短編


「俊君、それ配り終えたら紅茶入れてくれる?」

「はい。 でももうすぐ始業式が始まっちゃいますよ?」

「フフ。 君の入れた紅茶を飲まないと何だかやる気が出ないんだもん」

「っ/// わ、分かりました。 って事なんでそろそろ退いてもらえたら嬉しいんですけど…」

「・・・や。お・・れも・・・・行く」

「分かりました。じゃあ行きましょう」

バタン

男がもん″なんて付けたって気持ち悪いだけなのに、何故か見惚れてしまう綺麗な笑顔付きで言われた俊は顔を赤くしながら、
後ろから抱きつく様にしてひっついている書記を連れながら給仕室に入っていった。






「・・・って、ふざけんなぁ!!!!」

バコーン


けたたましい怒鳴り声と粉砕するかのような勢いでドアを蹴り破って入って来たのは、


生徒会全員が散々追いかけ回しても捕まらなかった転校生君でした。



怒涛の勢いで入って来たのにも関わらず先程給仕室に入って行った俊と書記は出てくる気配が全くない。

流石おじさんが経営している金持ち学校、
こんな所まで防音対策を施しているとは・・・


ってそんな事はどうでもいい!!




「何で此処に俊がいるんだよ!!!?」

「あれぇ?柳じゃん。何しに来たのぉ―?」

「何でじゃねぇ!!俺よりも先に何で俊が此処にいるのか説明しやがれ!!」


転校生の柳は自分が此処にいる生徒会連中に好かれているのは気がついていた。

それは自意識過剰の自惚れなんかではなく、
生徒会全員が幼稚園児でも分かりやすいアピールを転校初日から毎日の様にしてきたからだ。

だが、自分だって好きな相手に振り向いてもらうのに必死で他の奴なんて構っていられなかった。


でも、それにしたってこれはないと思う・・・


もしかしたら自分会いたさに俊を利用したのか?
嫌それにしてはこいつらの反応の薄さは何だ?


今までと違う生徒会連中の態度に少しの戸惑いと大いなる嫌な予感が胸を占める。




まさか、まさか、まさかな・・・



でも今までだったら、俺を見た瞬間に抱きついて来た会計は、
未だ俺を見る事なくパソコンをいじっている。

自信満々な笑みを浮かべて「俺に会いに来たのか?」
等と自信過剰も程々にしろとため息をつきたくなるような事しか言わない会長も同様だ。

副会長と言われれば、いつもなら俺の為に紅茶を入れに行くのに、今は無駄に豪華な長机の上にお菓子を並べている。

ヒィ、フゥ、ミィ

数は3つ。
しかもこれは1年前から予約をしなければゲットできないと言われている幻の○○堂のイチゴショートケーキ。

俺が実は甘いモノが苦手なのは周知の事実だ。
(以前食堂でオマケにくれた微糖のヨーグルト
 俺はいらないと言ったが、俊の可愛いあ〜ん″に負けて食べて、即効土の栄養素になったのはまだ記憶に新しい。
 次の日の俺はいい笑い物だった・・・)


だからこそ、このお菓子が俺の為でない事は一目瞭然

しかもイチゴケーキは俊の大好物である。




どんどん膨らむ嫌な予感・・・




「皆さん紅茶が入りましたよ。少し休憩にしましょ」

ニッコリと可愛いく笑った俊の登場に生徒会の雰囲気がさっきよりも一段とほんわかな空気に包まれた。



そして俊を見る生徒会の目つき・・・





此処まで来ると流石の俺でも嫌でも分かってしまう







間違いない。
こいつら・・・






(俺の)俊に好意を持ってやがる!!!!!








俊!!

俺という恋人(勝手な妄想)がいながら何でこんな奴らの所にいるんだよ!!


っていうか、いつの間にこいつら俺の俊と仲良くなりやがったんだ!!!?









〈 付きぬ疑問に翻弄される転校生 〉





分かっているのは最悪の事態だという事だけ



[2012・2・15]




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あきゅろす。
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