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「 は?」
朝日が窓から眩しく照らされる
その眩しさにゆっくりと目を開け、
まず飛び込んできたのは、いつもとは違う天井だった。
(・・・・そうだ。昨日島についたんだっけ・・・・・)
気怠い身体を心地良く受け止め、
包み込んでくれるスプリングのきいたベット
あまり上等という訳ではないが、
普段マットもないハンモックで寝ている身体には、十分な寝心地を与えてくれた。
おかげで、いつもより身体が大分楽だし、
何より、滅多にない寝坊をしてしまった。
・・・まぁそれは、今日はいいのだが・・・・・・
其処まで辿りついたサンジは、此処にきて漸く思考が働きだした。
そして冒頭である、
いやに間抜けな声が、静かな空間に響いたのだった―――――・・・・・・・
サンジは混乱した。
まず今自分に起こっているこの現状を受け入れる前に、
自分落ち着けと、何度も何度も唱えてから、昨日の事を思い出す事にした。
昨日の夜・・・クルー達で夕食を終えた後、
明日の食材の買い出し料をナミさんから貰って、それから・・・・・
・・・・・?
それから・・・・どうしたんだっけ・・・・・・・?
( 待て待て待てッ!落ち着くんだ俺!!)
サンジは混乱する頭で、兎に角必死にありとあらゆる身体の細胞に訴えかけ、
今の現状が作られた原因を思い出す事にした・・・・・・
そうだ・・・・・
夕食の時、皆で食事をしたレストランのコックから、此処は地酒がとても有名と聞いて
たまには、飲みに行くか・・・・・と、普段ならナンパを優先するのに、
その日に限っては何故か、ナンパする気が起きず、飲みに行く事にしたのだ・・・・
そして行きついたのが、
其処まで大きくない上に、決して雰囲気が良いとはいえない酒場だった。
これも普段の俺らしくない・・・・
いつもなら、こういった時は必ず洒落たバーに入るというのに・・・・・
だがその時は、特に自分の行動を気にする事なく、店の中に入って行ったのだ。
店の中には、まばらに客が飲んだり話したりしていた。
どの客も、お世辞にも人相が良いとはいえない、
まぁこういった店には良く見かける、地元のごろつき達がたむろっていた。
そんな所に、よそ者が来たら?
当然視線を浴びても仕様がないというものだ。
俺は自分に注がれるネチネチした不躾な視線に構わず、
カウンターに座り、事前にコックから聞いていた地酒を頼んだ。
店主はチラッと俺を見て、直ぐに無言で酒を出してくれた。
二口程度、口に含んで俺はじっくりと酒を味わった。
勿論どこぞのクソ剣士のような、無駄な飲み方なんてしない、と今此処にはいない奴の事を思った。
そうだ・・・・確か、
店の中には酒場で働いている数名の可愛い女の子もいた。
ごろつき達を簡単にあしらうその洗練された姿は、実に優美で俺の好みだった。
だからこの場所で可愛いお姉様をナンパもせず、一人で酒を飲み、
あろう事か、こんな時に思い出す必要が皆無の、どうでもいいと思っている奴の事を思っていた時点で
既に俺は可笑しかったのだ・・・・・・
こうして思い起こせば、明らかに可笑しくなっていたんだ・・・・俺は・・・・・
だが( あまり認めたくはないが )酒には結構弱い俺は、
二口口にした時点で、既にほろ酔い気分だったので、自分が可笑しくなっている事に気が付いてもいなかった。
( 今じっくり思えば、あの酒は度数の高さが半端なかったぞ・・・・・)
それから・・・
あれ?
俺はそれからどうしたんだっけ・・・・・・
思い出せない・・・・・全然・・・・・・・
酒に潰れ次に目が覚めた時に、記憶がなかったなんていう経験は
女性には言えないが、実はこれが初めてではなかった・・・・・・
過去に数回あった。
勿論お姉様の前じゃないぜ?
麗しの女神の前でそんな、情けない真似はしない
過去で、まぁ所謂酒で潰れたのも、
全部バラエティにいた時の話だ。
こうやって航海に出てからは一度だって、そんな醜態は晒してなかった・・・・・・
その筈だったのに―――――−−−−
今の自分は悲しくも、それからの記憶が全くなかった・・・・・・・
もう一度サンジは意を決して
出来ればこれが夢でありますように!と願いながら
斜め下、つまり自分の隣に目線を送った。
目線の先にある、最初となんら変わらない現状に、サンジは頭を抱えた。
( ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない )
心の中で何度も何度も、
自分を襲っている現実という悪の光景を否定するが、悲しくも現実が変わる訳がない。
( 何でっ!!!!? )
( 何でクソ剣豪が隣で寝てるんだっ!!!!!!)
しかもお互い裸に近い恰好でっとは、恐ろしすぎて言葉に出す事が出来なかった。
いっそ死んでしまいたい・・・・・
こんな・・・・こんな・・・・
(Σはっ!もしや、これは
あまりにラブコックな俺を嫉んだ、ウソップやルフィの仕業か?)
現実を受け入れたくない一心で、
遂にはそれこそありえないだろう、といえる現実逃避を開始し始めたサンジ
その横でゾロが、うぅ〜んと、寝息を零した。
(っ〜〜〜。一々紛らわしい色っぽい声出すんじゃねぇ!!)
只の寝息を色っぽい寝息と称する辺り
サンジはだいぶこの状況にやられている事が窺える。
だが実際にゾロの寝息は、
確かに普段のサンジからしても、何処か魅惑的な声音で、
それに伴い何処か色っぽさを感じる響きがあるのだ。
正直、まだ子どもトリオには分からなだろうが、これが、
あのルフィの兄貴あたりだったら、確実にやばいのは・・・・って!
一体何を言っとるんだ俺は!!!!
( とうとう頭がイカレてしまった・・・・・)
「ん・・」
「ッ!!」
頭を抱え込んでいると、またゾロが艶めかしい寝息を口にした。
思考もそうだが、身体の一部までもが
何だか可笑しくなりそうだったので、俺はそっとベットから抜け出した。
パンツを履いてる事と、
身体は確かにまだ少し怠さが残っているが、あらぬ場所は別に痛くもなんともなかった事に
内心物凄くホッとして、俺は身支度をさっと整え、この場を後にした。
[2013/2/25]
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