過去拍手文
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「ど、どうしたんだい?」

「ぼ、帽子が!ピンクの帽子がない゛っ〜〜!!」

「ぼ、帽子?そんなのあったか?・・・ん?そういや、お前さん海に落ちてた時にしてたっけか?」



鉢巻きのおじさんの答えは、
ほぼ帽子が海にある事を言っているようなものだった。



一体どうしたら・・・っと泣きそうになりながら考えるけど、
混乱してる頭では、全然いい方法なんて出てこない。


視界が涙でぼやけていく


そんな俺を困ったようにオロオロしてる鉢巻きのおじさん


今にも零れ落ちそうな位涙が目に溜まると
そんなに離れてない一つの人盛りから大きい歓声のような、賑やかな声が聞こえてきた。



俺とおじさんは声の方に視線を向けた。
人盛りは、俺が落ちた海の方向にあった。




「お、おい兄ちゃん!大丈夫かい!?」

「さ、俺の手を!」

「バカ言ってんじゃねぇ!俺だよ!」

「ささっ。どうぞ僕の手をvv」




い、一体何なんだろう・・・・


誰か海にいるのかな?
それにしては、やけに聞こえてくる声は何とも野太い声ばかり・・・・
それに・・・・何か・・・聞いてて気持ちいい声じゃないぞぉ・・・



聞こえる、野太い声が
あまりに色を含んでいて、しかもそれが一人ではなく一杯聞こえるものだから、
何だかすごく、怖い・・・







「大丈夫だ」





ドキン・・・



低くて、掠れた、とても男らしい声

それだけじゃなくて、凄く気持ちいい澄んだ声音



微睡んだ意識の中で聞こえてきた声よりも、荒々しさはないけれど、
同じ声だって事は直ぐに分かった。


声を聞いた瞬間
高鳴る鼓動と共に、鉢巻きのおじさんの戸惑った声も気にする余裕もないまま

俺は引き寄せられるように人盛りの方へ歩いて行った。











明らかに多い人盛りを分けながら、負けずに前へと進んでいく。
何度も知らない人の足にぶつかったり、押しのけされそうになったけど、それでも諦めるなんて考えはなかった。




「あ・・・・」



漸く、人だかりならぬ足だかりを抜けた先には、
海から出てきたのが一目でわかる程全身ビショビショになっている男の人が座っていた。









若い・・・・




一瞬獣のような男に見えた・・・・・人間なのに・・・・




でも、そんな事を気にする余裕はある一点に視線を送った瞬間、直ぐになくなった







「お、俺のぼうしぃ〜〜〜!」




びしょびしょに濡れているが間違える筈がない、
見慣れたピンクのシルクハットが男の近くに置いてあるのが見えた瞬間
俺は歓喜で震えた涙声で叫びながら、男・・いや、帽子の元にかけよった。





「よ、よがっだぁ〜〜〜」



時間にすれば、本当にほんのちょっと離れてただけなのに、
凄く愛しく感じるピンクのシルクハットをギュッと抱え込む

自分の身体だって濡れてしまっているから、別に帽子が濡れていようが気にしない。
それよりも、今自分の手元にある事に心底ホッとした





「お前、もう大丈夫なのか?」

「え?」




喜びを噛みしめていた俺に向かってかけられた言葉に見上げると、
緑の髪をした男が太陽の光と一緒に飛び込んでできた・・・・



今は濡れてしまっているが、そんなの気にならない位凄く綺麗な緑の色だな・・・



その綺麗な緑髪を見てハッと思い出した。

記憶が途切れる前に見た、太陽の光にも負けない位キラキラした緑色を・・・・・





「も、もしかして、俺を助けてくれたのって・・・」

「元気そうで良かった。海に落ちたのに、全く上がってくる気配が見えねェ時は焦ったぜ」


帽子を被りながら恐る恐る聞いてみると
ふって笑いながら、帽子の上からポンポンってされた。



「あ・・ありがとう/////」


まるで花が咲いたようにふわって笑ったその顔に、見惚れながらも
頑張って助けてもらったお礼を言う事が出来た。



「ん。もう落ちんなよ」


そう言って、また優しい笑みを浮かべてくれた。

俺はその笑みを見た瞬間、胸がキューっとなってドキドキした。
そして、此処でこの人と別れるのは嫌だって強く思った。


こんな気持ち初めてだ・・・・




「おにぃさんvv。はい、風邪ひくわよ」

「あら、引いたら私が見てあげるわ♪なんなら一生♪」

「何言ってんのよ!あんたなんて、相手になんかされてないわよ!自意識過剰女!」

「何ですってぇ〜!」




急に話しかけてきた、(といっても俺にじゃないけど)女の人達が、また急に言い争いを初めてしまった・・・・


その迫力は、もしかしたらナミをも超すかもしれないって位の凄さで、
さっきまで、周りにいた男の人達も今では何十歩も引いた所で呆れた顔をしている。


俺は恐くなって、気が付けば直ぐ傍にいる緑髪の人に抱きついていた。




「んあ?どうした?やっぱり気分が悪いのか?」

「・・・・・・」



今も続いている後ろの騒動が聞こえていないのかな・・・・・

嫌、どっちかっていうと、自分には関係ないって思ってそうだな・・・・



そう思いながら、俺は大丈夫ってちゃんと伝えた。



「そっか」



一見厳つい、仏頂面って感じなのに、笑ったらこんなに可愛くなるんだって、
俺はそのニカッと笑った顔にまた見惚れてしまった。






「あ、あの・・・お、俺チョッパーって言うんだ!助けてもらったお礼がしたい!」



自分に向けられた、綺麗で可愛い笑顔に、俺は渾身の勇気を出した。

でもやっぱり、別にいいとか言われたらって思うと不安で、
自然と男を見上げる表情は、不安に彩られた顔になってしまっていた。






「俺はゾロ、ロロノア・ゾロ。礼なんていらねぇよ」


男はまるで、俺のそんな気持ちを分かってるというように、
またふって笑みを浮かべながら、ずっと俺の帽子に置いていた手を今度は横に何度も動かして、
優しく、俺の頭っというかシルクハットを撫でてくれた。






「ロロノア・・ゾロ・・」



ロロノア・ゾロってどっかで聞いた事があるような・・・・






( ん〜〜〜〜〜〜)







だめだぁ〜〜〜〜





全然出てこないぃ〜〜〜〜




腕を組んで唸りながら考えるが
結局思い当たる節を思い出す事は出来ないでいると




「ゾロでいい」


っと、また頭を撫でながら言ってくれた。




「じゃ、じゃあ、俺も!俺もチョッパーって呼んでくれ!!」


ゾロが俺に優しくしてくれるのがあんまり嬉しくて、つい言葉が躓いてしまった。
そんな俺に、ゾロは「落ち着けってチョッパー」って言ってくれた。

早速名前を呼んでくれた事がすごく嬉しくて、胸の奥がくすぐったくなった。


俺は何だか恥ずかしくなって、ギュッと帽子を深く深く被った。





そんな俺に、ゾロはクスクスと笑っているような感じがしたけど、
帽子を深く被って俯いてるから分からない。


笑った顔はみたいけど、
何だかまだ恥ずかしくて、ゾロの顔を見る事が出来ない



見たいけど、見れない












ボォ〜〜




「あ・・・」



俯いていると大きい汽笛の音が辺りに鳴り響いた。




その音に少し遅れて、ゾロの何処か呆気にとられたような声が俺の耳に届いて、
俺はつられるようにして上げられなかった顔を上げた。




ゾロは今広大なる海に向かって進んでいる、
俺達の船とよく似た大きさの船を見ている。





「行っちまったなぁ・・・」



ボソッと呟いたその言葉で分かった。

ゾロはあの船に乗って、多分この島を出ていく予定だった事を・・・・



多分偶然にも通りかかって、俺を助けたから乗り遅れてしまったのだろう・・・・



そうだと言われた訳じゃないのに、何故か勝手にそう確信した俺は、
もしかしたら取り返しのつかない事をしたのかも、とすごく不安に駆られた。



「おい。何て顔してんだよチョッパー」

「ゾ・・ゾロ・・・・もしかしてあの船に乗る予定だったのか?お、俺を助けたから・・・俺・・・俺・・・」


遂にはしゃくりあげながら言葉が紡げなくなってしまった。
目には涙が溜めこまれており、少しでも動いたら零れてしまう程だ。





「おい。男は、簡単に泣くんじゃねぇ」


ゾロはそういって、少し乱暴に俺の目にたまった雫を拭ってくれた。

でも、ゾロは否定しなかった。
だからやっぱりあの船に乗る予定だったのだろう・・・・



俺は凄く申し訳ない気持ちに駆られ、また目に涙が溜まりそうになったけど、
ゾロが泣くなっていったから、泣かねぇぞ!俺!!





グゥ〜〜〜




「・・・・・・」
「・・・・///」



(ぎゃぁ――――――!!)



何でこんなタイミングで鳴っちゃうんだよ〜〜俺のお腹〜〜〜〜



あまりに絶妙というか、微妙ともいえるタイミングで鳴った腹の虫は、結構な大きさで

当然傍にいるゾロにも聞こえているだろう




その証拠に俺達は顔がバチッと見合わった





あんまり同じタイミングだったから
俺は、さっきまで泣きそうだったのも忘れてプッて笑った


同時に目の前のゾロもハハッと笑いだした








間近にある大好きな人の笑った顔


今ゾロのこんな可愛い笑顔を独り占めしてる俺って幸せ者だなってすっごく思った。









だから俺は知らない。


ゾロの綺麗な、でも楽しそうな笑みに




醜い喧嘩をしていた女の人達も、遠巻きで見ている男の人達も


顔を赤く染め、一歩も動かず見入っている事を・・・・・・・・

















ひとしきり笑い合った後
ゾロが一緒にご飯を食べようって誘ってくれた。



勿論俺の返事は決まってるゾ♪












( 今日の俺は幸運を一気に使ってるのかな・・・エッエッエ♪)





ビックリな事に、ご飯を食べた後も
ゾロは俺の買い物に付き合ってくれてるのだ。



ゾロが一緒に見てくれるって言ってくれた時
あんまり嬉しくて、俺は飛びつくように頷いた。


実際飛びつちゃったけど、ゾロはそのまま肩にのせてくれた。
俺すっごく嬉しかったゾ♪




俺はいつもよりすっごく上機嫌で一杯ゾロに話かけた。
ゾロは言葉数少ないけど、相槌を打ってきちんと俺の話を聞いてくれる。


俺はそれがまた嬉しくて幸せだった。





そんな感じで俺達は街中を歩いていると、
「そこの兄ちゃん」という声と共に、ゾロがカメラを持った人に話しかけられた。




ゾロは訝しそうな表情を浮かべている。
一見怖そうな笑みだが、カメラのおじさんは怯む所かゾロの顔を見て満面の笑みを浮かべながら


「あんたのおかげで、商売大繁盛だよ♪」


っと、すごくルンルンで言ってきた。


正直訳が分からなくて、首を傾げる。
ゾロも小首を傾げてるから、多分同じ気持ちなんだろうな・・・・





そんな俺達におじさんは


「これはお礼だよ♪」


っといって、ゾロに一枚の写真を渡してきた。


ゾロは怪訝な顔をしながらその写真を見ると、目を大きく見開いた。
どうしたんだって聞こうとしたんだけど、その前にゾロが「お前にやる」と言って、俺にその写真をくれた。







「ッ/////」








その写真には、
さっき俺がゾロと顔を見合わせて笑い合っていた姿が映っていた。



お互いの顔が結構なアップで撮られている




写真一杯に入ってる俺とゾロの横顔




太陽の光を反射して、ゾロの金色のピアスが綺麗に光ってる




すっごく、すっごく綺麗で、ゾロの顔ばっかり見てしまった。





さっきの場所でこんなおじさんいなかった筈だけど、って思ったけど
俺はおじさんにすごく感謝した。


実際にありがとうを言おうとしたんだけど、見渡してもおじさんはいなくて
ゾロが俺が写真を見入ってる間に行ってしまったと教えてくれた。




俺は心の中でもう一度おじさんに、


そして俺を助けてくれたゾロに


最後に、ゾロと会うきっかけを作ってくれた鉢巻きのおじさんに


ありがとうって感謝した。













た。 








〜 Tu Be Continued In Usopp 〜



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書きたかった内容的にどうしても一ページでは収まり切りませんでした。


でも満足です


いや、もっと文章力があったら・・・と思いますが、もうしょうがないですね。


授業で寝てばかりいた自分がいいけないんですからι




今の時点でチョッパーは、ゾロに恋心はありません。

どちらかといば、お兄ちゃんに対する愛情の方が強いです。


チョッパーが、どうやって宝物を大事に保管するかは、何処かの話で出てきます^-^










[2013/5/11〜6/2]


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