短編
3
無事に僕の日課でもある、愛しの娘(花)達に水をやり終えて
寮のある自室へ向かい太陽と一緒に少し長めで普通の学校よりも綺麗に整備されている廊下を歩いていた。
「久しぶりだね。一緒にこうして帰れるの」
「・・あぁ」
「僕の愛する娘達にも水も上げたし、久しぶりに食堂に行く?」
「・・あぁ」
「ねぇ太陽。・・・さっきからあぁ″しか言ってないよね?」
「・・あぁ」
「・・・」
「・・あぁ」
「・・・僕、なんにも言ってないんだけど?」
「・・あぁ」
ムカッ。
全く聞いてないじゃないか!!
全く太陽は!!
話を聞かない奴はこうだ!
パチッ
「・・・痛ぇぞ花梨」
「太陽が僕の話を聞いてないからでしょう?」
折角一緒に帰っているいというのに、僕が一方的に話してばっかり。
基本太陽はあまり自分から話す方ではない。
太陽はどちらかというと聞き上手で、僕が落ち込んだ時は僕が言いたくなるまで何も言わず傍にいてくれる。
それだけじゃないけど、口で表すのは難しい。
僕もどちらかというと聞き手に回るんだけど、太陽と一緒の時は僕が話しかける事の方が多い。
その時は流石幼馴染というだけあって、話に合わせて雰囲気や態度を変えてくれて、とても話やすい空気を作ってくれる。
そんな太陽と一緒にいる時が一番落ち着くんだ。
けど、
今日の太陽は絶対に可笑しい・・・・
上の空で全く僕の話を聞いていない所か、太陽の心は遥か彼方にいってしまっている。
こんな事は初めてで、少し不安になる気持ちはあったけど、
それよりもこちらに意識を向けて欲しい。
だから僕は、
全然会話に集中してない太陽の頬っぺたを両手で挟んで僕の方へ無理矢理向けた。
やっとこちらの方に意識を向けた太陽の顔は、
不意打ちをつかれたからか大いに膨れっ面だった。
けど次の瞬間にはフッて少し困っている様な、
穏やかにハニカンだ優しい笑顔を浮かべた。
ドックン・・・
太陽は自分の顔がそんじょそこらのモデルなんか目じゃない位良い容姿だって事をちゃんと分かってるのかな?
下手したら鏡何か見た事ないんじゃないかな・・・
そんな、
そんな壊れ物を扱うような優しい笑顔見せるもんだから・・・
心臓が変に煩くなっちゃったじゃないか・・・
僕は一気に上がった心拍数と、どんどん熱がこもっていく顔が太陽に見えないように、ソッポ向いた。
そしたらまたフッて音が聞こえた。
今太陽の顔が見てはヤバイ顔になっている事が、見えない(見ようとしない)僕にも直ぐに分かった。
「フッ。・・・分かったからこの手離してくれないか?」
「いいけど、僕の話覚えてるの?」
「全然」
「もう!!」
「ごめんごめん。」
開き直った太陽の方につい顔を向けてしまった。
今度は本当に困ったように謝る太陽。
この顔は実は僕が小さい頃から苦手としてる表情 NO.1何だ。
これをされたら僕は何だかんだ言いながら最後にはいつも許してしまうんだ・・・・
しょうがないなぁ〜太陽は、と言いながら
僕は未だ両手にはさんでいる太陽の頬っぺたを離してもう一度同じ話を持ち出そうとした。
「今日は食堂で・・」
「花梨。」
僕が言い始めたと同時に太陽が僕より大きい声を出して会話を遮った。
僕を呼ぶ太陽の声は何だかいつもの感じとは違うくて、その妙な落ち着いた感が少し怖くなった。
そして僕は・・・
今までの人生でこれまでにない程の衝撃を受ける事になった。
[2012・1・21]
[2012・6・29加筆・修正]
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