相合傘( S→Z+L )



「雨ひでぇなぁ〜」

「全くだな。こうも雨続きだと気が滅入るぜ。」







今日の朝は雨とは無縁といっても過言がないといえる、雲一つ見当たらない晴天だった。
天気予報もずっと太陽のマークが並んでいて、降水確率は二桁もなかった筈なのにだ。


昼を過ぎた辺りから急に雨雲が空を覆い始めたと思ったら、あっという間に大粒の雨が降り出したのだ。





直ぐに止むかと思われた雨は下校時間を過ぎても勢いは留まる所を知らず、
傘を持ってきてない生徒達は、揃いも揃って言っても仕様がない文句を言っている。




只今試験期間真っ最中の為、全校生徒部活動はない。
だからこそ、部活動に励んで雨を凌ぐ事も出来る訳もなく
傘を持っていない生徒が下駄箱で往生している姿をよく見る。

諦めて自暴自棄になりながら走って帰る男子生徒もちらほらいるが、
女生徒はそうもいかず、友達と相合傘をして帰ったり、親に電話して迎えを呼んでいる姿がよく見かけられた。



そんな下駄箱の光景を中にあったのが、冒頭の台詞の主である。


ルフィとサンジは偶然廊下で会い、そのまま此処まで来たのだ。
多分このまま行くと、ルフィがサンジの家が経営している地元では結構名が通っているレストランまで着いて来るだろう。
そして腹が減った〜なんて言いながら内の飯を食って行くだろう事は目に見えている。


(テスト期間だろうが、部活の試合前だろうが、関係なしに、周三回はやってくるからな・・・)


まぁサンジも料理が好きだし、美味しそうに豪快に食べるこいつを気に入っているので、構わないのだが・・・


こっちの都合なんてお構いなしなのが、一番困っていたのだ・・・





以前、(もう別れているのだが)彼女を家に呼んで自宅デートをしていたのだが
結構いい雰囲気になっていた時、案の定図太い神経を持つルフィがやって来て

「腹減った〜〜〜。何か作ってくれよ!!」と、このいい空気がわからねぇのか!っと言いたかったのだが、
こいつに言っても逆にこっちが疲れるのは長年の付き合いで分かっている事なので、諦めてご飯を作りにいったのだ。



まぁ当然の結果ともいえるが、これが正直いけなかった・・・


当たり前といったらそれまでなんだが、彼女は怒って帰ってしまったのだ。

そしてそれから一週間もしない間に別れてしまったのだ・・・




仕様がないか・・・と思ってしまう辺り俺もあまり本気ではなかったと、今はそう思える。

だって、次の日には立ち直れたのだから・・・












今日は何を作ろうかと思いながら傘置きを見てみると、
俺が今日持ってきたはずの青色の傘が見当たらない。



おかしいなぁ、何て思いつつ一応全体を見渡してみるもやっぱりない。






( 一体何処のクソ野郎だ!持って行きやがったのは )





置き傘をしているとこういう日には、誰かに持っていかれる事が多い。

それを知っていて置いていた自分も悪かったのだが、正直腹が立つものは仕様がない。



無意識のうちに溜息をついて、さてどうするかと考えていると、ルフィに呼ばれた。



「何だ?」

「サンジ傘持ってきてないのか?」

「今日の天気予報で持ってきてる奴の方がビックリだぜ」

ルフィを見てみると、どうやらこいつも傘がないらしい。
どうせ帰る場所は一緒だし、自分達は男だから濡れて帰っても問題はない。

そう思って口を開こうとしたが、ルフィの方が早かった。



「俺もねぇんだよな。一緒に濡れて帰ろうぜ。そんで飯食わせてくれよ。」

腹減った〜と言うルフィ。
自分の予想が当たっていた事と、相変わらずなルフィに内心苦笑をしながら、そうだなと返した。



鞄を頭の上にのせて、さぁ濡れようぜという所でルフィが急に大きい声を出した。


思わず、前のめりになって転びそうになったのだが、
周りにいる女の子達の前でそんなかっこ悪い所を見せるのだけは我慢できないと、
半ば意地で踏ん張って事なきをおえ、ルフィの方に向き直った。



「おい。急になんだよ。」

「ゾロだ!」

「は?誰だぞりゃ」

キラキラと満面の笑みを浮かべるルフィ

此処までキラキラしているのを見るのは普通とは少し変わった鼻をしている犬を拾った時以外だ


初めて聞く名前だと思い、ルフィの見る先に目を向けた。





校門近くに
傘を持っていない手で折りたたまれた傘を持った私服を来た男がこちらに向かっているのが見えた。



傘と強く降り注ぐ雨でよく顔がみえないが、
身長と私服でいる所を見て、なんとなく年上だろうと思った。



今ままでの付き合いでルフィの口から「ゾロ」なんて単語は一度も登場した事がなかった。

一体どんな奴だと思いながら、
今にもこの雨の中飛び出そうとするルフィを、襟首を持って引き止めながら
相手が此処まで来るのを待った。








「誰だろう。すぅっごくカッコイイ」

「背、たか〜い」

遠くから黄色い声が聞こえてきた。
誰に対してなのかは一目瞭然だった。


ゾロという男が近づいてくるにつれ、はっきりしてきた相手の顔


正直、男らしい体つきに、その端正な顔は
何気にイケメンが多い事で有名なうちの学校も真っ青になる位だった。







しかも・・・





「かっこいいけど、なんか美人って言葉の方がしっくりくるかも!」

「確かに!いいなぁ〜あんな彼氏ほしいぃ〜〜〜」




そう。


女の子たちのいう通りなのだ。



自他共に女好きと認識している俺でさえ、
もう手が伸ばせば届く所まで来たこの男が綺麗だと自然に思った。







「ようルフィ。久しぶりだな。」

襟首が俺に捉えられたままというカッコに、苦笑しながらルフィの名を口に出すゾロという男に
周りからまた黄色い声が聞こえてきたが、どうやら目の前の男は気づいてないみたいだ。


ルフィから手を離すと、ルフィは「ゾロぉ!」と言いながら嬉しそうに飛びついた。


「ぅお!いつも急に飛びつくなっていってんだろ;;」

呆れた顔をしながらも、しっかりと受け止め、
振りほどく気もないのだろう、させるがままにしている。


ルフィを見つめる目がとても優しくて、胸がドクンと高鳴った。












[2013/1/17]


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