ジメジメジメ




キッチンでは豪華な夕食が色とりどり並んでいる。


しかしその豪華な夕食をも色あせてしまう程
今のラウンジルームの空気はどんよりしていました。







それは何故か?





「めしぃぃぃ――――−−-い・・・?」



お腹が空いて勢いよく入って来たルフィも、流石にこの重苦しい空気に気がついた。


何かあったのかと思い頭に?マークを飛ばしていると、
ひと際空気がどす黒く湿っているシンクの横に気が付いた・・・・・・







「キノコが生えてっぞサンジ。」


人間にキノコが生えるなんてありえないが、あまりのどんより空気の所為か


何度目を擦ってもルフィの目には、
サンジ背中や肩、頭の上等至る所にキノコの幻覚が見えるのだった。





「うるせぇ・・・クソ猿・・・早く席につけ。まだ食べんなよ・・・・・」



シンクの隅で体育座りで背中にキノコを生やし、
いじいじダークモードに入っても豪華な夕食を作り上げるという、素晴らしきコック精神を見せたサンジ。







サンジは今までもナミやロビンに相手にされず、いじける事が多々あったが、
ルフィは此処まで落ち込んでいるサンジを見るのは初めてだった。

少し戸惑うも空腹には勝てず、お腹が鳴くと同時に席についた。
そして程無くしてぞろぞろと皆が入って来た。









皆入ってくるなり重苦しい空気と嫌でも流れてくるサンジの心の声に嫌気がさしながらも、
触れる神になんとやら精神で席に着いた。




最後に入ってきたのはチョッパーとゾロだった。





珍しくゾロが寝過ごさなかったのは、きっとチョッパーと一緒だったからだろう。




人の気配等には誰よりも敏感なのに、
自分に向けられる好意や情等には何故か極端に鈍くなるゾロでも、流石にいつもと違う空気を不思議に感じていた。





「何だこの重い空気?」


「「「「・・・・・・・」」」」



空気が可笑しい事に気がついても、
この空気を作り出したのに、自分も関わっている事にはやはりゾロは気づいていない。

皆分かっていた台詞だけに心の中で大きな溜息をついた。







原因を作ったナミとロビンも流石にやりすぎたかな・・・と思いながらも、
流石の自分達でもこの空気にどうする事も出来ないでいた。



因みに弁解のように言わせてもらえば、
ナミとロビンは頑張ったのだ。

それはもう、精一杯といっていい程に・・・・・・




少しの罪悪感か、面白さからくるものなのかは定かではないが、
2人ともあの手この手でサンジに元気になってもらおうと頑張ったのだ。


ナミに至っては、サンジのほっぺたに軽いがチュッとキスまでしたのだ。



決してメンドクサイからと言ってこの空気をスル―していた訳ではないのだ。
決して・・・・・











(どうせゾロは俺の事なんて〜〜〜〜〜〜〜泣;;)





皆が集まった為始まった食事中でも、
サンジはウジウジと床に指でのの字を書きながら、ダーク思考をエンドレスで繰り返していた。

しかも繰り返す事に悲しみに染まった心の声と一緒に、どんどん空気が重くなっていく。








最初は何でこんな事になっているのか分からなかった、ナミとロビンを除くクルー達。


しかしサンジが何回もこの原因を作った先程の時間を繰り返し思い返しては落ち込んでいくので、
直ぐに状況を理解する事が出来た。







確かにサンジがゾロを好きだと言う事は皆知っている。
これだけあからさまなのだ。気が付かないという方がおかしいだろう。

しかもいつも遠慮なしにゾロに対する邪な気持ちが流れ込んでくるのだ。
これにはこちらも溜まったものじゃないと言いたい時が多々あったが、
それも仕様がないとばかりにあのルフィでさえも我慢していた。



大体サトラレじゃなくたって分かりやすいサンジの気持ちに、
イチミクロも気が付いていないゾロの方がビックリだ。

まぁ、そんなゾロらしい所が魅力の一つでもあるのだが・・・・・・





そのゾロの素っ気ない態度に、サンジがショックを受けるのは分からないでもない・・・・・


しかしだからといって
本来楽しい筈の食事中にこんな空気を出されては正直耐えられない。






( 原因を作ったのは私だけどいい加減にしてほしいわ

( 暗いよぉ〜〜〜ι)

( はぁ・・・俺の嫌いなキノコが見える・・・・・)

( どうしましょう)

( 飯がいつもより上手くない気がする・・・・)




本当は・・・・・


「ご飯中くらいいい加減にしろ!!」・・・・とサンジに言いたい。





この重苦しい空気だけならまだ許せたのだが、ご飯中にサンジの思想が嫌でも入って来ては、
美味しい筈のご飯も、味わって食べる事が全く出来ない。



もう耐えられない!!とナミが速くも切れそうになっていた。


こうさせた原因は自分にあるというのに、全くの棚上げである。

しかしナミはそんな事、知った事じゃぁない!



ウジウジ悩むのは勝手だが、自分まで巻き込むな!!と内心、もの凄い勢いでイライラしていた。



そしていざサンジに一言言う為腰を上げようとしたら・・・




「ごちそうさま」





食事の終わったゾロが、ナミより先に立ち上がったのだ。



実はゾロ。
空気がいつもと違うと感じながらも、面倒事に突っ込む気はなく、
早々に食べ終えて、鍛錬に行こうと立ち上がったのだ。




ゾロに気を取られ出鼻を挫かれたナミは、
やりきれない思いを抱えつつ口を閉ざした。その顔は不満気だ。






スタスタといつも通り出口に向かっていたゾロだったが、
ふと何かを思いついたように身体を180度回転させサンジの方へ歩いて行った。



それを皆あのルフィーでさえも食事の手を止めて黙って見ている。



そしてサンジの元へたどり着き、耳元で何か言ったかと思ったら、
こっちまで見惚れる位可愛い顔で笑ったのだ。




サンジに笑いかける何て滅多にないゾロの行動、
そしてクルー達でも滅多にお目にかかる事の出来ない、その綺麗で子どもっぽさを滲ませた笑みに
クルー全員見惚れるように口をぽかんと開け凝視してしまった。




しかし皆は直ぐにハッとして
まるで打ち合わせをしたのかの如く、皆一斉に顔をサンジの方に向けた。








そして視界に入って来たのは、予想通りの光景だった・・・・・







(ふ・・ふふふ・・・可愛いなぁゾロは〜〜〜vvv)



ニコっと擬音が付く位のまるで子どものような可愛らしい笑顔を超間近で見れたサンジは・・・










さっきまでのキノコ軍団は何処へやら・・・・・









あの重苦しかった空気が今度はどぎついパッションピンクの




ある意味すご――く鬱陶しい空気になっていた。









皆はゾロがサンジに何を言ったのか聞こえなかったが、サンジを元気にさせるには十分だったらしい。



ゾロに聞かず、サンジに何を言ったのか知ろうとしても今のサンジには近づきたくもない。
生憎唯一の方法であるサトラレで流れてくるサンジの思想は、

ひたすらゾロ可愛いvv等の惚気ばかりで全然分からなかった。










だが、
あの状態のサンジをここまで変えさせるゾロはさすがというか、



一日でこうも百面相が出来るサンジをある意味尊敬する一方、





残された皆はこのピンク色の空気と、サンジのヒートアップしていく妄想に耐えられなくなる前にと、





我先に食事を終えて








ランチルームから出て行った。

















そうして今日もサンジに自分がサトラレだと気がつかれずに一日が終わろうとしていた。








ゾロへの恋の進展もないままに・・・☆












(いつか絶対!!オールブルーで結婚式を挙げてやるぜ!!待ってろよゾロvvv!!!)










(はぁ・・・)
(勝手にやってくれ!!)










End.


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】


何というか、結局サンジは電波君になってしまいましたね(ーー)

まぁそれも多分しょうがないでしょう(笑)



ゾロが一体何を言ったのか・・・・




皆様のご想像におまかせします(^^)









[2011・12・10]

[2013/2/25加筆修正]


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