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心地よい日差しと温もりにうつらうつらと目が覚めた
ベットが一つしかない上にソファもなかったから、
しょうがなしに、一緒のベットで寝る事にしたのだが
今隣にはその原因となった人物の姿はなかった。
俺はのそのそと起き上がり、顔を洗って服を着て支度を終える。
予定していた鍛冶屋に行こうと決め、
部屋を出ようとした時、目の端でキラッと何かが光った気がした。
何となしに近づくと、その正体はサンジがいつも使っているライターと煙草だった。
手の上にその乗っているそれを見て、
俺は、以前サンジが言っていた事を思い出した・・・・
『これは、ジジィが俺が厨房に入る事を認めた時にくれたものなんだぜ』
そう言って、
嬉しそうに、懐かしそうに眼を細めるサンジの顔は、今でもはっきりと覚えていた。
( んな大事なもんを、忘れるんじゃねェっての・・・)
忘れてしまう程の衝撃を与えたのは、自分であるという事に、全く気がついていないゾロ
ゾロは頭をがしがしとかくと、それを腹巻の中に入れて、部屋から出て行った。
「終わったぜ」
「良い出来栄えだ」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってる」
「幾らだ?」
「金ならいらねぇ。滅多にお目にかかれない上等モンを一気に三本も見れたんだ。
逆にこっちが礼をいいたい位だぜ」
だから金はいらねぇ―――という鍛冶屋の主人の好意にゾロは素直に礼を言って、店を出た。
思っていたよりも、時間がかかっていたみたいで、外はもうオレンジ色に染まっていた。
出港は明日だと、ナミは言っていた。
それまでどうするかと考えたが、
その前にそろそろ飯の時間だと思いたち、指定されている場所に向かう事にした。
実はまだ飯の時間まで一時間位あるのだが、極度の方向音痴のゾロには丁度いい位だ。
賢明な判断ともいえるだろう・・・・
そして偶然と偶然が重なり、奇跡にもゾロは約束の時間前に店の近くまで辿り着く事が出来た。
何ていう店だったのか、思い出しながら歩いていると、
少し離れた場所で、何故かそこだけ異様に空気が違うものが目に入った。
( 何だ?)
近づくと、その正体が
今回に限って面倒ばかりかけてくるコックだと気が付いた。
正直相手がコックであるというだけで近づきたくなかったが、
奴が大事にしているものを持ってるので、さっさと渡してしまう事にしようと声をかける事にした。
しかし、間近で呼んでいるにも関わらず、サンジは気が付いていないみたいで、
振り向きもせず、フラフラと何処か覚束ない足取りで前に進んでいた。
俺は、ムッとしてそいつの頭を殴った。
本当は今までの腹いせに本気で殴りたかったのだが、
そうするには何故か気が引けるサンジの異様な重苦しい空気に、しょうがなく止めてやった。
( それにしても・・・・・)
サンジは何だかばつの悪い顔といったらいいのか?
とにかく
眉毛だけじゃなくて、頭の中までグルグルしてんのかっていいたくなる顔をしていた。
体調でも悪いのか?っと思ったがどうやらそうでもないらしい
こちらをぼおっと見ているサンジは、正直気色悪いと内心で思っていると、
サンジが俺の顔を見ながら、ぼそっと何か呟いたような気がした。
聞き返そうと思ったのだが、面倒なので
気のせいだという事にした。
まぁでも
さっきまでの焦心しきった顔から、何時ものふてぶてしい顔に戻ったのを見て俺は安心した。
何だかさっきよりも顔が赤くなっているような気がするが、まぁ夕日のせいだろう・・・
俺はさっさと用を終わらせるに越した事はないと、
こいつの所謂愛用品を渡した。
俺は自分にとって大切で手放すなんて考えも出来ない、
クイナの形見であり、俺の野望を語ると言っていいこの刀
もし、これが自分の知らない間にどうかなっていたらと考えたら、いや・・・考えたくもない
だから、こいつもきっと尊敬していた祖父から貰ったものが
急になくなったから焦っていたのだろう・・・・・・
じゃなかったらあんなに素直にお礼を言うなんてありえないだろ
サンジの変な態度を、全てそれのせいだろうと決めたゾロ
何とも単純な判断だが、鈍感を固有名詞とするゾロらしいとも言えるだろう
「もうすぐで、ご飯の時間だな・・・・」
「んあ・・そうだな」
何だか、さっきとは打って変わって上機嫌になっているサンジ
益々今日のあいつは可笑しいとゾロは不振がったが、
全くお構いなしのサンジは、目的の場所に正反対に向かおうとしているゾロの腕を掴んだ。
「そっち逆だぜ?」
「・・・・チッ///」
舌打ちするが、ソッポ向いた顔が少し赤いのは、夕日のせいだけではないだろう
勿論サンジにはそんな事お見通しで、
可愛らしいゾロを見れた事に益々気分は上がっていく。
「お、おい?クソコック!?」
こいつ・・・とうとう頭が湧いちまったのか!?
何とサンジは、ゾロの手を離さないとばかりに
ギュッと握ってきたのだ。
ある意味恐怖すぎるサンジの行動に、ゾロは反射的に手を振りほどこうとしたのだが
サンジの手はびくともしない所か、益々離さないとばかりに力を込めてきた。
女とではなく男同士、しかも二人とも成長した大きい男同志だ。
恥ずかしいなんてものじゃなかった。
それをサンジはなんでそんな上機嫌でする事が出来るんだ!!
(お前!見てるぞ!大好きな女達が!!)
心の中の叫びは、口にするまで至らなかった。
それは単に恥ずかしかったからなのだが、
サンジはそんなゾロに気が付いてるのかいないのか、はたまた自分をからかっているだけなのか・・・
いや、からかうだけで、こんな自分の士道に反する事はしない筈だ。
ゾロは何時になくおかしいサンジに混乱した。
混乱して・・・・・・
未だサンジに手を引かれて街道を歩いている事実から
目を背ける事にした。
きっと今のサンジに何を言ったって聞かないだろう事は、今ままでの航海で経験済みだ。
しかもサンジは見かけによらず、腕力が半端ないのだ。
そりゃ毎日毎日、あの大食い魔人の飯を作ってるのだ。
しかも皆の分まで・・・・・
そりゃ、ちょっとやそっとの腕の力ではあの大きい調理道具は扱えないだろう・・・・
実は少し前に、こいつと腕相撲して
一瞬で負けちまったのだ。
あの時は唖然とし、信じられなかったが、よくよく考えればそれも納得ができた。
だから、こいつに負けないようにと、俺も何時になく鍛錬を頑張ったのだが、
( やっぱり、まだまだみてぇだな・・・)
今の自分にこの手を振りほどく手段はない
ゾロは諦めた。
諦める事によって、今のこの状況を精神的に回避する事にしたのだ。
次は絶対に負けない為に、
腕立て伏せを後500回は追加しなくては、と思いながら・・・・・・
End.
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何だかすっきりしてないですが、終わりです(^^)
ゾロは何だかんだ、広い心の持ち主で男前なので
これからのサンジの奇行という名の愛情表現を結局は容認してしまうのでしょうね〜
因みにサンジは無意識のうちにゾロの事を好きになっていましたが、
それをまた無意識か意識してか、ありえないと頑なに信じようとしませんでした。
そんな心境も酒が入ったら別なのです^^
いや〜酒って怖いですね。
本音が露わになりますから^^
[2013/4/15]
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