過去拍手文
写真−サンジ編−


「ちょいと其処の兄ちゃん。今日はすげぇ物が手に入ったんだ。是非見て行ってくれよ!」

「あ?いい物?」










〜写真 サンジ編〜














港には、漁業と八百屋が殆どを占めていて、此処を歩くだけで探している食材は全て揃える事が出来た。

おかげで、買出しも思っていたよりもスムーズに終わり、ルフィ海賊団コックを担当するサンジは
予定外に開いたこの時間を、折角なので女性達の為に使おうと、
まぁ一言で言えば、只のナンパに繰り出す事に決めた。




港街を抜けると雑貨等、日常に欠かせない物を売る店達が並んでいると聞き、
そろそろ愛用のタバコが切れる事を思い出して、綺麗なお姉様方をナンパしながら足を運ぶ事にした。





最初ナンパをしようと意気込んでいたサンジだったが、
一番人が多い港街を抜ける頃には、何故か少し腑に落ちない表情を浮かべていた。




大きいため息をつきながら、港町と大きく書かれた門に軽く片手をついた。

そして大きく煙草の煙を吐くと、先程から自分の身に起こっている不可解な現実に、
もう一度大きいため息をついて、チラッと港町を振り返った。



振り返った先には
港には場違いな綺麗なドレスに身を包んだ麗しい女性や、大きい声を出して客寄せしている活発な元気な女性等、
様々な個性溢れる崇拝すべき女神達がいた。



そんな女性たちを見て思った事、それは・・・・・


この街のお姉様方は、皆して極度の恥ずかしがりやなのか、という事だ・・・・・






話かければ見向きもせずに、颯爽と歩き去って行ったり、
その美しい顔に少しの皺を作って走り去って行く事が殆ど・・・・というか全部だった・・・・・・


( 決して、絶っ対に嫌そうな表情なんて、浮かべていなかった筈だ!!)




そう思いたい一心のサンジは心の中で絶叫するも、それだけで生粋の女好きが凹む訳はなく、
少しこの街の女性達に違和感を感じながらも、最後に声をかけた女性は

まるで俺の事を値踏みするかの様に頭からつま先まで不躾に見ると、
アンタなんかお呼びじゃないのよ!っとでも言うようにフンと鼻を少し鳴らして踵を返して行ってしまった。




これには流石のラブコックもガ―ンと背景が重暗くなる程の衝撃を受けた。




今までも、同じ船の女性達に無下に扱われる事は確かにあるが、女性はたった二人しかいない。
それに比べてこの島の女性達はその云百倍もいるのだ




そ・れ・な・の・にっ!

何故この島の女性達は皆して、俺の相手をしてくれないのだろうか・・・・・




これだけの大きい街だ。




一人位はいい顔する女性がいても可笑しくはない筈だっ―――!


なのに・・・・・・









何で誰も相手にしてくれないんだっ――――!!(泣)











此処まで言うだけあって、
サンジの容姿は確かに他と比べれば、イケてる方に入るだろう。


金髪に碧眼、確かに眉毛は少し変わっているが、
そんなの只のチャームポイントになる位ささやかなものだ。

付け加え、オシャレに人一番気を使っており、生まれつきの難病の為か、
女を見ると構わず、声を掛けてしまう軟派な所もあるが、それも云わば個性の一つだ。
極度の女好きで、どの女性にも褒め称える事は忘れず、更に完璧なるエスコートをしてくれる。


褒められ、更に惜しげのない笑顔を見せてくれれば、いい気分になる女性も少なくはないだろう・・・・・・







しかし・・・・・
この街の女性達にはそんなサンジの魅力は全く通用していなかった。




酷い時には、鼻で笑って出直してこいとまで言われたのだ。
―――まだ、無視された方がマシであるというものだ



機嫌も最初に比べれば幾分下がり、ほんの少し騎士道精神に傷を追って、
それでも尚サンジは諦める事なく、ナンパしながらタバコ屋を目指して歩いていた。











港街を出ると、今度は露店が所狭しと並んでいた。
港と同じ位、此処も賑わっており、只歩きながら見ているだけでも、
この雰囲気にテンションが自然と上がっていく。









そんな時だ――











誰も人がいない露店の主人が声をかけてきたのは・・・・・・















何故、久しぶりの上陸、しかも美女の多い島に上陸した今日
漸く声をかけられたのが、麗しのお姉ぇさまでもなく、優雅なお嬢様でもなく、
只の露店の親父なのかッ!!


サンジはとことん気分が落ちてしまった。


(畜生・・・・今日はどんな厄日なんだ・・・・・)





ブツブツと心の中で悪態つきながらも、
こう見えて結構優しい所のあるサンジは、結局呼ばれる方に目を向けてしまった。







おやじの後ろにはポスター、そして前のカウンターには色々な人物の写真が飾られている。



どうやら写真屋のようだ



「俺はこのグランドラインを転々としながら写真を売る商売をしてるのさ。
 航海しながら有名人の写真を撮っていくのが俺の仕事さ」


俺が足を止めてチラッと店を見ると、これ幸いとばかりに自分の商売を売り込んできた。




俺は写真なんてあまり興味がない。
そんなものよりも実物がいい思うし、持っていてなんになるって感じで、必要性を全く感じないからだ。


今だって自分は煙草を買う為(後ナンパの為)に足を運んでいるのだ。








だが、何故か今日だけは・・・








このおやじに付き合って写真を見てみる気になった・・・









きっと一回もナンパが成功しないからだと、
何所か言い訳する自分を不思議に思いながら・・・・・・










店に近付くと、まず嫌でも目に入って来るのは
大小それぞれの大きさを取りそろえたおやじの後に飾ってあるポスターだった。


「どうだい兄ちゃん!うちは有名所しか扱わないんだ」

「へぇ〜」


おやじの言う通り、ポスターには
あの赤髪や白ひげ等、誰でも知っているような有名な海賊のポスターが飾られてある。


それも酒を豪快に飲んでいる所や、点滴を施されている所、
どの写真も目線が違う所にあり、明らかに隠し撮りだと分かる代物だった。


だがこんな大者達がそろって隠し撮りされるとは、明らかに考えづらい・・・




「おいおい兄ちゃん。疑ってるのかい?正真正銘、俺が撮った本物さ!」

―なんなら証拠を見せてあげようか?



おやじはニヤッと笑うと、首からぶら下げていたカメラを手に取った。


するとカシャッ、という音と同時に手に持っていたカメラから一枚の写真が出て来た。


「ほれ、証拠の写真だ。特別サービスでタダにしといてやるよ。」

「・・・っ!」



半信半疑で受け取ったその写真には、

おやじのカメラを見ている俺の横姿が映っていた――




「こりゃ・・・」




自分はカメラに対して、正面に立っていたから横顔なんてありえな筈なのに
もしかしたらこの場所に何らかの細工がとも思ったが、このオヤジはそんな小細工等しそうにない



俺がビックリしているとオヤジはしてやったりという感じで豪快で笑った。



「どうだい!良く撮れてるだろう。」

「あ、あぁ。・・・・もしかしてオヤジさん、あんた・・・・・」


一瞬頭に過ぎった予想をつい口に出そうとしてしまったが、
確信もないのにそんな事聞くのも、と思い口淀んでしまった。


すると俺が何を言おうとしたのか分かったのか、オヤジはニヤッと笑った。



「あんちゃんの思ってる通りさ。俺は悪魔の実の能力者さ。」


(やっぱりか・・・・・・)


隠す気もなく、誇らしげに言う店主お笑顔が、うちの船長と一瞬ダブって見えた。



「因みに何の能力なんだ?」

「おう。俺はネンネンの実を食べたのさ。」

「ネンネンの実?」


そんな実聞いた事もない。
何の能力なのか、分かりづらい実だ。


そんな俺にオヤジは親切にも詳しく教えてくれた。







オヤジの話では、
ネンネンの実は、詰まる所、エスパーらしきものが使える実らしい。


俺はこれが一番性にあってるといってカメラを大事そうに触るオヤジを見て、
多分他の能力も使えるのだろうと思った。





どうやらその実のおかげで、この島の範囲位なら
誰でもどの角度でも、自分の意志でその姿をこのカメラに収める事が出来るらしい・・・・・


分かったような分からないような能力だが、
その能力のおかげでこのオヤジの商売が成り立っている事は良く分かった。








・・・それにしても



(美人なお姉さまの写真がねぇ・・・)






右から左まで、並べられているのは男の、それも中年に近い奴の写真ばっかりだ



それでも俺でもよく知っている人物ばかりで、
海賊ばかりでなく、海軍の写真も一緒に並べられてある。


「おりゃ、有名な奴の写真しか撮らねぇと決めてんだ。どうだい?兄ちゃん。」


( どうだいと言われても・・・・・・)




確かに、幾ら能力者とはいえ、こんな大物ばかりをよく撮ることが出来たもんだと思う。
しかも、どの写真も、いわば隠し撮りばかり


こんな大物達に気づかれず写真を撮るなんてたいした腕前だ―――と、確かに思うのだが・・・・・・




何にせよ―――・・・・






目の保養になるような写真が一枚もない事に
正直残念さを感じるのは、男として当然だと思う。








「悪いがおやじ、俺は・・」
「因みに今日の朝方大物を撮る事が出来たんだよ」


幾ら自由時間だといっても夕方には集合をかけられているのだ。
偶然近くにあった時計を見るともうティータイムを過ぎた辺りだ。



折角の時間を此処ばかりに費やす暇もなく、
何たって此処でタバコを買わなければ、いつ次の島につくか分からない航海だ、

絶対に後悔するに決まってる―――・・・・・・





そうと決まれば膳は急げとばかりに、オヤジに断りをいれようかと思ったが、


楽しそうに、これだけは外せないとばかりにオヤジが嬉々として表情を浮かべ、
今日撮る事に成功したらしい大物の写真を取り出していた。









「どうだい?あんちゃんも名前位は聞いた事はあるだろう。
 あの王下七武海の一人、鷹の目の男が認めた男、海賊狩りの異名を持つロロノア・ゾロの写真さ!!」



オヤジが今までとは比べ物にならない程興奮して、
俺に見せてくれた写真に写っている奴の話をしているが、



――― 正直そんな話は全く耳に入ってこなかった









俺は、目の前のカウンターに置かれた写真に目が放せなかった。


その写真を見た瞬間、周りの音が一切遮断され、自分の鼓動しか聞こえず、顔は段々熱くなった。









『一目惚れ』





まさか・・・女好きの自分が?






男に?









そんな自分の考えが信じられず、もう一度写真に目を通す。









若草色の珍しい髪の色
髪は短めでさっぱりしており写真だからよく分からないが、身長も自分と同じ位あるだろう。

写真の中のこいつは、何処かの岩場で両手に剣を持ち構えを取っている横姿だった。



真剣で鋭い目つきに、写真でも分かる程の気迫
そして端整な顔つきに、筋肉ダルマって訳でもないのに、服の上からでもよく分かる鍛え上げられた身体。

目つきは悪いし自分程ではないにしろ、これは女が放っておかないだろう事は安易に想像できた。
男からすれば何だかいけ好かないようにも感じるが、
正直滴っている汗が凄く色気を感じる。




(いや、まてまてまて!!男相手に色気って・・・)




大好きな女になら分かるが、男相手に・・・しかも写真越しの相手に、色気を感じる自分に眩暈がする。


でもそんな思考とは裏腹に自分の口からはもっとありえない事を発していた。




「おい。こいつはこの街にいるのか?」

「んぁ?ぁあ、いたぜ。こいつが歩く度に島の女達は皆顔を赤くさせてぼおっと見てたぜ。
 本当に凄かったもんだぜ。何せロロノアが歩くたんびに皆が食い入るように魅入ってたんだぜ。
 中には話しかける女もいたが、全く相手にされてなかったなぁ。」

しかも女だけでなく、男も多かった――という店主の言葉に、
胸に黒くドロドロしたものが流れるのを感じた。




(あぁ、もう手遅れだな、こりゃ・・)





何だか抵抗する自分がバカらしくなった。
写真をもう一度見る頃には、抵抗なく自分の気持ちを素直に認めることが出来た。



グランドラインは摩訶不思議だが、本当に予測もつかない事が、まさか自分の身に起こるなんて・・・・・・






(しかもそれが、全然嫌じゃないなんてな・・・・・・)






「それで、オヤジ!まだこいつはこの島にいるのか!?」

「あぁ―・・・残念だったな。昼前にはもう商業船に乗って行っちまったよ。」




オヤジの言葉に今までにない位の無力感が襲った。



誰の目からも落胆している俺を見て、オヤジは本当に残念だったな、と俺の肩をポンポンと叩いた。


「あんたの気持ちも分からんでもないがな、この街の女達もそりゃぁ残念がってたぜ。
 しまいには旦那も子どももいるのに付いて行こうとした女もいたからな。」

「へ――・・・・・」


自分で思っていたよりも結構なショックを受けた身体は、
オヤジの言葉をまた綺麗に右から左に流していく。



だがロロノアが非常に人気がある事だけは、インプットされていった。



「何が驚きって、旦那も止める所か、俺も行くって一緒に乗り込もうとしてた事だぜ。
 しかもだ。今度はその奥さんと旦那のほうで、
 ロロノアをかけて言い争いをしてるもんだから、あの小僧の人気は凄いもんだぜホント。

 勝ったほうが一緒に行くって、勝手に決めて取っ組み合いをしてる間に行っちまったがな。ハッハッハ!」


(俺だけじゃねぇのか・・・・・)



写真でも凄い魅力を感じるのだ。女好きの男を落すほどの。



実際のロロノアは、それはもう魅力的なんだろうと想像を膨らます。




「・・おい兄ちゃん。鼻の下が伸びてるぜι」

「狽あ。おおっといけねぇ。」



オヤジが引きつった顔をしていて、俺は慌てて元に戻した。




俺はまだ、若干引き気味のオヤジから、ロロノアの写真を購入すると、
タバコを売っている場所を聞いて鼻歌を歌いながら店を後にした。









タバコ屋に向かいながら、ふと俺はある事に気がついた。





この島の女性達が皆、俺の相手をしてくれない所か、
俺を見定める様な感じだったお姉様達。



きっと彼女達も、ロロノアに見惚れたに違いない。



その余韻が残っていたからこそ、俺は全く相手にしてくれなかったのだろう・・・・・・




俺だってあいつに負けてるなんて思ってはいないが、
正直あいつの魅力は次元そのものが違っていると思う。




俺だって、もしあいつがまだ此処に残っていたら、煙草なんて置いといて、
全力であいつを口説きにかかるに違いないと、いらぬ確信があった。









会えなかった事が凄く残念ではあるが、俺たちは海賊だ。

しかもあいつはロロノアは海賊狩りで有名だと何処かで聞いた事がある。







自分が海賊で、このグランドラインにいる限りチャンスは絶対に巡ってくる筈だ。









サンジはこの先、あいつに会える事を何処か確信していた・・・














それまで待ってってやるよ―――



だけどな、


覚悟しとけよ?









―――もうお前は俺のものだって事をな



















ニヤニヤと不気味な笑みで道を歩いているサンジはまだ知らない―――






自分の考えが甘い事を






そして
















〜 Tu Be Continued In NAMI 〜




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


まだ最強の敵がいないと思っているサンジは幸せ者ですね^^


さんちゃんは、本気の一目ぼれってした事がないように思います(ーー)

ですから一目ぼれを使いさせてもらいました。ホホッ⌒☆









[2012/11〜2013/2/15]


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