短編


「花梨。」




さっきまで何処か上の空だったのに、いきなり真剣な顔をして僕の名を呼ぶ太陽



(何だろう・・・)

太陽のこんな真剣な表情を見るのは高校入学する時のクラス分けを見る時以来だ。
あの時は、確かにもしクラスが離れたら寂しいなぁとは思うけど、
掲示板を睨む勢いで自分の名前を探すことなんかないのに、って思った。

だって、
掲示板が出るまで太陽の事をチラチラ見ていた子が、青い顔で回れ右をしていたのは、何だかとっても気の毒に思えた。




今では懐かしいともいえるあの時の太陽の顔。
それが今こうしいて目の前にある。

しかもあの時よりも何処か緊張した空気も出ていた。



(どうしたらいいんだろう・・・)




急に変わった太陽の様子に怖気づいてしまう。


実は太陽は1年生にして既に陸上部期待のエースである。
だから只の園芸部の俺じゃ、一緒に返れる時間なんて殆どないに近い。
それでなくても最近は私生活でもすれ違ってばっかりだった。


だから、
こうして2人きりで自分たちの部屋に帰るなんて本当に久しぶりで・・・
僕は知らずに緊張していたんだって、今分かった。



(緊張を通り越して、何だか怖い・・・)









少し間も開かないうちに太陽は話だした。


「花梨」

「・・・何?」

「ちょっと時間あるか?」

「? 水やりも終わったし別に大丈夫だよ?」

「大切な話があるんだ。」


 

真剣というより酷く緊張した感じの太陽は、本当にさっきまでの上の空だった時とは全然違う
 

(話って何だろう?
 太陽、すっごく難しそうな顔してる・・・)



時間が経つにつれ、なんだか僕も緊張してきた。
太陽が此処ではちょっとっと言う為、僕の部屋に行く事になった。
僕の部屋に向かっている間会話出来る雰囲気ではなく始終無言だった。






部屋に近づくにつれ心臓の音がどんどん大きくなっていく。
いつもと違う太陽が怖い訳ではない。
どちらかと言えば、今から何を言われるか分からない事に異常な位怖さを感じていた。


何故怖く感じているのか、
今の僕はそれすらも考えられない程、酷く緊張していたのだ。







部屋に着き、
僕から先に切り出した。でも緊張からどもってしまった。


「さっ、先に入る?」

「・・・嫌、此処でいい。」

「・・・じゃあ・・「花梨。」・・」











「お前が・・・好きだ。」








  唐突に

「ぇ・・」










「小さい頃からずっとお前の事が好きなんだ。もちろん恋愛感情で。
 気がついたのは中学卒業の時だ。でも、それより前から俺はとっくに惚れてたと思う。」



  僕が口出す暇さえ与えてくれない雰囲気

「ぇ・・ぁ・・・」




「今すぐ返事が欲しい何て言わない。俺もこの気持ちに気づいて半年悩んだ。
 だからせめて・・・
 同じ半年間だけでもいい。俺の事考えてはくれないか?」




  太陽の言葉一つ一つが、優しく、けれど力強く僕の中に浸透していく

「・・・」



「じゃぁ。それだけだ。」






 



太陽は言うだけ言うと茫然としたままの僕を置いて、さっさと隣にある自分の部屋に入って行った。




それから先の事はあんまり覚えていない。



次に気がついた時、僕は料理を作っていた。
オムライスを作ろうとしたらしいが、


「・・・固い・・・」

どうやら米を炊かずに袋から出してそのまま炒めたみたいだ。




正直、食べれる訳がない・・・

あまりの不味さに少し涙が出た。









  その涙は、まるでこの先の僕の不安もを表しているみたいだった。





――――

――――――――


―パチっ



 ・・・どうやら僕はお風呂の中でうたた寝をしていたらしい。


「明後日で半年かぁ・・・」



半年前の苦い思い出と、ご飯の味をしっかりと想い出した俺は、




もう一度暖かいお湯をかけて風呂を出た。







[2012・1・21]
[2012・7・4加筆・修正]


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あきゅろす。
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