短編
1
ザックザックザック
「はぁ〜」
ザックザックザック
「はぁぁぁ〜」
ザックザックとリズミカルに良い音が校舎裏から響いてる。
間違ってもこの音は誰かを埋めようとしたり、落とし穴を掘るために地面を掘っている音ではない。
本当は校舎裏の花壇で新しい苗を植える為に、土に肥料を混ぜていた音なのだ。
一体誰が?
その答えはこの学園で只一人しかいない園芸部の草野 花梨16歳
土を掘る音と同時に聞こえる大きいため息に
どうやら草野君はここ最近放課後の一番の楽しみの筈の園芸作業が身に入らないらしい事が伺える。
いや・・・放課後だけでなく、
授業中や自分の部屋にいる時等、兎に角何をしていても考え込む様にボーっとしているのだ。
草野自信もどうしてそうなるのか理由は分かっていた。
でも分かっているからこそ・・・・・・逆に厄介なのかもしれない・・・
「はぁ・・・」
花梨は新しく植えた苗に水をあげ終わると、雑念を振り払うかのように頭をぶんぶんと振り、
この時だけはボーっとなるのを我慢し、
もはや習慣になっている
新しく仲間入りした苗達が元気に育つようにありったけの想いを込めながら愛しさを込めて苗を撫でた。
全ての苗に愛情を注ぎ終わると自室に戻る様に立ちあがった。
花梨が去った後の苗達は、何処か寂しそうな空気を出していた・・・
自室に戻った花梨は自分で育てたハーブを入れたお風呂を満喫していた。
「はぁぁあ―良い湯vvv」
丁度良い湯加減に至極ご満悦のご様子。
一日の汚れを落として30分程半身浴をしていると、ふとお風呂に浮かんでいるハーブが視界に入った。
同時に先程まで頭を悩ませていた一人の顔がまた脳裏に浮かびあがった。
「このハーブはあいつ″も好きなんだよなぁ〜」
・・・・・・はぁ―――−−-
折角良い気持だったのに・・・
無意識に出た言葉は、浴室では思っていたよりも響いて、僕の鼓膜を振るわせた。
あいつは俺がちょっと至福を味わっている時でさえも、簡単に俺の中に侵入してくる・・・
でも一番厄介なのは・・・
・・・俺が・・・
それを嫌だと感じていない事なのかもしれない・・・
(このハーブお前と同じ香りがして大好きなんだ)
[2012・1・17]
[2012・6・26修正・加筆]
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