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その後の俺は、
まるで何かが憑いてるのかと叫びたくなる程、ついてなかった・・・・・・
普通に歩いていて、ふと視界に緑の花が入った瞬間転んでしまい・・・
綺麗なお嬢さんがハンカチを落としたのを偶然見かけて、
これ幸いとばかりに背後から声をかけた。
振向いた彼女に、
もし良かったら、このままお茶でも・・・っという言葉は、彼女の目を見た瞬間消えてしまった。
彼女の綺麗で透き通った赤い瞳が、
あいつとリンクして俺の頭を彷彿させた。
おかげで、ナンパは失敗し、女の子とはそれっきり・・・・
(ありえない、ありえない。こんなのは俺じゃねぇ!)
上手く事が運べず、どんどん気持ちが沈んでいく
何かしてないと直ぐに思いだしてしまう・・・・
あの時の鼻にかかった甘い寝音
普段のなりが潜んだ、いつもより幼くあどけない寝顔
・・・・って!!
だからやめろってば!!
( どうしたってんだ、俺はッ!!)
急に立ち止まり頭をブンブン振り回す俺を、
地元の人間達は訝しげに見ていくがして、今の俺は全くそれ所ではない!
兎に角、邪念を追い出す為にも・・・買出しにせいを出そうと、市場に向かった。
「よしよし♪大量大量」
初めて見る食材や、地元ならではのレシピが思っていたよりも
簡単にゲット出来きて、少し先程までの憂鬱な気分が紛れ、気分が上昇した。
(さて、後はこいつをどう運ぶか、だな)
流石の俺でも
遠慮なしに高く積み上げられた多種多様な袋や樽の量を運ぶのは
一気には到底無理だし、かといって回数を分けるなんざ、面倒な事は・・・・
「おいゾロ。二人で・・・・ガァアアア!!!」
俺は・・・・今なんて言った!?
何で此処にあのクソ剣士の名前が出るんだ!?
ありえない!自分が分からない!!
近くにあった街灯に何度も頭をぶつけ、自分を諌める。
「お、おい・・サンジ・・・・一体どうしたんだよ、お前ι」
「あ゛ぁ?」
「ヒィーーーーーー」
「鬼だぁーーーー」
ふと自分の名が聞こえ振り返ると、そこには
お互い抱き合って涙目で震えているウソップとチョッパーの姿があった。
朝の悪夢の目覚めから今までにして、
漸くあいつ以外のクルーに会えた事に正直サンジはホッとした。
例え、それが麗しのナミさんでもロビンちゃんでもなくても、だ。
運よく通りかかった二人を使う事にしても、重すぎる荷物に
二人はだらしなく悲鳴を上げていたが、何とか船に辿り着くことが出来た。
「おらよ」
文句を言わずに手伝ってくれた二人に
お礼の気持ちを込めて、冷たい飲み物を出してやった。
それを全く同じ呼吸、動作で一気飲みして、「ぷはぁー!うめぇぇぇえええ!!」と叫んだ。
何の兄弟だ。お前らは
( いいねぇ・・・お子ちゃまは・・・悩みがなさそうで羨ましいぜ・・・)
俺がこんなにもショックな現実と立ち向かっているというのに、呑気なもんだな、と
ウソップ達には知ったこっちゃではない事を思いながら、俺は積み込んだ食糧達を冷蔵庫に入れていたが、
背後から聞こえてきた質問に俺は身動きが出来なくなる程硬直してしまった・・・・・
「なぁ。サンジ。今日はゾロと一緒じゃないのか?」
「ん?あ、本当だ。また喧嘩でもしたのか?」
可愛らしく首をかしげながら聞いてきたチョッパーの言葉に、俺は分かりやすい位固まってしまった。
ギ、ギ、ギと壊れかけの擬音が聞こえるロボットの様にしか、振り返る事が出来なかった。
しかし俺の反応を、特に不思議に思う様子もなく、ウソップも何でだ?っなんて呑気に聞いてくる。
( な、、、なんでこいつら・・・俺がゾロと一緒だったって知って・・・・・)
その疑問ばかりが頭を占めつくす。
俺はグルグル回る思考に、答えを返す事も出来なかった。
「どうしたんだ?変な顔だぞサンジ」
「やっぱり喧嘩でもしたんだろ。今にも飛び掛かりそうな勢いだったしな」
「お前ら・・・・」
「「ん?」」
仲良くハモル二人に眩暈すら起こしながら
俺は覚束ない足取りで二人に近寄り、その並ぶ肩をガシッと掴んだ。
掴んだ肩がミシミシと音を立てていたが、掴まれた肩の痛みより何より
目の前のゾンビのような目をした男の、この世の終わりとでも言うような・・
絶対今日の夢に出て来るだろう恐怖の形相に、ウソップとチョッパーは心の中で多大なる悲鳴を上げた。
「昨日の知ってる事全部話せ・・・」
「「ひゃ、、ひゃぃ・・・」」
あまりの恐怖に舌が回らず幼稚な言い方になってしまったのも、仕様がないと思えてしまう程、
サンジの顔は、既にこの世のものが作りだしたと思えない様になっていた・・・・・・
後にウソップとチョッパーは語った――――・・・・・・
「死神と鬼が同時に来た」・・・・と・・・・・
[2013/2/26]
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