短編
6
僕と太陽の関係が変わった、あの衝撃の夏が過ぎ
寒さが日々強くなっている真冬には、屋上に人が来る事は少なくなってしまった。
そんな屋上に今日は珍しく2つの人影があった・・・
「ごめんね。部活前に。」
「いや、大丈夫だ。今日はミーティングだけだから。」
「そう・・・」
あの日から今日で丁度半年
放課後部活に行かれる前に太陽を呼び出し一緒に屋上に向かった。
屋上に向かう途中チラッと太陽の方を見た。
一見無表情と思える表情も、付き合いが長い僕から言えば、ほんと見た目だけだ。
太陽が無表情を装っても、凄く緊張しているのが長い付き合いの僕には伝わってくる。
何で呼ばれたか、太陽もきっと気が付いてる。
屋上に付いて僕はフェンスにもたれかかる。
太陽は僕より少し離れた所で不安そうな瞳で僕をジッと見つめていた。
「花梨・・」
「・・・今日はさ僕が育てた花がとっても綺麗に咲いてるんだよ。」
「・・・ぁあ」
「ふふ。またぁあ″だけだ。」
「ぁ・・ああ」
「ふふ、気がついてないでしょ。太陽ってすっごく緊張するとぁあ″しか言わなくなるって。」
「・・・」
少し苦笑しながら教えてあげると、
太陽はまた無意識に゛ああ"って言いそうになって頑張って口を閉じた。
そんな・・・
普段はいらない位カッコイイのに、ふとした時にこんな可愛い所を見せてくれる太陽が嬉しくて
今度は苦笑じゃなくて心からの笑顔をしていると確信しながら続きを話した。
「今日一番綺麗に咲いてるのは体育館横の花壇なんだ。」
方向を指でさして太陽に見てって目線で合図を送る。
太陽はおずおずと僕の隣の所まで来て、花壇を見た。
「ッ!!!////」
太陽は顔を真っ赤にしてしゃがみこんだ。
「へっへっへ」
「・・・まじかよ。」
「へっへ。僕の頭を半年も悩ました罰だよ。」
おかげで命ともいえる園芸作業に身が入らなかったんだからな、とニヤニヤ笑う俺に
太陽は少し泣きそうな笑みを浮かべ俺に抱きついた。
* * *
(これやる。)
(?何の花?)
(花梨って言うんだ。お前と同じ名前だ。)
(花も小さいけど存在感があって何か優しい感じがする。お前にぴったりだ。)
(・・・///)
ほんのちょっと俺様入ってて
怖い者知らず
本人は無自覚だけど
ちょっと・・・ぅうん、すっごく顔が良くて
(このハーブ何て名前だ?)
(名前は無いよ。僕が作ったんだから)
(へぇ。良い匂いだな。)
(ありがとう。花梨の花から作ったんだ。)
カッコイイのにそれを気取る事なんて全くなくて
優しくて頼りになる生まれた時からの俺の幼馴染
「花梨。」
僕を呼ぶあの優しい声音を聞くと
いつも胸が締め付けられる感覚に陥った。
その気持ちが何から来るものか・・・
気づいたのは確かに太陽からの告白からだけど・・・
(もう!!眠たいんだったら、さっさとベッドに行きなよ!!)
(・・・)
(太陽!)
(・・・ん―・・・俺の身体、何かどっかでも匂った事ある匂いがする・・・)
(僕の部屋の風呂に入ったからでしょ。ハーブ入れてたんだ。)
(へ〜。・・このハーブお前と同じ香りがしてすっげぇ大好き)
(ッ!!///)
胸に灯るこの想いは太陽にも負けないっていう自信はあるよ。
でもそれはまだ・・・
教えてあげないよ
* * *
―――今年の冬―――
屋上は極寒のような寒さが吹き荒れているのに、
人がちょくちょく来るようになった。
それは体育館横にとても綺麗な花梨の花のアートが見れると、
噂が噂を呼び、
特に恋をしている生徒達が、恋する瞳でやってきた。
そんな隠れたスポットになりつつある屋上のとあるフェンスの先には・・・・
それはそれは綺麗に咲いている・・・
<< YES >>
と咲いた綺麗な花梨という花が――――――
冬の間だけ、その短い生涯を謳歌していた―――――
此処、城ヶ先学校に
『真冬、屋上で好きな人と綺麗に咲いた花梨の花言葉が見れたら、その恋は叶う』
というジンクスが出来るのも―――そう遠くない未来―――
[2011、11、29end]
[2012・7・4加筆・修正]
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