を合わせるだけのバードキスを送って、伝えるんだ。


好きだ、って・・・・・

俺の方がお前を幸せにできるって・・・・・













「好きだ。ゾロ・・・・・」


お前をこの手で抱きしめられたら、どんなに幸せか・・・・






切ない呟きは誰にも聞かれる事なく


空気に溶け込んで消えていった・・・・・・









END.


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匿名様からのリクエスト


「ナミ×ゾロに嫉妬するサンジ」





管理人にはこれが精一杯でしたι




最初は拍手文シリーズ物で考えていましたが、
全く構想できなかったので、設定なしで書かせてもらいました。


リクエストを貰って二か月も待たせてしまって申し訳ないです(><)






リクエストありがとうございましたヽ(*´∀`)ノ キャッホーイ!!









[2013/6/13]


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あきゅろす。
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