2



( さて・・どうするか・・・)



ゾロは非常に面倒な今の状況を、まるで他人事のように眺めていたが、
今のサンジを置いていく事はしなかった。



兎に角一番の迷惑をこうむった、此処のマスターに俺は詫びを入れた。


だが、店長は「嫌、こちらも助かったよ」と笑みを浮かべながら言った。
俺が不思議に思っていると店長は苦笑しながら、理由を教えてくれた。



どうやら俺に絡んできたのは、
この町でもかなり煙たがれていた奴らだったらしい・・・


最近は此処に入り浸っていたので、
客は遠のくし、騒動は起こして店をめちゃくちゃにするから
ホトホト困り、果てていたそうだ。


因みにこいつらは山族らしく、一応賞金がかけられているみたいなので、
この店の修理代はこいつの首で勘弁してもらう事にした。


マスターは「おつりが出るくらいだよ」と言って、嬉しそうな笑みを浮かべ、
この店で唯一来てくれていたウエイトレスの女も嬉しそうに笑みを浮かべながら頭を下げた。










さて、残る問題は・・・・・・・





「グゥーーーーーーー」







床に座り込んだまま、このアホだ。

よくあんな血まみれで倒れている奴らの傍で寝れるもんだと、
普段何処でも寝るゾロは自分を棚上げしてそう思った。



溜息をつきながら頭の後ろをガシガシしていると、
ビクビクしながら野次馬のようにこの店を覗き込んでいる、ウソップとチョッパーの姿が目に入って来た。





俺はこれ幸いとばかりに二人に声をかけた。
すると、まだビクビクしながら二人は中に入って来た。


「おい。何があったんだよ」

「あれ、サンジだよな。どうしたんだ?;;」


オロオロしている二人に
簡潔にだが、事の説明を終えると、こいつをどうするか三人で考えた。




今日俺達が止まる宿は、此処からかなりの距離があるとウソップが言う。
流石にこんな状態のサンジを担いでそこまで行くのは憚れた。


だから近場の宿にこいつを放り込む事にして
まずウソップ達に手配してもらっている間に、俺はサンジをこの店からだそうと近寄った。



「おい。クソコック。何時までもそんな所で、・・ゥオッ!?」


俺が近づいた瞬間、サンジが動き出した。
突然の事に反応出来ずにいると、こいつはいきなり俺の脚に絡みついてきやがった。




「てめェ!離れろ!気色悪ぃッ!!」


まるで、女に縋っているかのように、足に抱き着いて離れないサンジ



( とうとうイカレちまったのか?こいつ )


至極失礼な事を思いながらも、
普段のサンジを知っている者が見れば、誰だってそう思ってしまう光景だった。







しかし、
このままでは身動きが出来ないし、いい迷惑なので、引きはがそうとしたら・・・・


「何だよッ!何で俺はダメなんだよ!!」


――― と、またもや意味不明な事を言い出しやがった・・・







( なんて厄介な酔い方しやがるんだ、こいつは;;)


店のど真ん中で、まるで今にも捨てられそうな男が恋人に縋りついているような絵図に
流石のゾロも、何で俺がこんな目に・・・と泣きそうになった。




「おい。見つかったぞ・・・って、何してんだお前ら;;」

「俺を含めるんじゃねェ!」

「俺、酔っぱらったサンジって、初めて見た・・・」

「見てねぇで、てめぇらもこいつ剥すの手伝えよ」



ゾロのげんなりとした言葉に、二人は直ぐさまサンジを剥そうとしたのだが、
これが、中々に大変だった。






まずサンジの肩に手を当てた瞬間

「ゾロ以外俺に触るんじゃねェ!」と睨まれ





ゾロから引き離そうとしたら

「俺からゾロを奪うんじゃねぇ!」と泣きだした


しかもゾロのズボンに顔をグリグリさせながら・・・・・



(( サンジって・・・・ゾロの事大好きだったんだな・・・・・))





これだけゾロ好き――vvアピールをされて、気が付かない訳がない。

激鈍のゾロを除いては、だが・・・・・









そんなこんなで
小一時間かけて、漸くサンジをゾロ背中に回す事に成功し、マスターに礼を言って店に出る事が出来た。




サンジが眠っているうちに、なんとかウソップ達が探してくれた近場の宿に入り、
ベットにこいつを放り投げ込む事が出来た。





漸く一息つく事が出来た俺達は、こいつを置いて
さぁ部屋を出ようとしたのだが、

後ろから伸びて来た手に、それは叶わなかった・・・・








グイッ



「は?」


バタンッ





伸びて来た腕に引っ張られたと思ったら、身体が柔らかな布団に包まれた。


後ろからこんな事が出来る奴なんて一人しかいない。
ってか、お前何時の間に起きたんだよ、っと言いたい事はあったのだが

サンジが、せっかくここまで連れてくるのを手伝ってくれたウソップとチョッパーを
ポイッっと投げ捨てるように、この部屋から追い出すという所業に出したので、
その言葉もすっかり喉の奥に消えてしまった。




流石の俺もこれには唖然とした。


「お前、此処まで連れてきてくれた奴に・・」

「ゾ・ロ〜〜〜vV」

「グェ!」


腹が立って文句を言おうとしたら、まだ目が虚ろなサンジが急に飛び掛かって来た。

流石に急すぎて、俺は逃げる事も叶わなかった。






此処まで我慢していたが、流石の俺もキレる寸前だった。
もしろ良く我慢していた方だ。




「テメェ・・・いい加減に、「スゥーーー」・・・・こ、の野郎・・・」


ワナワナと身体が怒りで震える
だがまずは、こいつを退ける事が最優先と怒りを何とか沈める事に成功した。



流石に全体重でのしかかってくるサンジを退かすのは大変だった・・・

しかも、定期的な寝音が聞こえてくるのが、腹が立って仕様がない。


何とかサンジの身体から抜け出した俺は、散々な夜に盛大なる溜息をついた。


( 何か今日溜息ばっかついてるような・・・・)


また溜息をつきたくなるのを堪えて、
俺は兎に角、シャワーを浴びる為に浴室に向かった。










「ゲッ;;」


鏡に映った自分の服は、見事な程サンジの涎と涙で皺々になっていた。


もうここまで来たら、疲れるだけで、怒る気にもなれなかった。


俺は服を脱ぎ、シャワーを浴びた後、
簡単に水で洗った服をハンガーにかけた。


此処で、そういやコックはスーツだという事を思い出した。

そんな義理はない、と思いながらも、
俺は結局、サンジの服を脱がして、皺にならないようにハンガーにかけてやった。



正直自分がなんでこんな事してるのか、分からなかった。
まぁ気まぐれだなって位にしか思っていなかった。





この行動が後でサンジを、大いに苦悩させるとも知らずに・・・・・・・・
















[2013/4/15]


[*前へ][次へ#]

6/7ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!